イーサン・ガットマン来日記念講演の全文
(2023年3月4日 東京・有楽町 三省堂書店: 写真は李真実YouTubeよりスクリーンショット)
本日、東京にお招きいただいた主催者の方々にお礼を申し上げます。また、中国での臓器移植濫用停止ETAC国際ネットワークの日本を担当している鶴田さんにお礼を申し上げます。彼女は、この問題を埋もれさせずに、粘り強く、『臓器収奪―消える人々』の出版という夢を実現させました。
この粘り強さは重要です。国家による臓器収奪の犠牲者のほとんどは、法輪功学習者、チベット人、家庭教会の信者から、ウイグル、カザフ、その他のトゥルク系の少数民族へと対象が移行してきましたが、中国の移植産業の全体像は、この「継続性」にあります。
私が今日、お話しする内容は、法輪功学習者に対する医療実験と殺害の上に構築された中国の移植産業についてです。この事実のために、『臓器収奪―消える人々』は今日でも新しい言語に翻訳されているのです。
本は出版されましたので、ここでは、本書にはない、個人的なリサーチに関してお話ししたいと思います。要点は、「中国での良心の囚人からの臓器収奪は終わっていない。医療改革はなされていない。フルスピードで進められている」。現状においての日本の中立性が持続可能性であるかは、ご自身の判断にお任せします。
具体的には次の点を取り上げます。
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- 中国の移植産業の簡略化されたタイムライン
- ケーススタディー:新疆ウイグル自治区のアクスに見られる「臓器収奪設備の集合体」
- 収容所から出所した難民の証言から推定できる大量虐殺の規模
- そして、最後に、中国の移植産業と日本との関係についても言及します
皆様からの質問やご意見もあるかと思いますので、要点をまとめてお話しします。
まず、すでに知られている臓器収奪に関するタイムラインです。
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- 1980年代後半:処刑された囚人からの中国での臓器収奪が決まりきった手順となる。
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- 1994年: 新疆のウルムチ地区で、生体臓器収奪の最初の証言者の報告。
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- 1995年:ウイグルの外科医、エンヴァー・トフティー医師が、生きている囚人から腎臓と肝臓を摘出するように命令される。新疆ウイグル自治区の首都ウルムチに近い処刑場で行われた。
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- 1997年: グルジャ事件の後、ウイグルの政治犯、宗教犯から臓器が、中国共産党幹部10名ほどのために、小規模に摘出される。
- 1999年: 法輪功修煉者への迫害が始まる。
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- 2001年: 中国の労働改造制度の下で拘束された約200万人の法輪功修煉者を対象に、「小売できる臓器」に絞った医療検査が行われる。
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- 2002年: 海外からの移植ツーリズム患者の待機時間が2週間以下と報告される。
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- 2003年: 拘束されたチベット人と家庭教会の信者が「小売できる臓器」に絞った医療検査を受ける。
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- 2007年: 中国の医療機関が、年間1万件の移植をおこなっていると主張。
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- 2012年: 個々の中国の病院での移植件数から、中国は年間最低でも6万件の移植手術を行なっていることが示される。
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- 2014年: 中国の警官が法輪功修煉者の自宅に入り込み、臓器の組織型の適合性を記録するために血液とDNAのサンプルを採取。
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- 2016年: DNAと組織型の適合性を記録するために、中国政府が1000万人のウイグル人を対象に強制採血。漢民族は医療検査の対象ではなかった。私がインタビューした証言者で、医療検査の後、治療を受けた者は一人もいない。
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- 2017年: 新疆ウイグル自治区で、100万人以上の囚人を拘留できる収容所が建築される。ウイグル人、カザフ人、その他のトゥルク系の囚人たちが、臓器の組織型、血液型の適合性を記録するために2ヶ月に一回「健康診断」を受ける。証言者によると法輪功修煉者も収容所で拘束されていた。
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- 2017年: 新疆の複数の空港で臓器輸送優先通路が設けられる。
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- 2018年: 新疆ウイグル自治区で、9つの火葬場を建築する命令が下る。最初の火葬場はウルムチに建てられ、漢民族の警備員50名が雇われる。
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- 2020年: 中央アジアでフィールドリサーチを行い、年間の移植件数を推定。
この点については、後でお話しします。
タイムラインの次に 新疆ウイグル自治区アクスの臓器収奪設備の集合体に関するケース・スタディーについて、お話しします。印刷されたものがお手元にあるかと思いますが、こちらのプロジェクターにも写します。
最初のスライドは、わかりにくい衛星写真です。なぜこの地域を見ているかというと、これらの収容所に短期間拘束された難民が、ラジオ・フリー・アジアの記者グルチェハラ・ホジャ(Gulchehra Hoja)に自分の体験を話し、ホジャ記者がこの地域の調査を私に促したからです。
次のスライドでは、三つの点が確認できます。
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- 二つの再教育施設:16.000人収容のものと33,000人収容のもの。
- 33,000人を収容する施設は、すでに存在した「アクス感染病院」の周辺に建てられている。
- 1キロ未満のところに巨大な火葬場がある。
次のスライド“Camp 33/Aksu Infection Hospital”は、もともとあった病院の施設のクローズアップです。赤線で囲まれています。収容所はこの施設の周辺に建てられています。
病院に刑務所が隣接することは新しいことではありません。法輪功修煉者からの臓器収奪が集中していた時期、このような状況はいくつかの省で見られました。
トルコで二人の証言者にインタビューしました。彼らの証言はアクスと密接な関係があると確信しています。
第1証言者はウイグル人男性で、1998年から2004年にかけてアクスの刑務所に入所し出所しています。
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- この証言者は、「アクス感染病院」はもともとSARSウイルスのために使われたと確定しました。2013年に、「宗教的」または「過激なイスラム教徒」を治療するセンターとして開発されました。
- つまり「アクス感染病院」は基本的に「再教育病院」となったわけです。
- ホジャ記者の個人的な調査によると、「アクス感染病院」は移植手術を行なっています。
次のスライドを見てみましょう。火葬場のクローズアップです。
この施設も第1証言者には馴染み深く、下記のことを指摘しました。
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- 道路から見える。目立った看板がある。
- 焼けた骨の匂いが漂う。
- ウイグル人は火葬しないが漢民族は火葬を好むので、中国人の身体を焼いたものだと思った。
第2証言者へのインタビューはトルコで行われました。アクス地区のウイグル人男性でした。
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- ほぼ毎日火葬場の近くを運転していて、火葬場であるとしました。
- 火葬場から強い毒物性の汚臭が放たれていたことにも言及し、住居者や作業員がよく苦情を言っていたということです。
このため、目に見える煙突はないけれど、火葬場からの匂い、アクス川につながる廃液管から、下記を用いた焼却法が用いられたと考えられます。
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- 極めて高温の熱
- 濾過装置
- 排煙を最低限にとどめるためのリバーナー(再燃焼設備)
この焼却過程は極めて効率が良いので、数は推定できませんが、これまで理解されていた数よりはるかに高い火葬量が考えられます。
次のスライド:「アクス国際空港」 病院からこの空港へは30分未満で行けます。
次のスライド:「人体臓器輸送通路」―中国では「グリーン通路」と呼ばれています。中国の海岸線近くの移植病院に臓器を輸出するための優先通路です。
次のスライド:上海の近くにある「浙江大学医学院附属第一医院」(浙江省第一医院)が、臓器のエンドユーザーを見つけました。この病院では、2017年初め、肝臓移植が90%増加し、腎臓移植が200%以上増加しています。
次のスライド:この浙江省第一医院は、中国でECMOのトレーニング・センターとして認定されている10軒の病院の一つです。ECMO(体外で作動する人工肺)は生体臓器収奪に使われ、移植可能な臓器の体外での保存期間を2倍から3倍に延長することを可能にしました。
次のスライド:”2020年3月1日” 浙江省第一医院はCovid-19の患者への初の両肺移植を成功させました。日本の市民も含む海外からの移植ツーリストへの宣伝となりました。Covid-19で人々が危険にさらされていた期間にもかかわらず、浙江省第一医院は「営業中」(business as usual)でした。
それでは、臓器収奪の規模は?
次のスライドのサイヤグル・サウイトバイ(Sayragul Sauytbay)さんが、収容所で中国語を教えていた時、仮設のような教員用のラウンジに入ることができました。2〜3ヶ月に一度、収容所全体では身体検査が行われました。2日後に検査結果のリストができました。3人の名前の横にピンクのチェックが付いていました。この3人は、次の10日間で、夜間に消えました。なぜ?とサイヤグルさんに尋ねたところ「臓器収奪よ」という答えでした。
スライド:証言者 ガルバハルさん。
血液検査の後、特定の囚人がピンク色の腕輪を手首につけていたのを覚えている、と証言してくれました。
スライド:カザフスタンでの調査 ― 時間が限られていますので、アルマティーで会った収容所から出てきた難民たちの話を要約します。
収容所を出るグループは二つに分けられます。一つのグループは若者で平均18歳。いわゆる「卒業」の発表は通常昼食時に行われます。東部にある工場で労働者となって搾取されるのです。発表を聞いたら皆は拍手するように促されます。
もう一つのグループは、25歳から35歳で、平均28歳。中国の医療機関が臓器として望む身体の発達段階にあります。彼らは夜中に連れ去られます。
約20件の収容所にわたる証言に基づく推定の平均率は、驚くほど一定しています。毎年2.5%から5%が消えています。
ですから、平均年齢28歳の、2万5千人から5万人のウイグル人が、毎年臓器を収奪されていると推測します。この中間をとって、年間3万5千人と示唆します。
「平均年齢28歳」のスライドが最後です。
では日本は何ができるのでしょうか? ここで私があれこれ言う代わりに、2点指摘して話を終わりにします。ご自分で何をすべきか、結論を出してください。
最初の点はカナダと英国では、昨年、中国への移植ツーリズムが事実上、禁止されました。EUもこれに続いています。
第二の点は、国際心肺移植学会(おそらく移植の世界では最も権威ある学会)が、来月の4月にコロラド州デンバーで行われる年次会議の開会セッションで、私が25分の話をするように招かれたことです。
私の人生にとって最も貴重な25分となることでしょう。私が優れたスピーカーだから招かれたわけではありません。国際心肺移植学会は最近、中国の移植外科医の論文を学会誌に発表することを禁止しました。私、デービッド・マタス弁護士、鶴田さん、ETACが表明してきたことがその理由です。我々は、中国の移植産業と関わっていくという医療界の戦略に真っ向から反対する立場を取ってきました。国際移植学会、バチカンが中国との関わりを強く促進してきましたが、あまりにも見事に失敗に終わりました。
医療界はこの戦略に代わるものを探しています。中国の移植産業はウイルスだと我々は見解します。世界はこのウイルスを隔離する必要があります。
この見解は、欧米の医療界では、もはや拒絶されていません。中国共産党が法輪功に対する迫害方法と全く同じものをウイグル人に用いるという選択をした時、「通常通り営業中」(business as usual)という中国の医療界の体制は終わりました。中国がCovid-19について嘘言を吐いた時、「通常通り営業中」という中国の医療界の体制は終わりました。中国での移植濫用に対する欧米の医療界の反応において、グルーバルな戦いが始まりました。私にとって勝敗は明白です。
皆様のお考えと異なるかもしれません。でも、一つのことだけは確実です。 決めかねなかったり、煙に巻いたり、どっちつかずな態度を取る時期は終わりました。日本はどちら側につくかを選択しなければなりません。私がその決断の助けとなれるのなら、それほど光栄なことはありません。正直者のブローカーとなることを誓います。
◎完全収録
◎サイン会の報道:
NTD https://www.ntdtv.jp/2023/03/58995/
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◎ガットマン氏へのインタビュー:
ー東京新聞「この人」:中国の臓器収奪を告発 イーサン・ガットマンさん
ーWiLL 2023年5月号 (3月24日発売)p.183-191
「中国の臓器狩りにナゼ黙るのか」 (聞き手:大高未貴)
ーチャンネル桜
3月28日報道:(大高未貴)
https://www.youtube.com/watch?v=GejGh2MiMtk 23:08- 49:22
ーエポックタイムズ・ジャパン:
映像:
https://www.epochtimes.jp/2023/04/144075.html
記事:
https://www.epochtimes.jp/2023/03/140604.html
https://www.epochtimes.jp/2023/03/140618.html
ー看中国 https://youtu.be/GwnRXZfclcs
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3月5日 アジア自由民主連帯協議会
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3月17日 長尾たかし(元衆議院議員)インタビュー
ーチャンネル桜
4月8日報道:ムフタル・アブドゥラフマン(日本ウイグル協会理事/九州大学人文科学研究院哲学専門研究員) 三浦小太郎(評論家 / 日本ウイグル協会)
https://www.youtube.com/watch?v=XAFeE7ZUruU