臓器収奪停止に向けて法改正を進める議員らが講演
以下、デービッド・アルトン卿のホームページに基づいた、各議員・弁護士のスピーチ概要と、アルトン卿のスピーチの全訳。(写真:IPACの発起人イアン・ダンカン=スミス卿(中央)のスピーチに聞き入るデービッド・アルトン卿(司会者の左);写真提供:Victoria White )
2023年7月17日、国際的な団体であるIPAC(対中政策に関する列国議会連盟)の発起人、貴族院議会 委員会室で、「法輪功のストーリー:中国にはもう一つのジェノサイドがあるのか?」と題したセミナーが開かれた。スピーカーは、国際的な団体であるIPAC(対中政策に関する列国議会連盟)の発起人イアン・ダンカン=スミス卿(貴族院)、臓器収奪停止のための法改正を働きかける三人の議員、デービッド・アルトン卿(貴族院)、フィリップ・ハント卿(貴族院)、マリー・リマー議員(庶民院)、カナダのデービッド・マタス人権弁護士。そして中国で拘束され拷問を受け英国に亡命したグレース・ソンさん、ハン・フェイさん。
イアン・ダンカン=スミス卿(英国保守党の元党首)は、IPACは法輪功迫害に関する「かなりの証拠」を収集しており、法輪功に対して何が起こっているのか、認識は徐々に広がっている」と語った。また中国との取引にあたっては、「中国共産党は公約を破り、履行する意図もない」ことを念頭に政策を策定するように英国政府に警告した。
フィリップ・ハント卿は、移植ツーリズムと人体展を停止させる議員法案を提出している。また、2021年には「医薬品・医療器具に関する法律」に「人の医療品に関連する組織もしくは細胞の使用」を規制項目として導入することを提起し、臓器の輸入制限を法制化した。ハント卿は、英国政府の中国に対する曖昧な政策は誤りであり、中国国内の臓器収奪と法輪功の扱いに断固反対する立場をとることで、議会は国際的にシグナルを送る必要があると語った。被害者に報いるためにも、諦めてはいけないと指摘。
マリー・リマー議員は、バーミンガムで開催された「人体展」で無名の無実の囚人の遺体が見せ物になっていることから、中国共産党が臓器を収奪する本質を認識し、衝撃を受けたと語る。法輪功修煉者が受けてきた残虐行為に関する報道をBBCがストップしたことを批判し、カトリック教徒として「バチカンと中国共産党の間に結ばれたおぞましい協定」に憤りを覚え、「ビッグ・ビジネスとビック・マネーが臓器収奪に関与しているか背後にあることが示唆されている」と加えた。
カナダのデービッド・マタス人権弁護士は、ジェノサイド条約で定められた基準に関して詳細で思慮深いスピーチを行った。「ジェノサイドの決め手は動機にあることは考慮すべき重要な点だが、『あえて見ないふりをすること』や指導的な立場にある者など、さまざまな動機が重なっる可能性もある」とし、この点をさらに掘り下げた論文を発表するつもりだと述べた。
法輪功学習者のグレース・ソンさん、ハン・フェイさんは、中国共産党による監禁、トラの椅子に縛り付けられるなどの拷問、何日にもわたる絶え間ない殴打など、胸を打つ力強い証言を行った。
以下はデービッド・アルトン卿のスピーチの全訳
アルトン卿は「宗教と信教の自由に関する超党派議員連盟」の共同設立者。同議連の副議長。
「臓器収奪と法輪功」
私は長い間、法輪功が置かれている苦境、残虐な迫害、特に生体臓器収奪について認識しており、何度も国会で発言してきました。
臓器収奪の疑惑は、陰謀論とみなされる傾向があります。さらに、臓器収奪は隠蔽された犯罪のため、前線で擁護することが大変難しいのです。
被害者は生存していないため、証拠を得ることは通常困難です。
それもあってか、2000年代初頭、臓器売買と人身売買を犯罪とする『パレルモ議定書』の下で、有罪判決を受けた者は一人もいません。
このような状況下で、私たちが手にした証拠は、政府を目覚めさせるものです。新疆ウイグル自治区に次ぐ中国の大規模な人権スキャンダルです。
『世界人権宣言』と『ジェノサイド条約』の採択から75周年を迎えるにあたり、「宗教・信教の自由に関する超党派議員連盟」の副議長として、私は『世界人権宣言』第18条をここで強調します。信じるか信じないかの自由、宗教・信念を変更する自由は基本的人権です。
中国人にはそのような権利はありません。バチカンと中国共産党の間で交わされた秘密協定を特に注視しています。信教の自由という大義に多大な損失をもたらすものです。バチカンがナチスドイツと恥ずべき協定を結んだ過去の歴史を思い起こさせます。
ジェノサイド罪であるかどうかは別として、「中国(臓器収奪)法廷」は、生体臓器収奪を 「20世紀の抗争で最悪の残虐行為に匹敵する」としています。
1948年にパリで国連によって採択されたジェノサイド条約では、集団殺害とは「国民的、人種的、民族的または宗教的集団を全部または一部破壊する意図をもって行われた次の行為のいずれをも意味する」と定義されています。
・集団構成員を殺すこと。
・集団構成員に対して重大な肉体的または精神的な危害を加えること。
・全部または一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること。
多くの法律家や学識者によると、中国で行われている全国的な法輪功の根絶運動は、現代のジェノサイドにあたるとしています。 法輪功は心身修養法で、かつての学習者の数は7000万人から1億人と推定されていました。
ハドソン研究所のシニアフェローで、米国国際宗教自由委員会の元委員であるニーナ・シア氏は、「ブリンケン米国務長官は、中国をジェノサイド国家と定めるための犠牲者集団に法輪功を加えるために速やかに行動すべき」と述べています。
1999年7月20日、故江沢民・元中共総書記が法輪功への迫害を開始したとき、彼の意図は明確でした。江沢民は法輪功の「根絶」を「610弁公室」に任命しました。当時610弁公室の主任だった李蘭青が発表した法輪功に対する政府の新しい方針は、「名誉を汚し、経済を破綻させ、肉体を消滅させる」というものでした。
江沢民はなぜ法輪功を根絶しようとしたのでしょうか? 江沢民は法輪功の人気に脅威を感じたのだと多くの人は考えています。法輪功はまったく平和的で非政治的なものですが、当時の中国の法輪功学習者の数は中国共産党員の数を上回っていたのです。
中共は無神論者であり、程度の差こそあれ、すべての宗教を弾圧しています。 キリスト教徒は検閲された聖書しか読むことができず、宗教指導者は頻繁に投獄され、認可された宗教団体でも厳しく監視・管理されています。 しかし、江沢民は法輪功を管理することができないと認識しました。共産党内部の役員も法輪功の修煉を始めていたからです。中共のマルクス主義が「大恥をかく」ことを、江沢民は恐れたのです。
先週、英国議会の「情報・安全保障委員会」は、中国に関する重大な報告書を発表しました。 報告書によると、中国は英国経済の「あらゆる分野」に浸透しており、法輪功は中共にとって政権への最大の脅威の一つと見なされていると陳述されています。
「スパイ活動や干渉に関しては、英国が中国の最優先事項である可能性は低い。米国や、中共の支配に脅威を与えるとみなされている国内の脅威(五毒:台湾独立、チベット独立、新疆分離主義、中国の民主化運動、法輪功)が中国諜報機関のターゲットとなる可能性が高い」
英国の学術界に対する中国共産党の干渉について、同報告書は次のように述べています。
「中国共産党(CCP)が肯定的に提示する話を損なうような項目が取り上げられないように、主に教育機関、学者、学生に圧力がかけられている。いわゆる 『五毒』が絡むと、特に深刻である」
最後に、「米国医師外科医協会(AAPS)」の最近の声明を紹介させてください。 同声明では、宗教活動や異見、民族的背景を理由とした投獄、あらゆる形態の強制臓器収奪を非難しています。
「米国政府と米国の医師は、臓器収奪の容認、機会の提供、助長、参与を拒否すべきである。 これには、臓器収奪に使用される可能性のある技術を用いて、共産主義中国のような全体主義国家やその他の国の医療従事者を教育・養成すること、臓器収奪が用いられるプログラムに患者を紹介すること、彼らの手による介護に参与することが挙げられる」
なぜこのような立場表明が必要なのでしょうか? 7月4日に発表された「米国医師外科医協会」の声明は以下のように始まります。
「中国で絶対的な権力を握る中国共産党の下で、中国共産党の党員が法輪功学習者、ウイグル人、キリスト教徒などを中国で逮捕・監禁し、移植手術を希望するレシピエントと適合する臓器を見つける目的で、本人の同意なく医療検査を行い、臓器を移植のために摘出し、その過程で殺害し、金儲けのために『移植ツーリズム』を行ってきたという圧倒的な証拠がある」
中国共産党による民主主義への妨害行為や脅威を認識する上で、法輪功が受けてきた脅威と残虐行為を認識することは不可欠です。
これはまさに、新疆ウイグル自治区に次ぐ中国の重大な人権危機です。我々は声高にそして明確に事実を語るべきです。
沈黙している時ではありません。