2022年2月25日、Human Trafficking Foundation(人身売買基金)がHuman Trafficking Through an International Lens(国際的なレンズを通して見た人身売買)と題するオンライン・フォーラムを主催しました。人身売買に反対するNGOのスピーカーと並んで、ETAC UKのVictoria Ledwidgeヴィクトリア・レドウィッジが、現状報告を行いました。下記、スピーチの概要です。ETAC Japan サイト内の関連リンクも挿入しました。2022年2月の時点での英国での法律改正の動きは他に記されていない内容です。
中国での臓器収奪とは?
弱者や貧困者を対象とする闇の臓器売買市場の存在は広く認識されている。
中国での臓器収奪は闇市場ではない。国家承認のもとに巨大な規模で、信条・民族を理由に収監されている無実の人々を対象とする。犠牲者は臓器の注文を受けて殺害され、摘出された臓器は富裕な中国人もしくは国外の人に移植を目的として売却される。
最初の英語圏での報告書は?
1994年のヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書
◎ 中国では「政治犯、その他の非暴力犯罪者」を臓器源とする。
◎ 医師が処刑前の医療検査に立ち入り、レシピエント(移植を受ける人)との適合性を確認。支払った順に移植が受けられる場合が多い。
◎ 処刑はわざと急所を外し、(臓器が新鮮であるように)臓器摘出の際に生存させる。
2000年からの移植件数の激増
仏家の修煉法である数百万人の法輪功学習者が1999年から収監されるようになり、2000年以降、移植件数が激増。多くの病院で移植設備が新設。移植のために医師や看護婦が養成。中国市民や国外の者が数週間という記録的なスピードで移植を受けられるようになる。事前に日程を決めた心臓移植も行われた。
この時期、中国には臓器提供制度はなかった。2010年に制度が導入されたが、提供者は極めて少なかった。
国際社会の動き
◎ 国連の人権専門家
2021年6月、12名の国連特別報告者と人権専門家が臓器収奪問題を中国政府に提起。
法輪功学習者、ウイグル人、チベット人、イスラム教徒、キリスト教徒が中国で臓器のために殺害されているという信頼のおける証拠に基づいた動き。書簡では中華人民共和国に「臓器収奪」の疑惑に迅速に対応し、国際的な人権擁護のメカニズムによる独立した監視することを認めるよう求めている。
◎ 中国(臓器収奪)民衆法廷
ジェフリー・ナイス卿を議長とする「中国(臓器収奪)民衆法廷」では、国際的な判事団(陪審員にあたる)が12ヶ月にわたり入手できる証拠全てを査定。50名以上の事実証言者、専門家・調査者が出廷。中華人民共和国の代表者も公式に招聘した(応答はなかった)。
2020年3月に文書として発表された「中国・民衆法廷」の裁定内容:
「臓器収奪は中国全域で、何年にもわたり、かなりの規模、行われてきた…法輪功学習者がおそらく主な臓器源である」
「ウイグルに関しては、本法廷は大規模な医療検査の証拠を得た。他の用途もあるが、ウイグル人が『臓器提供バンク』となりうる検査である」
ETACのチラシの2ページめに証拠の一覧あり
具体例:
◎劉玉梅(高齢の法輪功学習者)
電気棒を口内にあてられ、警官から性的な嫌がらせを受け、58日間強制給餌(米、尿、唾液、タバコの灰を合わせたものを管から流し込む)され、耳鼻咽喉を破損、骨折、一時的に聴力を失う。警官に「名前と住所を言わな ければ、おまえの臓器はすべて摘出され、おまえの家族はおまえの遺体を見つけることができなくなる」と言われたことを民衆法廷で供述。拘束中に説明なく採血され、医療検査を受けている。(供述書の邦訳)
多くの事実証言者が、拷問を受けると同時に、血液検査を受け、臓器をスキャンされている。ウイグル人のオメルべカリ氏は2017年の拘束中に血液検査を強要され、頭巾を被せられたままで臓器の超音波検査を受けている。
◎エンヴァー・トフティ
元外科医。生存中の囚人から臓器を摘出。以下、ロンドンの夕刊Evening Standardの記事からの引用:
そこには小さな小屋があり、二人の外科医が待っていた。「銃声が聞こえるまでここで待て。」時間が経過した。人々が叫ぶ声、唱える声、笛の音、トラックの走行音、そして銃声が聞こえた。ライフル銃が同時に発砲した音だ。車内に乗り込む。車は丘に沿ってぐるりと走る。囚人服で頭髪の剃られた遺体が、左側の傾斜面に10体ほど横たわっていた。それらの遺体ではなく、民間服を着た男の身体が「お前のだ」と言われた。この身体から肝臓と腎臓を摘出するように命令された。男は死んでいなかった。「臓器を摘出する以外の選択肢はなかった」とトフティは語る。
英国の法規改正の状況
ヘルス&ケア法の二つの修正案を下院でMarie Rimmer議員が提出。現在上院でHunt卿が提出。
1)渡航移植を違法とする。特定の国家を指定してない。
例外 -財務上の利潤が生じない場合
-文書による適切な合意もしくはその代わりとなる倫理的で法に準じたオプトアウト制度がある場合
認められる渡航先は、英国下院がジェノサイドと認定していない国とする。
→良心の囚人から強制摘出された臓器のために中国に渡航することは違法となり、臓器収奪に関与しないように英国市民を守る助けとなる。同時に、英国市民がグローバルで行われている臓器売買に関与することを禁じる効果がある。
2)プラスティネーションされた人体展が英国に入らないようにする。
2018年、バーミンガムNECで開催されたReal Bodies 展の遺体や人体の一部は、大連のホッフェンバイオテクニック社が提供したものであり、身元確認の書類も合意書もない。
英国は欧州評議会の人体の臓器売買に反対する条約に署名はしているが、批准はしていない。
英国が法的な措置をとることで、他国政府へのはたらきかけにもなる。イスラエル、台湾、スペイン、イタリア、ノルウェイ、ベルギーはすでに同様の法規を通過させており、米国では両党による「臓器収奪停止法案」が提出されている。フランス、イスラエル、ハワイ、チェコ共和国では、商業的な人体展を禁止。
ETACの活動
中国での臓器移植濫用を停止させるには、まず、認識を高めるために友人、家族に語り、地元の国会議員に連絡することから始めよう。ETACの解説ビデオもある。一般が認識することが鍵だ。
ETACでは現在#murderfororgans(中国での臓器のための殺人)を停止するために#NotFromChina(中国からはNo!)を宣誓するキャンペーンを展開中。