2007年の認定病院数からの概算
上記の表1は、認定病院数と認定要件である最低病床数という公の数値を用いて、年間の最低移植件数を計算したものです。2000年来、無秩序に成長する臓器移植の状況を規制するため、中国衛生省は、2007年に164の病院を移植病院として認定しました。
表の一番上の肝臓移植病院の数値をご覧ください。ベッドが常に使われており(稼働率100%)、1人の患者の入院期間を1ヶ月とすれば、認定の最低要件である25個のベッドが1年に12回使われることとなり、25 x12=300件の移植が可能です。この数を認定された肝臓移植病院21軒で掛けると、年間移植件数は6300件となります。このようにして種類別に算出し、合計すると2007年の認定段階で公的な設備基準から施術可能な年間移植件数は7万2540件となります。
国連の世界保健機関(WHO)とスペイン移植学会(ONT)の主導で構築されたデータには、2007年の中国での移植件数は8300件と記載されており、桁の違う数字です。
なお、認定病院数は、2014年に169軒に増加しており(2013年8月1日発表の認定病院のリスト)、さらに増加の傾向にあります。
また、2007年には1000軒以上の病院が認定を申請していることが、東風総合病院発行の記事(中国語)から示されています。つまり、それだけの数の病院が認定制度の導入される以前に衛生省の要求する施術能力を満たしていたことを意味しています。
2011年には、特定の要件を満たす非認定病院(最低でも75軒)に試験的な移植プログラムへの参加を認めています。特定の要件には、これまでの移植手術の実績が求められているため、2007年に病院の認定制度が導入された後も、非認定病院が手術を継続していたことが示唆されます2。
以上から、こちらで概算した年間7万2540件は実際の移植件数の一部に過ぎないことを把握していただけるかと思います。
「2016年の報告」の概算
2016年の報告〈更新版〉(日本語の紹介ページ)では、中国が発表してきた年間移植件数を鵜呑みにせず、中国での物的資源、人的資源、雑誌・論文を考慮し、肝臓と腎臓の移植に絞って、中国での年間移植件数を6万件から10万件と概算しています3
肝臓と腎臓の移植病院712軒の病院を分類し、各々の病院に2000年から移植手術をしてきた割合(1日1件、2日に1件、週に1件など)を割り当てました。大病院で低く見積もって1日1件の手術をこなしているとすると年間365件。また、高く見積もって1日2件の手術をこなしているとした場合、年間730件と考えて数値を割り当てました。各病院での推定値の総数を年数(14年)で割ることで高推定値と低推定値を算出し、年間の移植件数を、6万件 (Table 10.5)から10万件 (Table 10.6)と概算しました。
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肝臓と腎臓の移植以外の病院は考慮されていないことにご留意ください。実際はこの推定範囲を遥かに超えている可能性があります。
個々の病院の施術設備
ここで割り当てた年間365件もしくは730件は控えめな数字です。北京の309軍病院には393の病床があるので、1人の患者の入院期間を1ヶ月と仮定すると、(393×12ヶ月=)年間4716件の施術設備を備えていることになります。天津中央病院の東方臓器移植センターでは、500の病床数の稼働率が131%と謳っているので、(500×12ヶ月x1.31=)年間7860件の施術設備を備えていると概算できます。
韓国の潜伏取材
2017年に韓国の主流テレビの取材者が、親戚に代わって状況を問い合わせしているように装い、天津中央病院の東方臓器移植センターを訪れ、隠しカメラで収録した内容をドキュメンタリー(48分)として放映しました。その中で、日夜を問わず手術が行われている様子がドローンカメラに収められており、2016年報告書で用いられた算出の仮定(1日1件もしくは2件)はかなり保守的な数字であることも示されました。
- メディカル・ジェノサイド更新版 中国での移植濫用―まやかしの改革 PDF p.7(text page 13)より抜粋
- 2018年COHRCの報告 Continued Transplants by Non-Approved Hospitals PDF p.57より
- 英語原文:IV.Back-of-the Envelope Volume Scenarios