中国共産党政権は、移植臓器市場のために
罪のない人々を殺害しています。

 

臓器収奪とは?

本人の合意なく臓器を摘出され、その過程で殺害されます。「強制臓器摘出」「臓器狩り」とも呼ばれます。

 2021年6月10日、国連人権特別報告者8名1と専門家4名が中華人民共和国に対して書簡を提出しました。中国で無実の人々が臓器のために殺害されてきたという報告を深く懸念するという内容で、臓器収奪疑惑に速やかに対応し、国際的な人権擁護のメカニズムを用いて独立した監視を認めるように中国に要求するものでした。(英語原文

 このページでは、まず中国での臓器移植のあり方が臓器のための殺害を可能にしていることを考察し、「臓器バンク」の存在を裏付ける証拠を提示します。さらに、このような重要な出来事をなぜ世界が容認してきたのか、そして是正に取り組む現在の世界の動きを紹介します。

遺憾ながらこの告発は事実である」と発表する デービッド・キルガー元国務省アジア太平洋担当大臣 とデービッド・マタス弁護士(2006年)「遺憾ながらこの告発は事実である」と発表する
デービッド・キルガー元カナダ国務省アジア太平洋担当大臣
とデービッド・マタス弁護士(2006年)

 

中国での臓器移植

 まず、中国共産党政権下で行われてきた臓器移植のあり方について、考察していきます。

 死刑囚からの臓器摘出

 1994年8月のヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書『死刑囚からの臓器摘出』(英語原文)によると、中国の移植手術は1960年代に始まりました。当初は移植患者の生存率も低く、特に注目される治療技術ではありませんでした。

 しかし、1980年代から、二つの全く異なる要因が重なり、中国での移植手術が定着し始めます。まず、移植された臓器に対する患者の拒絶反応を防ぐ免疫抑制剤シクロスポリンが開発され、臓器移植の生着率が大幅に上昇しました。

 そして、1983年より毎年、党の路線に合わないグループを対象とする「厳打」(エンダ)運動が始まり、人々が多く処刑されるようになりました。つまり、臓器移植の環境が整ってきた時期に、処刑による臓器が入手できるようになったわけです。

 1984年10月9日には、最高人民法院、最高人民検察院、公安部、司法部、衛生部、民生部の政府6機関による『死刑囚の死体・臓器の利用に関する暫定的な規定』が公布され、国家(臓器収奪の場合は中共幹部の臓器移植)のために臓器を利用することは合法化されました2

 国際社会のプレッシャーにより、中共政権は2005年12月にようやく移植臓器を死刑囚から摘出していることを認め、2010年には自発的ドナー制度を試験的に導入し、2015年には死刑囚からの臓器摘出は停止したとしています。

 しかし、中国の臓器移植に関するスポークスパーソンである黄潔夫・元衛生次官は、「死刑囚も市民であり、臓器を提供する権利があります… 自発的提供を望む死刑囚から摘出された臓器は我々の統一された割り当てシステムに登録され、市民からの自発的臓器提供として扱われます。いわゆる死刑囚からの臓器提供はもはや存在しなくなるのです」(英語記事)と発言しており、何も変わっていない現状が窺えます。(参照:2015年の医療改革

 国家主導の臓器移植産業

成長する中国の移植産業成長する中国の移植産業(動画メディカル・ジェノサイドより)

 2000年以来、中共政権は、臓器移植手術を未来の新興産業として国家戦略の優先事項に位置づけ、五カ年計画に組み込んできました3。移植技術の研究開発、人材養成、産業化のために、衛生省、科学技術省、教育省、軍からかなりの資金が下りるようになり、移植センターには新たな設備や技術開発が導入され、中国の臓器移植はわずか数年で大規模産業となりました4

 臓器収奪の調査者は、中国国内の移植設備に基づき、年間移植件数を6万から10万件と算出しています。中国発表の数字を大きく上回る数字です。(参照:設備に基づく移植件数

 軍の関わり

 中国人民解放軍(PLA)は、中国の国家ではなく中国共産党に所属します。人民解放軍の後方勤務(兵站)を一元管理する部門であった中国人民解放軍総後勤部に対して、江沢民・元共産党総書記は、法輪功撲滅の一環として、機密の拘束施設・収容所、臓器(生体「ドナー」)の搬送、臓器入手の管理・監督などあらゆるレベルでコア機関の役割を果たす権限を与えました5

 「法輪功への迫害を追跡調査する国際機関」(WOIPFG)は、100以上の軍・武装警察病院が臓器移植に関わり、新鮮な臓器をオンデマンドで民間病院に供給してきたことを調査結果として報告しています6

 以上の3点から、中国では死刑囚を臓器源とし、軍を動員し、国家を挙げて臓器移植産業の発展を推し進めてきた状況が窺えます。

臓器バンクの存在

 中国の囚人は二つに区分できます。一つ目は罪を犯し、法的手続きを踏んで犯罪者として投獄されている囚人。二つ目は中共政権が「国家の敵」と定めたグループに属する人々で、法的手続きなく警察により任意に拘束されている人々です。(参照:国家の敵

 2018年から2019年にかけてロンドンを拠点に開廷された「中国での良心の囚人からの臓器収奪を調査する民衆法廷」(中国・民衆法廷)では、後者を「良心の囚人」と位置付けています。中華人民共和国は、この「良心の囚人」の存在を認めていません。

 このセクションでは、拘束されている「良心の囚人」、それらの人々を対象に行われた身体検査、この二つの要因が可能とする極めて短い待機時間について解説します。

 任意に拘束される人々

衛星写真が示す新疆ウイグル自治区のアクスの収容所にある三つの施設衛星写真が示す新疆ウイグル自治区のアクスの収容所にある三つの施設
ガットマン氏のセミナー映像からスクリーンショット)

 冒頭で挙げた国連の特別人権報告者から中華人民共和国に宛てた書簡は、「中国における強制臓器摘出は、特定の民族や言語、宗教上の少数派を対象とし、逮捕の理由も告げられず逮捕状もなく拘束されている」と指摘し、具体的に「法輪功学習者・ウイグル人・チベット人・イスラム教徒・キリスト教徒」を挙げています。

 新疆ウイグル自治区で理由もなく拘束された人々、法輪功学習者の収容所に関する証言が存在します。

 カザフスタンに住むウイグル人のオムル・ベカリさんは、2017年3月にウイグルでの会議に参加したあと、ピチャン県の家族を訪問し、翌日に何の理由もなく逮捕されました。会議は、カザフスタンの首都アスタナ(訳注:2019年にヌルスルタンと改称)で2017年6月から9月にかけて予定されていた産業見本市を促進するためのものでした。(参照:「中国・民衆法廷」に提出した陳述書の邦訳)。

 カザフ人のグルバハール・ジェリロヴァさんは、取引先の娘から物品の配送手続きをするためにすぐにカザフスタンからウルムチに来るように言われ、ホテルに一泊した翌朝、3人の警官に逮捕されました。(参照:「中国・民衆法廷」に提出した陳述書の邦訳)ジェリロヴァさんは「中国・民衆法廷」の公聴会で次のようにも証言しています。

そこにいた人は皆、無実です。ウイグル人もしくはイスラム教徒だから拘束されたのです。例えば、47歳のウイグル人の女医は、電話にウイグルの歌が入っていることが見つかり、拘束されました。その曲は禁止されていると言われました。 ウイグル人の51歳の女性は、息子に小麦粉が切れたとメッセージを送りました。秘密のメッセージを送ったと責められ、これが拘束の理由でした。 (参照:「中国・民衆法廷」口頭供述のまとめの邦訳

 中国北西部の新疆ウイグル自治区では、特に2017年から理不尽に大量の人々が再教育制度の名の下で拘束されるようになりました。収容所が数多く建設されており、新疆アクスでは1キロ平方の土地に病院、収容所、火葬場が集約していることが指摘されています7。(参照:ウイグル人

 2006年には、法輪功学習者の収容所に関する告発がありました。臓器収奪問題を初めて世界に告発したアニー(仮名)は、次のように語っています8

蘇家屯病院の統計ロジスティクスで仕事をしていた2001年、食糧の購買量が急激に増えた。5000〜6000人の法輪功学習者が病院の裏庭に建てられた1階建ての建物に収容されていて、その後、地下の設備や他の病院に移送された。

 また、元欧州議会議長代理のエドワード・マクミラン=スコット氏は、2006年に中国で下記の証言を聴取しました9

私は曹東氏に中国で臓器狩りの強制収容所の存在に気付いているかと聞いた。曹東氏はこのような強制収容所は確かに存在し、しかもそこへ送られた人の中には私の知人もいると述べた。彼は、法輪功学習者だった友人の遺体に、臓器摘出後に残された穴があるのを見たと証言した。

 臓器収奪問題を調査した最初の報告書『戦慄の臓器狩り』によると、曹東氏はエドワード・マクミラン=スコット氏と面会した後、直ちに拘束され、中共当局は9月に彼を甘粛省に移し、12月に四つの罪名で彼を起訴しました。

 しかし、裁判官は曹東氏の訴訟について、 当裁判所には裁く権利がないと明言しました。なぜなら曹東氏の訴訟は北京にある法輪功取締本部 (610オフィス)に管轄されているからでした。「国家の敵」として選定された法輪功学習者には、法的保護が一切ないことを示しています。(参照:法輪功学習者

 身体検査とDNAデータの採取

 身体検査

ウイグル人 

 臓器移植では、レシピエント(臓器を受け取る患者)の身体が臓器を拒絶しないように、ドナー(臓器提供者)の血液型・組織型との適合性を事前に検査する必要があります。このため、拘束者が身体検査を受けたという数多くの証言は、拘束者からドナー候補が選定されていることを裏付けます。

   拘束経験者の証言によると、身体検査の理由も結果も知らされません。血液検査だけでなく、臓器検診も明らかに行われています。

   2021年にロンドンを拠点に開かれた「ウイグル法廷」の第1回公聴会(2021年6月4日)では、「すべてのウイグル人の拘束者に対して血液型と肝臓検査の結果などを記載した医療ファイルがありました」とサイラグル・サウイトバイさんが証言しています10

 DNAデータの採取

   新疆ウイグル自治区では、2017年に新疆全体の「年度体検」(健康診断)を通してDNAを含む1880万人のバイオデータが構築されました。収集されたDNAから臓器の長期的な適合性が予見できると指摘されています11

   ロンドン・ユニバーシティー・カレッジ遺伝子研究所のデービッド・カーティス教授は、囚人ではなく日常生活を送っている者がDNA情報を基盤にドナーとして捕えられる可能性は否定できないと警告しています12

 極めて短い待機時間

 中国での臓器移植の特徴として、極めて短い待機期間が挙げられます。

中国とその他3カ国の腎臓移植待ちの日数 上のグラフは、中国とその他3カ国の腎臓移植待ちの日数を比較したものです13

 中国は移植手術の待ち時間は公表していません。2019年に患者のふりをして中国の病院に腎臓移植の問い合わせをした電話のおとり調査では、「検査後4〜5日」(海南学院第二附属医院)、「3ヶ月以内には必ずできる」(遵義医科大学附属医院)という医師の回答が録音されています。このグラフでは、多めに見積もって3ヶ月、つまり90日を用いました。

 さらに、2020年には、コロナウイルスの蔓延にもかかわらず、異例の早さの臓器提供の事例が報道されています。下記に2つの事例をご紹介します。

 ◎2020年2月29日、江蘇省無錫市で、中日友好医院肺移植科部長の陳静瑜教授のチームが、世界初の新型コロナウイルス感染による肺炎患者の両肺移植手術に成功。健康な両肺を持つ人間がタイミングよく脳死し、血液型とHLA(ヒト白血球抗原)が適合する肺が5日間で提供されている14

 ◎2020年6月25日、武漢の共和医院心臓血管外科部長の董念国教授と夏家紅教授を筆頭に、日本で人工心臓を10ヶ月装着していた患者への心臓移植に成功。16日に1つ、19日に1つ、手術当日の25日に2つの心臓の提供があり、この移植手術のために10日間で合計4個の心臓が提供されたことになる15

 血液型、組織型が完全に把握された「臓器バンク」の存在なしでは、これほどの短期間で人命に不可欠な臓器を入手することは不可能です。

 日本や欧米では臓器提供を希望する人が死亡した場合、死亡者と組織適合する移植を待つ患者に臓器を移植されます。このためには何年も待つことになります。

 しかし、中国では逆適合が行われており、移植を望む患者の注文に応じて、その患者の組織型に適合する人がデータベースから選別され、臓器が収奪されています。

世界の容認

 これほど重大な人道に対する犯罪をなぜ国際社会は見過ごしてきたのでしょうか?

 このセクションでは、国際社会が臓器収奪を受け入れ、黙認してきた背景と、是正への動きを紹介します。

 移植ツーリズム

 米国のPopulation Research Institute(人口調査協会)のプレジデント、スティーヴン・モッシャー氏は、中国共産党政権が国際社会を臓器収奪に取り込んでいく状況を次のように説明しています16

当初は非常に限られたものだったと思いますが、のちに共産党は中国だけでなく世界中の富裕層に臓器を売って儲けることができることに気がついたのです……党当局は、外国人が心臓に15万ドル、肝臓に18万ドルを支払うことも厭わないことに気づきました。値段は様々です……取引が増えるに従い、ますます多くの移植ツーリストが中国に来るようになりました。

 遺憾なことに、日本から中国への渡航移植者に関する記録も存在します17。「経済人が渡航移植に赴いた」という日本の議員の発言もありました18

 前掲のグラフに見られるように、移植手術への待機期間は中国では異常に短く、日本では異常に長い状況です。臓器収奪が行われている中国での移植手術を警告すると同時に、移植ツーリストを一方的に責めるのではなく、患者のための医療を整備していくことが早急に求められています。[参考:中国移植ツーリズムとは何か(粟屋剛著 シノドス オピニオン記事2017年3月2日)]

 製品の供給&国際機関の容認

 10億人市場への夢想

 国際企業の支援なしでは、中共政権下での臓器移植の発展はありませんでした。

 2019年11月に発表されたThe Economics of Organ Harvesting in China(中国臓器収奪の経済)と題する報告書では、臓器の保存、免疫抑制剤、移植医療診断、移植用ロボットなどの分野で中国での臓器移植を支援する世界28社の企業名を挙げています。

 また、米国ミネソタ大学のカーク・アリソン教授は、2016年に出版された書籍に収録された論文『中国での「処刑=移植」制度と国際機関:癒着関係の考察』で、国際移植学会がホームページで謝辞を述べている製薬会社4社を取り上げ、中国との深い関与を指摘しています19

 前述のスティーヴン・モッシャー氏は、欧米の企業が中国に進出する過程を次のように解説しています。

(欧米が)中共の残虐性に気がつくまでこれほど長くかかった理由は、多くの欧米企業が自社製品で10億人の顧客を持つことを夢想していたからです。巨大な中国市場で利益を上げることを目論み、彼らは炎に向かうハエのように進出しました。

 国際機関の容認

 オーストラリアのマクアリー大学哲学科・臨床医学科のウェンディー・ロジャーズ臨床倫理学教授は、シドニーの移植医学界の重鎮で国際移植学会の元会長であるジェレミー・チャップマン教授とフィリップ・オコネル教授が、良心の囚人からの強制臓器収奪に関する証拠を積極的に受け入れようとせず、「誤って導かれた人権擁護者が、中国政府の転覆をはかる(法輪功グループの)政治的動きに騙されている」として一蹴してきたと、「中国・民衆法廷」で証言しています。その主な理由として、臓器移植のスポークスパーソン黄潔夫医師が、博士研究員としてシドニー大学で肝移植の研修を受けており、チャップマン教授らとの親交があったことを挙げています20

 彼らが「事実を敢えて見ない」動機として、ロジャーズ教授は、中国の変革過程に自分の役割を投影していることを指摘し、賄賂や自己の利得のためではなく、自分達はよくやっていると自分で自分を騙し、視野を非常に狭くする心理を説明しています21

 また、同教授は、2017年2月に専門誌『Liver International』に掲載されていた肝移植医の鄭樹森(ジェンシュセン)医師(浙江大学付属第一医院)の研究論文(563件の肝移植手術の分析)で非倫理的な臓器が用いられているとして撤回を要求した際、予期せず同専門誌から押し戻されたことにも言及しています。編集者側の交渉技術のおかげで、論文撤回の経緯が公表できるまでに至りましたが、専門誌も中国から収入を得ている場合、国際的な利益を考慮することがあると指摘しています22。(参照:論文撤回に関する英語記事

 「中国・民衆法廷 裁定」(英語原文)では、臓器収奪問題に関してWHO(世界保健機関)は国際移植学会の情報に依存しており、WHOは中国の臓器提供制度の改革を支持し中国への批判を退けているが(段落411)、本法廷に提出された証拠からは国際移植学会とWHOの見解は裏付けられない(段落413)としています。

 上記の裁定を受けて、2019年7月25日、英国上院議会では、なぜWHOは中国の臓器移植体制を倫理的とする見解を抱くのかという質問が人権問題担当の外務大臣(Lord Ahmad of Wimbledon)に向けられました。同大臣は、WHOが国連加盟国の自己査定を証拠としていること、そして臓器収奪問題に関しては中国の自己査定に基づく判断であることを明らかにしています。


2020年9月2日、英国貴族院で『医薬品と医療機器に関する法』の討議(second reading)で、
WHOの臓器収奪に対する見解は、”中国の自己査定”に拠ることをハント卿が指摘。(43秒)

 是正への動き

 「移植行為の継続を可能とさせる支援を欧米機関が停止し、道徳的責務に沿った措置を取るべきだった時期は明らかに過ぎてしまっている」とアリソン教授は論文『中国での「処刑=移植」制度と国際機関:癒着関係の考察』を結んでいますが、道徳的な措置への動きは存在しています。

 アジア諸国での動きとして、台湾は2015年に移植ツーリズムを意識した法改正を行っており、韓国では2020年に臓器移植法を修正し、渡航移植者が帰国後30日以内に国外での移植を報告することを義務付けています。

 英国ロンドンでは「中国(臓器収奪)民衆法廷」が開かれ、2019年6月の裁定では、下記のように警告しています。

各国政府および中華人民共和国とかなりの形で関わってきた下記の分野に携わる者は、上に記された犯罪の規模に関して、自分たちが犯罪国家と関わっていることを認識すべきである。

・医師、医療機関
・産業、ビジネス―特に航空会社、旅行会社、金融機関、法律事務所、製薬会社、保険会社、個々のツーリスト
・教育機関
・芸術機関

 これを受け、2021年には米国で「臓器収奪停止法案」が上院・下院に提出されました。

 自国からの渡航移植の取り締まりに留まらず、世界の臓器収奪状況や臓器収奪に従事する機関の医師を養成する米国の機関を把握し、臓器収奪に関わる移植手術のための機器の輸出を禁じ、臓器収奪への従事・支援にあたる国外の政府職員や機関の制裁など、一歩踏み込んだ法案です。

まとめ

 中国では、1983年以降、処刑も含む弾圧運動と免疫抑制剤の開発が同時期に起こり、死刑囚から臓器を収奪することが合法化されました。国家主導で軍が関わる体制のもとで、臓器移植産業は急速に発展しました。

 任意に拘束される「国家の敵」、身体検査を受けたという拘束経験者の証言から、短い待機期間を可能とする臓器バンクの存在が裏付けられます。国際社会の容認により、このおぞましい犯罪はさらに膨れ上がっています。同時に中国の犯罪に加担しないよう是正しようとする動きも起こっています。

 人の身体を党が利用すべき物品とみなす中国共産党の価値観と、人命を尊重する民主主義国家の価値観の違いを認識し、正確な知識を得て現状を把握することで、一人ひとりが自分の立ち位置を選択することが今、求められています。

日本語報道と書籍

日本語報道

中国の移植用臓器、出所は「ウイグル族の囚人」か 欧米で相次ぐ指摘

(産経新聞/SankeiBiz  2021年8月19日 桑村朋)

民衆法廷「中国は犯罪国家」と断罪 「良心の囚人」からの強制臓器収奪は今も続いている
(Newsweek日本語版 2019年6月19日 木村正人 欧州インサイドReport)

【寄稿】悪夢:中国の臓器売買の実態―ウイグル族やチベットの仏教徒など「良心の囚人」の臓器が強制的に摘出されている
(The Wall Street Journal日本語版 2019年2月6日 ベネディクト・ロジャース* 有料会員記事)
*ロジャース氏は、国際人権団体「クリスチャン・ソリダリティ・ワールドワイド(CSW)」の東アジア・チームリーダー。英保守党人権委員会の委員長代行。「中国での臓器移植濫用停止(ETAC)国際ネットワーク」顧問。

書籍

『臓器収奪―消える人々』― 中国の生体臓器ビジネスと大量殺人、その漆黒の闇
イーサン・ガットマン著 ワニ・プラス社 2022年1月25日発行

『赤い帝国』― 中国共産党による臓器収奪の真実
小川正樹著 2021年12月10日発行

よくある質問(FAQ)

Q: 臓器収奪とは?

A: 強制臓器摘出、臓器狩りとも呼ばれ、臓器売買の一形態です。
移植手術のために臓器が本人の合意なく摘出され、その過程で殺害されます。

 

Q: 証拠はあるのですか?

A: 実際に手を下した医師の証言、臓器移植の規模、数週間から数ヶ月という短い待ち時間、拘束経験者による身体検査や収監・拷問の証言、家族の証言、電話によるおとり調査の録音など多くの証拠が存在します。
2018年〜2019年に英国ロンドンを拠点に開廷した「中国(臓器狩り)民衆法廷」では、入手できる証拠すべてを詳査し、「臓器収奪は中国全域で何年にもわたりかなりの規模行われてきた」「現在も続いている」と結審しています。

 

Q: 臓器移植と臓器売買の違いは?

A: 臓器移植とは事故や病気により臓器が機能しなくなった人に、他の人の健康な臓器を移植し機能を回復する医療です。
臓器移植にはすでに死亡された方から臓器を移植する死体臓器移植と、生きている健康な方(多くは家族)の臓器を移植する生体臓器移植があります。
死体臓器移植は心臓を含む、多くの臓器を移植できる一方、生体臓器移植は肝臓、腎臓、小腸などの一部を移植します。
臓器移植を行うと、他者の臓器を異物として認識し排除しようとする働き(免疫)により、拒絶反応が起こります。拒絶反応が起こらないようにするために、臓器を移植される患者(レシピエント)と臓器を摘出される人間(ドナー)の血液、組織型の適合性を事前にチェックします。
いずれも臓器提供者(ドナー)の「提供したい」という善意の自由意思による行動であることが大前提です。
親族間の臓器移植手術ではない場合、臓器を移植される患者(レシピエント)は、通常、移植希望者として登録し、血液型などの要因が適合する臓器が現れるまで順番待ちをします。その際、財産上の利益供与は発生しません。
「臓器売買」は、金銭・物品などを対価として臓器提供を行うことで、貧困者からの搾取、人身売買、犯罪組織との結びつきが絡み、非倫理的であり、日本を含む多くの先進国で法律により禁止されています。

 

Q: 中国での臓器移植の問題点は?

A: 死刑囚や良心の囚人など臓器源として倫理的に問題のあるドナーから「本人の同意なく」臓器が摘出されている点、移植に際して金品の授受が行われている点、そしてそれが国家主導で行なわれている点が問題とされています。国家主導のため、闇市場ではありません。

 

Q: 良心の囚人とは?

A: 暴力に訴えない異見論者が、国家により収監された場合に用いられた言葉ですが、「中国(臓器狩り)民衆法廷」では広義に捉え、信条のみならず、中国政権が迫害する民族も含まれています。2021年6月14日、国連の特別人権報告者9名から中華人民共和国に宛てた書簡(英語原文)には、「法輪功学習者、ウイグル人、チベット人、イスラム教徒、キリスト教徒などの民族・宗教・言語上の少数派」と明記されています。

 

Q: 「中国(臓器収奪)民衆法廷」とは?

A: 2018年〜2019年に英国ロンドンを拠点に開廷されました。正式名称は「中国での良心の囚人からの臓器収奪を調査する民衆法廷」です。人権擁護で著名なジェフリー・ナイス卿を議長とする7名の判事団が、入手できる証拠すべてを詳査し、50名以上の証言者からの聴取を経て、「臓器収奪は、中国全域で、何年にもわたり、かなりの規模行われてきた」「現在も続いている」と裁定しています。

 

Q: どのような人が中国で移植を受けているのですか?

A: 中国共産党政権の幹部、富裕な中国人、「移植ツーリズム」として国外から移植を受けに中国にいく外国人などが挙げられます。
日本からの渡航移植に関する中国・民衆法廷での証言(動画1分35秒)もあります。

 

Q: なぜ医師が無実の人々を殺害できるのですか?

A: 中国政府は任意に「国家の敵」を定め、そのグループに属する人々に迫害を加えてきました。
中国共産党政権下では、「国家の敵」というレッテルを貼られたら、人間以下として扱われます。国家の敵を殺害し、その臓器を国民のために利用することは有益であるという考え方です。(中国・民衆法廷での関連証言 動画1分21秒)

 

Q: 国際社会の主な対応は?

A: 「中国・民衆法廷」の裁定を受けて、米国では2021年3月に「臓器狩り停止法案」が提出され、国連では2021年6月に9名の特別人権報告者が中国に書簡を提出しました(プレスリリース)。欧州議会の人権に関する小委員会でも2021年11月に取り上げられ、カナダ議会、英国議会でも法案・修正案通過のために議論されています。

 

中国での臓器移植濫用停止ETAC国際ネットワークについて

 「中国での臓器移植濫用停止 ETAC国際ネットワーク(International Coalition to End Transplant Abuse in China)」は、中国での臓器移植濫用を停止させようと献身する法律家、研究者、倫理学者、医療関係者、調査者、人権擁護者が手を携えるプラットホームです。

 ETACは独立した機関です。特定の政党や宗教・スピリチャル団体、政府、国内・国際機関とは提携していません。ETACのメンバーの背景、信念、宗教、民族は様々です。メンバーは皆、人権を擁護し、おぞましい臓器収奪を終わらせることに取り組んでいます。

 ETAC Japanは中国での臓器収奪に関する英語圏の情報を日本にお伝えすることを使命としております。

 更に詳しくはこちらへ:jp.endtransplantabuse.org

  1. 特別報告者とは、特定の国の状況または特定の人権に関するテーマに関し調査報告を行うため、人権理事会から個人の資格で任命された国連とは独立した専門家である。
  2. 中国臓器収奪リサーチセンター(COHRC)の「中国(臓器収奪)民衆法廷」への提出物(英語原文) p.20
  3. 2001年の第10回五か年計画に関する衛生省からの通知―中国語
  4. Transplant Abuse in China Continues Despite Calims of Reform(改革の主張にもかかわらず移植濫用を続ける中国) 本文p.35 “National Strategy and Funding”(国家戦略と資金)2018年 中国臓器収奪リサーチセンター(COHRC)発行
  5. WOIPFGによる電話調査2014年9月30日―中国語;明慧記事―英語
  6. WOIPFGによる報告―英語
  7. Aksu Internment Camp Was Former Hospital, Raising Fears Uyghur Detainees Are Used in Organ Trade 2020.11.18 Radio Free Asia
  8. キルガー、マタス『戦慄の臓器狩り』改訂版PDFページp.33【付録2】告白
  9. キルガー、マタス『戦慄の臓器狩り』改訂版PDFページp.26  (32)補強調査より
  10. ウイグル法廷全録のサウイトバイさん証言部分5時間2分から
  11. 米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のマヤ・ミタリポヴァ博士による中国・民衆法廷 提出文書の邦訳
  12. 「強制臓器摘出の阻止・撲滅に関する国際サミット」6日目の映像リンク 1時間6分より
  13. 英国(2年半から3年)、米国(5年から10年)は、2021年10月にウェブサイト上で確認した年数の平均日数。日本は厚労省の下にある日本臓器移植ネットワークのサイトで発表されている2002年から2019年までの平均値で、約15年に相当。
  14. 中国、中共ウイルス患者に胚移植5日で臓器入手か 執刀医に臓器狩り関与の指摘も』2020年3月3日 大紀元
  15. 强劲心脏在女孩胸腔有力跳动』(2020年7月3日 湖北日報)。なお、愛知県豊明市の藤田医科大学病院でのこの患者を中国に送り出すまでの奮闘を美談として2020年6月16日のフジ「とくだね!」で報道している。『中国臓器移植の真実』(集広舎)で詳述。
  16. 2019年6月19日American Thought Leaders の日本語字幕版2020年8月14日
  17. 「中国渡航の早期移植500〜1500万円 後ろめたかった人は2割」2017.7.13 SAPIO― Newsポストセブン
  18. 『赤い帝国』  第V章日本との関わり 2.日本のNPO法人と移植ツーリズムp.57 小川正樹著
  19. 『かつてなき邪悪な迫害』(2016年11月 博大出版)p.111-
  20. 中国・民衆法廷 陳述書
  21. 中国・民衆法廷 口頭供述の要約
  22. 中国・民衆法廷 口頭供述の要約