国際心肺移植学会(ISHLT)
第43回年次総会&科学セッション
2023年4月19日 基調演説
米国コロラド州デンバー
(訳注:以下は実際のスピーチ・テキストの邦訳です。スライドは全部で67枚でしたが、著作権の問題もあるため、画像を最低数に留め、テキストのみで読み切れるように文章を調整しました。書籍の日本語版がある場合は、日本語版の表紙の写真を使用しました。『臓器収奪ー消える人々』に掲載されている画像に関しては、ページを記しました。書籍内の写真キャプションに、より詳しい説明があります。このスピーチは、全く新しい写真説明がなされており、同書を別の角度から読む機会を提供しています)
スピーチ原稿原文(テキストのみ)
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ご招待に感謝し、ISHLTの倫理委員会のAre Holm議長に感謝します。
この発表に際して、関連する金銭関係をここに宣言します。
開示すべき関係はありません。
いかなる薬剤や医療機器の適応外の使用や治験的な使用については言及しません。
– 数年前、ロンドンで開催された「中国(臓器収奪)法廷」で証言した際、ジェフリー・ナイス卿*に「主な被害者グループと(法輪功やウイグルの人たち)血縁・家族関係があるか尋ねられました。
-「私そして私の家族は、ウイグル人でも中国人でもありません。私は不可知論者であり、妻は過激な無神論者と呼ばれています」と答えました。
(*訳注:ジェフリー・ナイス卿は、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷 the International Criminal Tribunal for the Former Yugoslaviaで元セルビア大統領スロボダン・ミロシェヴィッチの起訴を率いた。)
人権問題への関心
人権に関するフィールド調査に惹かれてきた理由を簡単にご説明します。
私の血の中にあります。私の母方の祖父、 ロバート・レッドフィールドは人類学者でした。彼のフィールド調査のほとんどは、メキシコのチアパスで行われました。
私の父、デイヴィッド・ガットマンは、メキシコで、そしてイスラエルのドゥルーズ派や、ナバホ族(訳注:アメリカ南西部の先住インディアンの部族)に関して、異文化間のフィールド調査を行いました。デイケアを提供することもありました。私のインタビューの手法は、幼少時代に小屋の片隅で遊びながら耳にした父の技法を、しばしば真似ています。
1999年に北京で目撃したこと
1999年、北京でビジネス・コンサルタントをしていた私は、警官が法輪功をやっている女性を、何の表示もない車に押し込むのを目撃しました。この経験と私の生い立ちが重なり、2007年、バンコクで法輪功の難民にインタビューするまでに至りました。
中国では、「国家の敵」である法輪功の修煉者と話をしようとするだけで、何度も逮捕され、死に至ることさえあります。そこで、誰にも害が及ばない形で情報を得る一つの方法として、中国の国外に居住する難民を対象にした秘密裏のフィールド調査を行ったのです。しかし、問題がありました。中国では、誰もが何らかの意図を持っています。中国出身の被害者も例外ではありません。物事を正しく理解すること、悪い情報を排除することが私の直面した課題でした。私は、証言者とのインタビューに12時間かけることで知られています。証言者を疲れさせて、私が聞くべきだ証言者が思い込んでいることではなく、自分の体験をそのまま話してもらうためです。
本日は、中国の臓器収奪の変遷を時系列で手短に説明します。政治犯、宗教犯が対象で、人権擁護者は「良心の囚人」と呼んでいます。
下記の項目に沿ってお話しします。
中国の臓器収奪の臓器源の変遷
i) 死刑囚:1980年代後半~1990年代中頃
ii) ウイグルの最初の政治犯 1995-1998
iii) 主要臓器源としての法輪功:1999年~2014年
iv) 主要臓器源としてのウイグル:2015年~2023年
v) 欧米の対応
中国での臓器移植の発展を鑑みるとき、臓器源に焦点を当てることも一つの方法です。中国政府は、移植外科医が死刑囚から臓器を摘出したことを認めています。少なくとも2015年までは、中国の法律で死刑を宣告された一般の犯罪者から行われていました。私の焦点は、中国政府が触れることのない政治犯や宗教犯です。これらの囚人が正式に死刑を宣告されることはほとんどありません。しかし、中国の移植産業のための臓器供給源になっています。長年にわたり、臓器はチベット人、家庭教会の教徒、カザフやキルギスなどのトルコ系民族も臓器源になっています。本日は、中心的な被害者グループのウイグル人と法輪功修煉者に焦点を当てます。
現在、主要な臓器源であるウイグル人からの臓器収奪についての調査は困難です。この説明のために、私が行ったフィールド調査の準備段階をご紹介します。
i) 死刑囚 と ii) ウイグル人の最初の政治犯 は、私自身のフィールド調査に基づくものです。主要な臓器源である法輪功の臓器収奪については確かな調査がなされていますので、重要な書籍や報告書にご注目していただきたいと思います。
最後に、政策、特にISHLTの新しいスタンスと、米下院議会で通過した「2023年 臓器収奪停止法」について説明し、ISHLTがこの先に直面するかもしれない問題を予測してみます。
i)死刑囚:1980年代後半~1990年代中頃

(『消える人々』のp.47の写真)
左の写真は中国共産党の処刑場、つまり中国の臓器収奪の発祥の地です。
– 写真の出所は不明です。米国の諜報機関は、1980年代後半の新疆ウイグル自治区での写真だと推定しています。
– 反抗的にこちらを見つめている男が、足元に横たわる囚人たちを射殺したところです。
– 返り血を浴びないように、使い捨ての手袋をしています。
– すべて合法です。囚人たちはそれぞれ、自分の罪状を記したポスターを身に着けています。
– 外科医もいるでしょうが、その姿は見えません。
– 当時の臓器収奪は、死刑囚の処刑で日和見的に付随したものでした。

(『消える人々』p.32の写真)
左の写真は同じ時代のものです。
– この女性は、寝ている間に夫を殺害しました。
– 有名な事件だったので、党はこの写真を広範に配布することを許可しました。
– このような犯罪に対する死刑には、中国では議論の余地がありません。

左の拡大写真から、射撃者の肩越しに数台の白い車が見えます。病院の車かもしれません。
ある元警官によると1992年の処刑場の状況も、前の写真と同じ状況で、様々な病院の車が周囲を取り囲んでいた、と語っています。ある医療車の中で囚人の処置が終わったとき、好奇心からこの元警察官が遺体袋の中を覗いたところ、胸が “空っぽ “だったということです。
以下は匿名希望の孫文記念病院の移植外科医の証言です。
– 1992年、処刑場で医療車に乗っていた。
– 死刑執行された男性が運び込まれ、囚人の腎臓を摘出する際に男性の首の周りに紫色の線があることに気づいた。
-法廷で沈黙を守らせるため、警察が男性の喉にワイヤーを巻いていた。
– この男が政治犯であった可能性に、自分は苦悩してきた。
ii)ウイグルの最初の政治犯 1995-1998
(『消える人々』p.37の写真を表示して)
ニジャットは、ウルムチ地区で政治犯の処刑を日常的に行っていた公安局の特別部隊に所属する唯一のウイグル人でした。以下、彼の証言です。
– 1994年、医療車から「地獄のような」叫び声が聞こえてきた。
– 1996年、この部隊の医療部長はニジャットに「処刑はショックを与えるもので、即死ではない」と説明した。
(『消える人々』p.40の写真を表示して)
現在ロンドン居住のウイグル人外科医、エンヴァー・トフティ医師は私に次のように告白しました。
1995年、新疆ウイグル自治区ウルムチ近郊の政治犯処刑場で、一人の負傷者が与えられた。
– 囚人のような坊主頭ではなく、普通の髪をしていた。
– 胸部を撃たれていたが、「この傷は必ずしも致命傷ではない」と考えていた。一瞬、「この男の命を救える」と思った。
– その代わりに、男の腎臓と肝臓を摘出するよう命じられた。心臓はまだ動いていた。
– トフティの上司は自分に、その日のことは口外するなと命じた。
– しかし、西側のいくつかの議会で、宣誓して「あの男を殺した」と証言した。

1997年、中国共産党はウイグルのある都市でラマダンのお祝いを禁止し、ウイグル人はグルジャ市庁舎で抗議しました。
(『消える人々』p.45の写真を表示して)
グルジャの警察官、バティヤルから聞いた話ですが、ウイグル人400人が初日に殺され、その後2カ月間、1日10人ほどの割合で殺されていきました。
– 病院ではウイグル人を治療することが禁じられた。
– 遺体を扱うことになるイスラム教の埋葬も禁じられた。
– 遺体は包まれて埋葬され、墓地は武装警備員がパトロールしていた。
ウイグル人のある若い医師が、同じ1997年に、ウイグルの政治犯から血液を採取するよう命じられたと、私に内密で告白してくれました。
– 採血の理由を尋ねると、「移植のため」と明確に言われた。
– 中国共産党の上級幹部6名が北京から飛んできたところだった。
– 1998年、新たに6人の幹部が到着し、医師は2回目の血液検査を行った。
iii)主要臓器源としての法輪功:1999年~2014年
法輪功の興隆

法輪功について
―1992年、法輪功は各地の公園での気功動作から始まり、精神修養法として実践者が7000万人に至るまで発展しました。
―私は、法輪功を「仏教の復興運動」と定義します。気功や健康よりも、仏教の美徳である「真・善・忍」を重視するからです。
―文盲の者から大学生や教授に至るまで同様に、法輪功に惹かれていきました。
―党が気にしたのは、(左下・先頭にいる)制服の青年(党員)です。(『消える人々』p.90の写真)

人民解放軍に入隊する青年たちです。
―中国共産党の最高レベルの幹部も法輪功に“感染”していました。
―法輪功の広がりは、階級や農村・都市間の隔たりを飛び越え、会員名簿も入会金もありません。マルクス主義の観点からは、権力奪取のテンプレートです。
―法輪功の価値観は、新中国の価値観(力ずくの国家主義)とは真っ向から対立するものと見なされました。(『消える人々』p.58の写真)

1999年の大連での朝の煉功の様子です。
―同年の7月20日、中国国家安全保障局は、文化大革命以来、最大規模の措置となった法輪功撲滅運動を開始しました。(煉功点の鳥瞰図)

2001年には、その多くの人がここ「瀋陽監獄城」に収監されることとなりました。
―私の推定では、強制労働所、刑務所、拘置所、「黒監獄」などに収監された法輪功修煉者の数は、2001年には約200万人、2010年までには70万人、その後、下降し、2013年には45万人を大きく下回りました。
(『消える人々』p.372の写真)
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最初の報告書
著名な人権弁護士であるデビッド・マタス氏とデビッド・キルガー氏は、2006年に中国の臓器収奪に関する最初の報告書Bloody Harvest(邦訳リンク)を作成しました。
― この報告書は、現在も調査の重要な柱となっています。
―主な内容は以下のようにまとめることができます:
2006年には年間約7000件の臓器移植が行われたと報告されている。中国での処刑者数と報告された臓器移植件数には食い違いがある。
(写真は書籍版Bloody Harvestの邦訳版の表紙)
電話調査の記録
中国の医師との電話録音の書き起こし:
上海中山医院の臓器移植クリニック (2006年3月16日)
調査員:…待ち時間は?
医師:こちらに来てから1週間ほどです…
調査員:法輪功からの臓器のようなものはありますか?とても良いと聞いているので。
医師:うちのものは全てそのタイプです。
この電話では1週間の待ち時間が設定されており、法輪功の臓器が存在することが明確です。
法輪功の臓器があることを立証しています。
(訳注:その他の電話録音に関するETACの関連資料)
中国の広告にあった移植価格
移植の種類 | コスト |
腎臓移植 | US$62,000 |
肝臓移植 | US$98,000〜130,000 |
肝腎移植 | US$160,000〜180,000 |
腎・膵移植 | US$150,000 |
肺移植 | US$150,000〜170,000 |
心臓移植 | US$130,000〜160,000 |
角膜移植 | US$30,000 |
法輪功修煉者を投獄し始めた時期に肝臓移植が増加した例
上海の長征医院(海軍軍医大学第二附属医院)
臓器移植センターでの移植件数の推移

天津市第一中心医院
東方臓器移植センターでの移植件数の推移


『臓器収奪―消える人々』について
私の著書 The Slaughter は、2014年に出版され、2022年に邦訳版が『臓器収奪ー消える人々』というタイトルで出版されました。
(訳注:同著の日本語による紹介文と字幕付き動画へのリンク)
同著の骨格となる5点を説明しましょう。
1) ウイグルが臓器収奪の対象になっていることを確立
チベット人や中国家庭教会の信者についても書かれています。
2)50名の法輪功の難民へのインタビュー
(『消える人々』p.313の写真を表示して)
余新輝(ユ・シンフイ)は、広東の刑務所での臓器を対象とした検査を説明してくれました。
―法輪功の拘束者だけが、血液検査、腹部検査、心電図、尿検査、角膜の状況を調べる検査(視力検査は一切なし)を受けた。
―多くの法輪功修煉者は過酷な拷問を受けた。多くの女性は強姦された。しかしこれらの検査の後には(結果も再診も)何もなかった。
―看守は健康をチェックするためでなく臓器のためであることを明確にしていた。
(訳注:身体検査に関する証言を集めたETACの関連資料)
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左の写真の5人の拘束経験者は、法輪功難民の迫害状況の割合を正確に表しています。
1. すべてが労働改造制度の下で拘禁されている。 (5人中 5人:100%)
2. すべてが拷問を受けた。 (5人中 5人:100%)
3. 一人は強姦された。(5人に1人:20%)
4.写真の左の女性は小売臓器のための検査を何度も受けた。(5人に1人:20%)
5. 医療検査の後に消えた人数に基づき、2001年末から2008年末にかけて臓器収奪された法輪功修煉者数を私は約6万5千人と推定する。年間約8000から9000人の割合になる。 (『消える人々』p.299の写真)

3)国家認定の下で行われている臓器収奪
(『消える人々』p.335の写真を表示して)
―王立軍(写真では眼鏡の男)は中国で最もよく知られた警官で、共産党幹部・薄熙来の右腕でした。
―王立軍は吉林市に臓器収奪センターを設立し、新しい薬殺用注射のパイオニアとして特別貢献賞を受賞しています。
(訳注:左は実際のスピーチでの写真)
4)新たな証言者
(『消える人々』p.321の写真を表示して)
柯文哲医師
―台湾の柯文哲医師は、自分の高齢な患者のために中国大陸の移植病院と価格交渉しました。
―中国の移植医が柯文哲医師のクリニックに臓器を「家族価格」で提供し、すべては法輪功臓器なので、患者は質の高い臓器を移植されると確約されました。
―しかし数年後、台北市長選に出馬した柯文哲医師は、私が別の医師と混同したと主張しました。
―しかし、私の本に掲載された写真は本人から受け取ったもので、告白の全内容の出版を許可した書簡も同著の中国語版に掲載されています。

猫組長
書籍にはありませんが、新たな証言者を一人加えます。
―東京で6週間前に「猫組長」に会いました。
―「猫組長」はヤクザでした。親分の手術のために北京の武装警察病院を訪れました。
―親分の肝臓が安定する間、「猫組長」は男が横たわっている部屋に入りました。拘束され、鎮静剤を打たれていました。手首と足首のアキレス腱が切られていました。
―「猫組長」は外科医に、この男について尋ねました。
―肝臓のドナーでテロリストということでした。
―どのようなテロリストかと尋ねたら
―”法輪功”と言われました。
―当時、ヤクザの一員としてこの事実に対して特に何をすることもありませんでしたが、現在ヤクザから足を洗い、信頼性ある証言者として発言しています。
5)終わることがない
(『消える人々』p.355の写真を表示して)
2013年のある一日、500名の拘束者と共に臓器検査を受けたという証言者に、2014年に同著を書き上げる少し前に出会い、当時、なお続けられていることを再認識しました。

2016年報告書:『中国臓器狩り』/『臓器収奪―消える人々』《更新版》
1年後の2016年、個々の病院の数値や施設から、中国の年間臓器移植数は年間1万件ではなく少なくとも6万件であるという説得性のある報告書を(マタス、キルガー、私の)共同で発表しました。
臓器移植に関わる865件の施設を特定しましたが、これだけの移植件数を可能にする臓器収奪の数や比率を割り出すことはしませんでした。
報告書は700ページに及び、脚注は2000以上に及びます。そのうちの9割は中国本土の資料です。
この報告書を受け、中国側は、新たに設置された「自発的臓器提供プログラム」によって移植件数は支えられていると主張しました。
(訳注:日本語の解説と英語原著へのリンク)

ドナー登録者数の増加率は二次関数曲線
その2年後(2018年)、ジェイコブ・ラヴィー医師、共産党犠牲者追悼基金の中国専門特別研究員マシュー・ロバートソン氏、統計学者のレイモンド・ハインド博士が一つの大きな発見をしました。
―中国が発表した数字に基づく、中国市民による自発的な臓器提供の登録者数は、正確に報告されたデータに基づくものではなく、簡単な二次方程式に沿って累積増加させたものでした。
―つまり、中国の医療改革の柱である「自発的臓器提供プログラム」は虚言に基づいていたのです。
(訳注:関連記事)

医師が臓器摘出することでドナーは死亡
昨年(2022年)、ジェイコブ・ラヴィー医師とマシュー・ロバートソン氏による、中国での移植に関する大規模なデータ分析の結果、医師の心臓摘出によりドナーが死ぬことは、例外的なことではなく、通常の手順であることが明らかになりました。
左の地図は、(この調査報告に掲載されている)脳死判定に問題のある病院の全国的な分布を特定するものです。
生きている人間から臓器が摘出されていたのです。医師が新たな死刑執行人となっていました。
(訳注:ETACプレスリリース)
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「中国(臓器収奪)法廷」
もう一冊、貴重な本を提示させてください。
「中国(臓器収奪)法廷 ― 裁定」は、現時点で最も包括的な調査書です。数年にわたる調査者の作業を集約しただけでなく、法輪功修煉者とウイグル人の証言が記録されています。
以下は判定の一部です。
「本法廷の判事団は全員一致をもって、合理的な疑いを超えて、中国でかなりの期間、極めて多くの犠牲者に対して、良心の囚人からの臓器収奪が行われてきたことを確信する」
(訳注:日本語による詳細はこちらのサイトへ)
iv)主要臓器源としてのウイグル:2015年~2023年
血液検査とDNA検査
ウイグルの話に移ります。
―何が起こったのかを理解するためには、2103年に遡る必要があります。
―中国の6つの省で、警官が法輪功修煉者の家に入り込み、血液検査とDNAの口腔上皮による採取を行いました。臓器移植を受けるレシピエントの組織型との適合性を測るための検査です。法輪功の臓器供給が枯渇していることを示す手がかりになります。

その1年後、党は12歳以上のすべてのウイグル人、つまり約1000万人に血液検査とDNA検査を義務付けた「健康診断」を受けるよう命じました。
―漢民族は免除されました。
―私が直接、話を聞いた難民の中で、検査後に治療を受けたり、医療面での連絡を受けたりする人は誰一人いませんでした。
― 左の写真は内密に持ち出されたものです。
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収容所
米国務省の推計では、ウイグル人、カザフ人、その他のテュルク系少数民族の2016年末までの収監者数は80万人から300万人でした。
左の地図は、米国の「アメリカ国家地理空間情報局」(National Geospatial-Intelligence Agency)が2017年のウイグル自治区の収容所の状況を保守的に表したものです。
火葬場
収容所の制度が発達するにつれ、囚人の動きが垣間見えるようになりました。
―新疆ウイグル自治区に9つの大規模な火葬場を建設する命令を傍受しました。
ーウルムチの最初の火葬場は、中国語の新聞に警備員50人を募集する広告を出しました。
月給1,200ドルでした。
ここで、新疆ウイグル自治区のアクス地区の火葬場について見てみましょう。
―二つの”再教育”施設 (1万6000人の収容所と3万3000人の収容所) があります。
―3万3000人の収容所は、すでにあった「アクス感染病院」の周囲に建てられています。
―両方の収容所から900メートルのところに巨大な火葬場があります。

左の“Camp 33/Aksu Infection Hospital”は、もともとあった病院の施設のクローズアップです。赤線で囲まれています。収容所はこの施設の周囲に建てられています。
―アクス刑務所制度のウイグル人元兵役経験者が「アクス感染病院は、もともとSARSウイルス患者のために使われていた」と私に語ってくれました。
― 2013年、この病院は 「宗教的」または反体制派の「過激なイスラム教徒」の治療センターへと変わっていきました。
―この病院では臓器摘出や臓器移植を行うことが電話(録音あり)で確認されました。
―この収容所に馴染み深い証言者は、「焼けた骨の匂いが漂う」と語りました。
―ほぼ毎日火葬場の近くを運転していたアクス地区のウイグル人男性も「火葬場から強い毒物性の汚臭が放たれていた」と最初の証言を裏付けています。
―アクス川につながる廃液管から、下記を使った焼却法が考えられます。
- 極めて高温の熱
- 濾過装置
- 排煙を最低限にとどめるためのリバーナー(再燃焼設備)
臓器のエンドユーザー
「アクス国際空港」は病院から30分未満のところにあります。
―空港には「人体臓器輸送通路」が設けられています。中国の海岸線近くの移植病院に臓器を輸出するための優先通路です。
―新疆にあるすべての「グリーン通路」は、一方通行、つまり輸出のみです。
―上海の近くにある「浙江大学医学院附属第一医院」(浙江省第一医院)はアクス感染病院と公式に提携しており、おそらくアクスからの臓器のエンドユーザーでしょう。
―この病院では、2017年初め、肝臓移植が90%増加し、腎臓移植が200%以上増加しています。
浙江省第一医院はCovid-19の患者への初の両肺移植を成功させました。海外からの移植ツーリストへの宣伝となりました。パンデミックにも関わらず、中国の臓器移植は「営業中」と世界に発信し宣伝となりました。
消える人々
この「主要臓器源としてのウイグル: 2015年~2023年」のセクションを、難民の証言で締めくくりたいと思います。
―サイヤグル・サウイトバイ(Sayragul Sauytbay)は収容所で中国語を教えていました。逃亡し、カザフ当局に保護され、最終的に私はスウェーデンでインタビューしました。
―収容所全員に対する「身体検査」が2ヶ月に一回行われました。その後、教員用のラウンジの壁に血液検査結果のリストが貼られました。
―ピンクのチェックがついている名前があり、これらの人々は夜間に消えました。サイヤグルさんは「臓器収奪」のために選ばれたと確信していました。
―トルコではガルバハルさんにインタビューしました。
―血液検査の後、特定の囚人がピンク色の腕輪を手首につけていたことに気づきました。
―他の難民はピンクまたはオレンジ色のベストを着ていたと描写しました。
臓器収奪の規模の推定
臓器収奪の規模を把握するためには、収容所から最近出てきた難民にインタビューする以外に術はありませんでした。
―しかし、難民の大半はカザフスタンにいました。
―その多くは、収容所でまだ家族が拘束されていました。
―インタビューする難民を匿名にするために、尾行されないようにカザフスタンに入る必要がありました。
我が子のように育てた娘(foster daughter)を連れて、(訳注:親子が中央アジアを探検しているという設定で)カザフスタンまで運転しました。(訳注:追跡されないように)電子機器が一切ない2003年の自動車を使いました。地図とコンパスだけが頼りでした。
このフィールド調査から下記が明確になりました。
―収容所を出るグループは二つに分けられます。一つのグループは若者で平均18歳。東部の工場で働く者の名前の発表は通常昼食時に行われます。発表を聞いたら皆は拍手するように促されます。
―もう一つのグループは、25歳から35歳。
―平均28歳。中国の医療機関が臓器として望む身体の発達段階にあります。
―彼らは夜中に連れ去られます。
―拍手もありません。いなくなった者について言及することは危険です。
―約20件の収容所にわたる証言に基づく推定の平均率は、驚くほど一定していました。
―毎年、全く同じようにして、2.5%から5%が消えています
―臓器収奪以外に納得のいく説明はありません。
―100万人が拘束されているとして、毎年、2万5千人から5万人のウイグル人が、臓器収奪されていると推定します。
v)欧米の対応
政策面を取り上げて、私の講演を締めくくりたいと思います。
2016年を振り返ってください。表向きは同じ側にいるように見えても、膠着状態にありました。欧米の移植機関による中国の移植業界に対する「ソフトな改革」の試みが行き詰まったことを、この米外務省の公聴会では場内すべての議員が知っていました。
議員たちは、移植のことはよく知りませんでしたが、中国共産党のことは知っていました。
そこで、議会はフランシス・デルモニコ医師(訳注:国際移植学会の元会長)を「落ち着くことのできない」席に座らせました。しかし、「国家による系統的な臓器収奪に関する持続的かつ信頼できる報告について」の第343号決議案が上院で討議されることはありませんでした。
欧米の医学界のコンセンサスは、中国との対立を避けることだと米議会は理解したのです。
それでは現在は?ウイグル人が消えていることをご存じない方もいらっしゃると思いますが、今回の中国当局がウイグル人に何かをしているという認識は皆さんお持ちだと思います。パンデミック(Covid)の起源について決めかねているかもしれませんが、中国当局がCovidについて嘘をついたことがないと言い切れる人はいるでしょうか?
欧米の医学界は、中国への”関与” 政策の合意を続けていました。中国当局は欧米との合意をとっくに破棄しています。
ISHLTの声明 と 「2023年臓器収奪停止法案」
ISHLTが2022年に中国からの移植関連の論文を受け付けないと発表したとき、キャピトルヒル(米議会議事堂)の夜空が燃え上がりました。
以下、ISHLTの声明からの引用です。
“中華人民共和国政府が、処刑された囚人から臓器や組織を摘出することを組織的に支援し続けているという証拠があることから、中華人民共和国のヒト・ドナーからの臓器や組織を含む移植に関する論文は、上記に挙げた目的のために、ISHLTが受理することはない。他の国が同意のないヒト・ドナーからの臓器または組織の使用を組織的に行っており、この制限を適応すべきかを含め、これらの行為がなくなったという独立した証拠を得て、この方針は年ごとに見直される。”
米下院は最近、「2023年臓器収奪停止法案」を賛成413票、反対2票で可決しました。
この法律は、中国の移植医が米国に何もなかったかのように入国することを防ぎます。
この法案は彼らの仲間を世界にさらけ出します。さらにこの法案は、中国の移植制度に関する情報収集のための大規模な取り組みを求めています。
中国で臓器提供制度を改革し、合法的な脳死者の同意に基づく臓器提供制度を確立しようとする動きがあることをISHLTは認識しています。しかし、ISHLTや関連団体が臓器提供制度を制限なく現地で独自に調査する機会が与えられない限り、ISHLTが始めた学術ボイコットを解禁したり「2023年臓器収奪停止法案」に細かく規定されている法的措置を解除する根拠はなく、このような措置は妥当だと思われます。
まとめ
―ISHLTは鞭を手に立ち上がりました。
―ここで予言します。ごく近い将来、皆さんは中国問題の解決策に出会うことでしょう。
―現地での無制限のアクセスではありません。中国共産党にはできないことです。
―移植ロボットからECMO(対外式模型人工肺)まで、あらゆる医療機器がAIによってグローバルに接続され、完全に透明化される「データの民主化」の世界の到来です。
―統計学者は不要で、怪しげな異常値はAIが拾ってくれるのです。
―しかし、中国側は入力データを改ざんするのでは? 中国のAIが私たちのAIを凌駕する可能性は? その可能性はあります。
―歴史が改ざんされる問題もあります。中国はこれまでのことを調査すべきではないでしょうか? そして謝罪と補償をすべきではないでしょうか?それとも過去の医療問題はそれほど重要ではないのでしょうか?
―繰り返し罪を犯す者をどこまで信用したらいいのでしょうか?
―私の父は心理学者でした。ですから、子供の頃からソ連の精神病院での反体制派に対する拷問を世界精神医学会が非難していることを知っていました。
―ソ連の精神分析家は、欧米の学会では歓迎されませんでした。世界精神医学会の雑誌に論文を発表することも、向精神薬の共同開発もできませんでした。
―ゴルバチョフの時代でも変わることはありませんでした。
―皮肉なことに、ラヴィー医師とロバートソン氏の研究によって、中国の移植病院で何が行われているかは、ソ連の精神病院よりもはるかに詳しく把握できるようになりました。
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鞭を手にすることには責任が伴います。中国の(多くの)優秀な外科医たちに対する責任ではなく、中国による世界との関わりに対する責任でもなく、中国人の感情に対する責任でもありません。
第一の責任は、この写真の難民と娘に対してです。
今後、皆さまと一緒に仕事ができることを光栄に思います。
私たちが把握していること、していないことについて、私は常に率直であることを誓います。
以上で私のスピーチは終わりです。ご清聴ありがとうございました。