臓器収奪に関する英国議会でのラウンドテーブル:デービッド・キルガー
2度めのラウンドテーブルの会合が2018年4月17日(火)に英国議会の会議室で行われました。中国での臓器収奪の認識を高めるための会合で、英国国会のジム・シャノン議員とフィオナ・ブルース議員が共同で開催しました。
この会合では、中国での臓器収奪に関する証拠が提示され、この行為を防ぐことに貢献するために英国政府が取れる措置について、専門家らが話し合いました。
スピーカー(敬称略):デービッド・キルガー、ベネディクト・ロジャース、イーサン・ガットマン、エンヴァー・トフティ、アンディー・ムーディー、アドナン・シャリフ医師、サイモン・グロス、ゼック・ハル
以下はデービッド・キルガー氏のスピーチです。
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人身売買は、現代社会の奴隷制度のおぞましい構成要素です。記録されている歴史上で、現在の奴隷は最大数であると推定されています。一般の認識の欠如、貧困なデータ、法的制度の弱さ、不十分な資源、人身売買に反対するコミュニティーの協力不足がこの理由に挙げられます。協調のとれた国際的なキャンペーンが必要とされています。責任のある各国政府が行動を共にする必要があります。
『中国臓器狩り』
関連する問題として、臓器収奪/臓器売買/移植ツーリズムについてお話ししましょう。中国全土で20年近くにわたり、無実の人々を対象とし、犠牲にしてきたのです。
2006年半ば、デービッド・マタス氏と私は、法輪功学習者を対象とした臓器売買の疑惑をボランティアとして調査してくれないかと法輪功迫害真相調査連盟(CIPFG)に依頼されました。これを受けて、報告書2回と書籍『中国臓器狩り』を発表しました。そして調査を続けています(改訂された報告書は18カ国語に翻訳され、www.david-kilgour.com からお読みいただけます)。2000~2005年に中国で41,500件の臓器移植が行われたと結論を出しました。臓器源は、法輪功の良心の受刑者であることに議論の余地はありません。
証拠
帰結に導いた18種類の証拠のうちの2つをご紹介しましょう。
- 中国全域の病院、拘束所、その他の設備に調査者が数多くの電話を入れ、移植が必要な家族がいるが法輪功臓器は買えるかと尋ねました。中国全土で約15軒の施設が、法輪功臓器を売買していることを認めました。録音テープは書き起こしされ、翻訳されています。
- 投獄され、中国から逃れた法輪功学習者が、中国全域の強制労働所に収容されていた時、血液検査、臓器検査を系統的に受けたことを示しています。拷問を受けているため、健康を気遣っての検査ではありません。臓器移植を成功させ、生体ドナーを確保するために必要な検査でした。
『臓器収奪ー消える人々』
ノーベル平和賞候補者であり、「ETAC 中国での臓器移植濫用停止 国際ネットワーク」の共同創設者であるイーサン・ガットマン氏は、2014年発行の『臓器収奪ー消える人々』で、法輪功、チベット、ウイグル、全能神のコミュニティーを犠牲者としています。2000~2008年の期間に臓器を収奪された数は、65,000人の法輪功、2,000~4,000人のウイグル人、チベット人、キリスト教徒と推定しています。
『臓器収奪ー消える人々』では、最後の言葉として、責任のある政府、機関、人間にこう呼びかけています。「どの欧米機関にも(中国内の臓器移植に関する)医療改革の約束を口実に人道に反する犯罪への調査を妨害する中国共産党を許容する権限は、道徳的に存在しない。人類が生き延びるためには、大量「殺処分」へと陥った人間の堕落に対して、その脈略を把握し査定し、最終的に学び取る必要がある……肝要なのは史実だ。中国共産党の重罪を赦免できるのは、犠牲者の家族だけなのだから」
『2016年 最新報告〈更新版〉』
2016年6月、マタス氏、ガットマン氏、私の三人で、我々の著書の〈更新版〉にあたる最新報告書をワシントン、オタワ、ブリュッセルで発表しました。(「中国での臓器移植濫用停止 ETAC 国際ネットワーク」のサイト www.jp.endtransplantabuse.org から原文(英語)をお読みいただけます。
- 中国全土の数百軒の病院における臓器移植プログラムを精査。医療関係誌、病院のウェブサイト、保存されたウェブサイトから情報を収集し、病院の収益、病床数、稼働率、外科担当スタッフ、国家資金、その他の要因を分析しています。
- 2016年半ばの時点で、中国全土で、控えめにみても最低年間6万件の移植が行われているという結論に達しました。中国政府が主張するおよそ1万件とは大きく異なります。「自主的ドナー」は一握りで、犯罪者としての囚人は数千人に過ぎません。これらの人々を差し引いて、1日約150人の無実の人々が臓器のために殺害されているのです。
- 国家が指示する臓器移植ネットワークを示す証拠を提示しました。国家政策と資金を通して管理されています。軍と民間の両方のヘルスケア制度が関わっています。
中国共産党国家は、2015年1月以降、受刑者を市民と分類しなおし、言葉のあやを使って全ての臓器源は、「自主的に提供された」ものだと現在主張しています。
世界保健機関(WHO)、国際移植学会(TTS)、ローマ教皇庁科学アカデミー(バチカン市国の科学アカデミー)などの機関は真実を把握すべきです。これらの機関は中国共産党路線を受け入れ、「数十億ドルの中国移植産業市場は、受刑者の臓器が支えていることを認める事実」(ルイザ・グリーヴ、「中国での臓器移植濫用停止 ETAC 国際ネットワーク」英語版サイト www.endtransplantabuse.org より)のような指摘を無視しています。
昨秋、ボストンのハーバード・スクエアで行われた『ヒューマン・ハーベスト(人狩り)』(ピーボディ賞受賞)の上映会で、デービッド・マタス氏の下記の指摘を強調しました。
- ソ連での精神医学の濫用に直面した世界の精神医学医は、ソ連での行為に強く反対しました。今日、国際的な移植医が、中国での移植外科の濫用に直面していますが、彼らの対応は異なっています。
- グローバルにみて、移植外科医は下記の3つのグループに分けられます。
o 調査を読み、中国での臓器移植は無実の人々の大量殺害を隠蔽したものであることを認識している者。この事実に基づいた行動として、中国の移植外科医とは距離を置き、他の者にもそうするように勧めている。
o 調査を考慮せず、自分たちの責任範囲外のものだとするナイーブな者。調査の結論と中国共産党のプロパガンダを両方耳にして、自分では結論を出さない。
o 中国共産党国家によるプロパガンダを信じる愚かな者。中国共産党路線をオウム返しにし、無実の者の大量虐殺を示す調査は噂に基づくものだとする。調査は実証可能であり、実証されているにもかかわらず、裏付けがないという党の路線に賛同する。濫用は過去のものであり、現在は行われていないという主張を繰り返す。
- 国際的に移植をリードする機関の人々は、中国での臓器移植濫用に関する調査を読む時間はありません。また自分たちが支援するイベントに調査者を招く善意もありません。しかし、少なくとも何が語られているかに耳を傾けることはできるのではないでしょうか。
- 党の路線から外れた場合、中国の人々、特に高官は逮捕されます。臓器移植の分野だけでなく、国家政策のあらゆる分野で見られます。党の路線に符合すると断言して初めて釈放されます。重度な病気にかかる以外には、釈放の余地はありません。中国の国外で臓器移植をリードする医師が、調査も実証もせずに、このような釈放された高官の言葉を真に受けるとしたら、彼らも党の路線を受け入れていることになります。
- 中国国外では、ドナーは死亡(少なくとも脳死)しているか、移植前も後も生存しています。中国は臓器摘出によりドナーを殺害する唯一の国です。ドナーは手術前は生存しており、手術後は死亡しています。
中国の法律と政策は実践されていることと同一であるとされ、中国国家の法律は中国共産党には事実上、適用されないということは、認識されていません。中国共産党は国の法的制度のあらゆる側面を掌握しているのです。世界保健機関(WHO)、バチカン市国のローマ教皇庁科学アカデミー(PAS)、国際移植学会(TTS)、イスタンブール宣言実行グループ(DICG)は、中国共産党が自分たちの耳にしたい言葉を語るので、喜んで受け入れてしまいます。
独立した調査者による無実の大量殺害の証明に対して、中国政府は信頼のおける回答をしていません。中国での臓器移植産業の規模を考えると、信頼のおける形でこの調査報告を否定することは不可能です。中国共産党のプロパガンダ、公式データの否定、存在するものに対してないふりをすることで説得できるのは、騙されやすい人、敢えて見ないようにする者だけです。中国での真実に進んで直面しようとする態度が、移植外科医の間で一般に広がり、これ以上、無実の者が臓器のために殺害されないことを望む限りです。
強制労働所
デービッド・マタス氏と私は、強制労働施設、そして中国から逃れた法輪功学習者と面談するために、十数か国を訪れました。これらの良心の受刑者は、2001年以来、中国本土全域で主な臓器源でした。これらの施設では、毎日、最高16時間、無賃で働かされ、ほとんど食べ物もなく、押し詰め状態で睡眠をとり、拷問も受けたと語ってくれました。多国籍企業の下請けとして輸出用の様々な消費者製品を作らされています。企業の社会的無責任と世界貿易機関(WTO)の規則違反を意味します。中国と貿易をする企業が効果的な対応措置をはかることを要求します。
結論
“China Fantasy”(『危険な幻想―中国が民主化しなかったら世界はどうなる』PHP研究所)の著者であり、ロサンゼルス・タイムズの北京支局長ジェームズ・マンは次のように述べています。「……世界の民主政権は、より頻繁に協力し、関係者間の会合だけでなく公にも、中国の抑圧を譴責する必要がある……なぜ、中国の幹部が子弟をアメリカの最高の学校に送り込みながら、国内で弁護士を幽閉する状況が起りうるのか? 貿易をしているからといって、中国政権が開放的になることはない……」
温家宝首相は、退陣前にこう語っています。「政治的枠組みの改革が成功しない限り、経済の枠組みを完全に改革することは不可能だ。得たものを……失う可能性がある……文化大革命のような歴史的な悲劇はまた起こるかもしれない」
世界中の政府も企業も、中国との貿易・投資を増加するために、これほどまでの多くの基本的人権を踏みにじる行為をなぜ支援するのか、考える必要があります。国内でできる仕事を中国に調達し、対中国の貿易・投資の赤字額は増える一方です。虐待されている中国人を犠牲とした人間性・社会性・自然の環境を無視してまで、安価な消費者製品にこだわる必要があるのでしょうか?
最初の一歩は、今、臓器収奪・臓器売買・移植ツーリズムを停止することです。中国全域での移植手術件数を年間6万件とすると、1日平均およそ150人が臓器のために殺害されていることになります。皆様一人一人が「ETAC 中国での臓器移植濫用停止 国際ネットワーク」に参加していただければと存じます。こちらをご覧ください。www.jp.endtransplantabuse.org
ご清聴ありがとうございました。