調査のきっかけ、これまでの調査報告、臓器収奪の過程について解説します。
調査のきっかけ
2006年、利潤の高い臓器移植産業に臓器を供給するために、オンデマンドで良心の囚人(無実の人々)が殺害されてきたという疑惑が初めて明るみになりました。アニー(仮名)と名乗る女性が、法輪功学習者から前夫が角膜を摘出していたと告発したことをきっかけに、中国での臓器収奪に関する様々な調査が行われてきました。
これまでの欧米での調査報告
2016年6月13日、米国下院で第343号決議案(H.Res 343)が満場一致で通過しました。「中国の国家認定下で系統的に合意なく(多数の法輪功学習者を含む)良心の囚人を臓器源としているという信頼性ある継続的な報告」の重視を表明した決議案でした。ここで用いられている「信頼性のある継続的な報告」についてご紹介します。
【2006年報告】
まず、アニーの告発を受けて、ワシントンを拠点とするNGO「法輪功迫害調査連盟」(CIPFG)に依頼され、カナダの元国務省アジア太平洋担当大臣デービッド・キルガー氏と人権弁護士デービッド・マタス氏が、2006年に調査報告を発表しました。中国での臓器移植率の急増と法輪功学習者の逮捕上昇率が一致することから、法輪功学習者が臓器の摘出源であると結論を下しました。
2007年1月改訂版
原題:Bloody Harvest: Revised Report into Allegations of Organ Harvesting of Falun Gong Practitioners in China
邦訳:戦慄の臓器狩り (中国における法輪功学習者を対象とした「臓器狩り」調査報告書)
全訳リンク
共著:デービッド・キルガー、デービッド・マタス
なお、同報告書をさらに細かく掘り下げ、2009年に書籍版がBloody Harvest:The Killing of Falun Gong for their organs(Seraphim Editions)として発行されています。邦訳『中国臓器狩り』 アスペクト社(2013年)
【2014年報告】
次に国際ジャーナリスト(英国ロンドン在住)で元ブルッキングス研究所外交アナリストのイーサン・ガットマン氏が、法輪功の拘束者だけが不可解な身体検査を受けていることに気づき、中国での移植の臓器源に調査を絞りこみました。中国から亡命し世界各地に点在する、労働改造制度のかつての従事者・拘束者 100名以上と2006〜2013年にかけて面接し、2014年にこれらの調査をまとめて一冊の本として出版しました。少数のウイグル人、チベット人、「全能神」信者も犠牲になっていることを示す証言も含まれています。
2014年
原題:The Slaughter:(Prometheus Books)
邦訳:臓器収奪ー消える人々(2022年1月25日刊行予定)
著者:イーサン・ガットマン
【2016年報告】
その後、キルガー氏、マタス氏、ガットマン氏が共同で調査を行い、各々の著書の更新版という形で、600ページ以上にわたる報告書を米ワシントンDCのナショナル・プレスクラブで発表しました。
2016年6月22日
原題:Bloody Harvest/The Slaughter:An Update 原文リンク
邦訳:中国臓器狩り/臓器収奪ー消える人々〈更新版〉
共著: デービッド・キルガー、デービッド・マタス、イーサン・ガットマン
移植手術の施設を対象に中国語情報を照合調査した大掛かりな報告書です。年間の臓器移植件数は中国政府発表の1万件でなく、肝臓と腎臓の移植だけでも6〜10万件と推定しました。移植病院の数多くの建設プログラム、生体臓器収奪は中国の医療経済の要であることも示しました。法輪功学習者からの臓器収奪は、いわば、密閉された部屋でのスローモーションの大量虐殺であり、社会的に尊敬されるべき医師が犯罪実行者になっている状況が浮き彫りにされました。
中国人主導の調査
以上の欧米の調査者の流れとは別に、「法輪功迫害を追跡調査する国際組織」(WOIPFG)が幅広く深い調査報告を2006年以来、継続的にオンラインで発表しています。同組織は、米国ワシントンを拠点とし、中国の元軍医、汪志遠医師(参照:連載コラムー国家犯罪を示す電話録音)が率いています。
中国・民衆法廷
2018年から2019年にかけてロンドンを拠点に開かれた「中国での良心の囚人からの臓器収奪を調査する民衆法廷」では、上記の調査を含む入手できるあらゆる資料(英語リスト)、50名以上の証言者からの提出物と供述に目を通し、罪のない人々を対象として中国での臓器収奪が現在も行われていると結審しています。
臓器収奪の過程
さらに、証拠から得られた事実に基づき、「中国・民衆法廷」では、法輪功が臓器の主な臓器源であることが確証されました。また、ウイグル人も臓器バンクとなりうると判定しています。これらの結審を踏まえ、臓器収奪の過程を以下のようにまとめることができます。
中国では、国家の敵として拘束された無実の人々から臓器が摘出される場合、臓器を提供した本人や家族に金銭・物品が対価として手渡されることはありません。摘出の過程でドナー(臓器提供者)は死亡します。