2018年10月、BBCWorldのImpactで2回、BBCラジオで2回にわたり、中国の臓器移植に関する特集がありました。ラジオ放送は下記のリンクから聞いていただけます。2回に分けての放送で、各26分。マシュー・ヒル記者が臓器移植への中国式アプローチを探索し、同記者による同月のテレビ放送より濃い内容でした。
ご参考までに、下記に日本語で内容を大まかにまとめました。
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2018年10月15日放送
https://www.bbc.co.uk/programmes/w3csxyl3
誰を信じる?(Who To Believe)
・エンバー・トフティ(元中国―ウイグル―の外科医):1995年にまだ息のある囚人から臓器を摘出したときの証言。
・アニー・ヤング:友人医師が1985年に臓器を摘出したと証言
・匿名の元中国の医師:処刑者の頭は撃ち抜かず右胸を撃ち、死なせないで臓器を摘出する話はプライベートに交わされていた。
[ナレーション:2015年、中国は囚人からの臓器摘出を停止したと発表]
・ジェイコブ・ラヴィー(イスラエルの心臓移植医):2005年に自分の患者が中国で決められた日時に心臓移植をした。当時、保険が移植ツーリズムを支えていた。2008年にイスラエルは移植ツーリズムを禁じる法律を導入。
[ナレーション:公式発表の移植件数と実際の移植件数には10倍の開きがあると調査者は批判]
臓器源は?
[ナレーション:1999年 法輪功の迫害が始まる。中国の気功と瞑想から成り、中国で人気を集めた。
国家の管理制度下にはなく、人数が多くなり(1億人)、中国政府が危惧。多くは労働教養所に入れられ、2〜3年もしくは転向するまで投獄される。禁酒・禁煙のため、法輪功をやっている者は、国家にとって容易に臓器が摘出できるターゲットとなった。法輪功だけでなく、ウイグル、一部のキリスト教徒も犠牲になっている]
・イーサン・ガットマン:「国家の敵」を消滅させることが目的。
・ウェンディー・ロジャーズ(オーストラリア、マクアリー大学教授):自分の調査で「良心の囚人」から臓器を収奪していることが判明。死刑囚とは全く違う。
・デービッド・マタス:電話のおとり調査で、病院が法輪功臓器の使用を認めている。待ち時間の短さ。
証拠は?
・アニー・ヤング(中国人の元拘束者・法輪功・ロンドン在住):労働教養所の近くの病院で3ヶ月ごとに血液、目、臓器の検査を受けた。海外との接触があったので体には触れないで精神的な拷問を受けた。
・ハイ・カンリウ(67歳・中国人の元拘束者・法輪功・トロント在住):3ヶ月後、病院に連れられた。瓶2本分の血液がとれらた。
・マンフレッド・ノーヴァク:(ウィーン大学教授 国際法・人権) 2004〜2010年、拷問に関する国連特別報告官 。2005年、中国視察。拘束中のアニー・ヤングの釈放を中国政府に陳情し、アニーと接触。
[ナレーション:国際社会に知られる拘束者は臓器をとられないが、無名の法輪功は?]
懐疑的な意見:
・ジェラミー・チャップマン:(国際移植学会の元会長)中国の病院を視察。臓器のための殺害という話は信じ固い。事実を証明するためには中国側の透明性が必要。
結論:良心の囚人が犠牲者である明確な証拠はないが、否定する証拠もない
しかし…
100万人のウイグル人が拘束。労働教養所に送還されている。12歳から65歳のウイグル人のDNA,血液検査、瞳のスキャンが採集された。臓器ドナーの備蓄か?法輪功に起こったパターンが繰り返されている。
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2018年10月22日放送
https://www.bbc.co.uk/programmes/w3csxyl4
移植ツーリズムと透明性(Tourism and Transparency)
・中国の病院に実際に問い合わせて肝移植にいくらかかるか記者が尋ねたところ、US$100,000と言われた。
・2017 年10月、韓国の朝鮮テレビの記者が中国の移植病院に入った。
中国政府は渡航移植を見てみぬふり。病院近くのホテルも使用。昨日は膵移植1件、腎移植3件、肝移植4件が行われたと看護婦は語る。通常3年待ちの肝臓が3ヶ月以内と確約されている。
―臓器はどこから来るのか?―
2018年7月、スペイン、マドリッドで開催された国際移植学会には中国臓器提供制度の責任者が参席していた。
背後情報:
・ウェンディー・ロジャーズ(オーストラリア、マクアリー大学 臨床倫理学 教授):科学論文誌 Liver Internationalに掲載された肝移植医(浙江省の法輪功迫害機関の責任者でもあった)の鄭 樹森(浙江大学付属第一医院)が2010−2014年の研究結果を発表した論文が撤回された。564件の肝移植の全てが心停止後の自主的臓器提供によると主張しているが、臓器提供制度は彼の病院では2011年まで導入されず、導入後も心臓のみとなっている。2011-2014年の臓器提供者数は全国で2000名強。4分の1が研究に使用されたのか?移植用に実際に使える臓器はドナー全体の30%。これを指摘したところ、中国では90%だと主張し、関係のない中国語の文書が送られてきた。
[鄭 樹森に直接インタビューを試みたが、全く口は開かなかった]
―中国での臓器件数について―
・中国は儒教国家で死者の体にメスを入れることを嫌う。
・中国が発表する移植件数は10,000 件
・2016年、ETAC(中国での臓器移植濫用停止)国際ネットワークは、それ以上であるとする。
(イーサン・ガットマン:米議会の公聴会:50,000件以上)
・イーサン・ガットマン:中国の臓器提供センターに調査員が毎日電話を入れたが、返事はほとんどない。応答したセンターに尋ねると臓器件数は一桁。
以下、国際移植学会でのインタビュー
黄潔夫(移植医・元副衛生部長・中国臓器提供移植委員会理事・議長):
中国の統計では、70%の市民が臓器提供に前向き。50万人が登録。
昨年の中国での移植件数は15,000件
ICU(集中治療室)からも臓器を入手
レポーター:肝移植がすぐできるのはなぜか?
黄:政治的な意図のある質問には答えたくない。
王 海波(黄の代理・中国臓器分配共有システム理事):
肝移植は緊急を要する。だからすぐに移植を受けられる。
レポーター:ツーリストとしてUS$100,000で移植を受けられると言われた。
王:それは犯罪だ。逮捕されるべきだ。法律機関に通知する。教えてくれたありがとう。
―移植ビジネスを支える臓器源はどこから?―
ジェラミー・チャップマン:(国際移植学会の元会長)中国の軍病院は視察できなかったが、他の病院を事前に通知して視察。どのように移植が行われ、患者が看護される環境を確認し、臓器源を理解し、ICUからの臓器を奨励することが視察での指針であった。2010年から心停止後の臓器提供を試験的に開始。2014年12月に死刑囚からの臓器摘出を停止したという声明があってから、死刑囚から臓器を摘出している証拠は何も見ていない。
レポーター:2014年以降の臓器源に関する書類を見たか?
ジェラミー:様々なデータがあり、臓器摘出のインタラクションもあった。ICUの医師と2回にわたる会合をし、説明を受けた。
レポーター:主な臓器源としてICUに移行したことを信じるか?
ジェラミー:移植件数、病院内での変革から、新しい臓器源が獲得されたことが示されている。
適切な透明性には欠ける。
レポーター:待ち時間が短く、高額で移植が受けられる事実は?
ジェラミー:起こるべきではない。しかし、臓器源を確定するものではない。
韓国、台湾、シンガポール、台湾、日本からの渡航移植があることは認識している。渡航移植に合法性はない。中国は法を行使すべき。
・ジェイコブ・ラヴィー(イスラエルの心臓移植医):中国国内で自主的臓器提供の動きはあると思うが、中国全体をみたら、一部に過ぎない。
結論:透明性が大切。良心の囚人からの臓器摘出の疑惑は続く。中国側の透明性が確立するまでは、各国政府が渡航移植を禁止するためのプレッシャーが続くだろう。
英国で開催された人体展のBBCの報道を背景に番組は終了。
2004年以来、死因の分からない死体が展示されてきている。
―以上―