海外からの圧力を受けて、中国の臓器移植を担当するスポークスパーソンである黄潔夫 元衛生省次官は、2015年より死刑囚からの臓器の使用を停止すると発表しました。この主張は国際的な移植機関全般に受け入れられ、中国の高官は世界保健機関(WHO)の臓器移植タスクフォースのメンバーとなり、中国の外科医は欧米の医学雑誌や学術大会で論文を引き続き発表しています。
中国では死刑囚を臓器源としてきました。2005年12月には中国も公認しています。自発的に臓器を提供するドナー制度は2010年に導入され、2015年には100%が自発的臓器提供になったとしています。中国発表の情報に基づき、その経過を以下にまとめました。1
2010 年:臓器提供制度の最初の試験的導入
2013 年:全国的な臓器提供/分配制度(COTRS)発足
23%の臓器が自発的に提供(光明日報2013年9月3日)
2014 年: 80%の臓器が自発的に提供(騰訊網特別報道)
2015 年:100%の臓器が自発的に提供(CCTV.com 2015年1月11日)
本当に100%「自発的」ドナーへの切り替えが5年で行われたのでしょうか?以下、英語圏の学者による指摘から、無実の人々からの臓器収奪は現在も継続されていることを示します。
死刑囚も市民
2015年10月8日にThe BMJ Opinionに掲載された『囚人からの臓器に関する中国の意味論的なまやかし』という記事(英語原文)の中で、中国の臓器移植に関するスポークスパーソン黄潔夫・元衛生次官の関連発言がリストされています。さらに2015年12月3日には、The BMC Medical Ethicsでは論文『中国での死刑囚からの臓器摘出に関する過去と現状』(英語原文)が発表されています。以下、論文からの引用です。
黄潔夫は「囚人の臓器」を新たに定義したようだ。“従来の方式”(つまり、本人の合意なく、病院と地元の法廷間での非公式な取り交わし)によって入手した臓器は、「囚人からの臓器」である。しかし、“合意”が得られた場合は、市民からの自発的提供による臓器と分類される。
2014年3月、黄潔夫は、処刑された囚人からの臓器を、「公平、透明で、腐敗なく」臓器を割当てるため、既存の自発的臓器提供・割当のシステム(COTRS:中国臓器割当共有システム)に組み込むと発表(英語記事)。この前例のない措置が意図するところは、2014年3月4日づけの全球新聞に掲載された黄潔夫へのインタビューで明示されている。
死刑囚も市民であり、臓器を提供する権利があります。重要なことは法治の確立です。今後、死刑囚からの臓器提供には本人及び家族の合意が必要になります。市民の臓器提供と同じです。同時に我国の法律に基づいて、それら(処刑された囚人の臓器)は、公平な臓器割当のためにコンピュータ化されたシステムに登録されます。[…]自発的提供を望む死刑囚から摘出された臓器は我々の統一された割り当てシステムに登録され、市民からの自発的臓器提供として扱われます。いわゆる死刑囚からの臓器提供はもはや存在しなくなるのです(中国語記事)。
2015年にオーストラリアのニューサウスウェールズ州議会でのイベントで、シドニー大学のマリア・フィアトローネ=シン教授は、黄潔夫の発言を引用して、以下のように警鐘しています。(映像字幕より引用)
2015年のインタビューで黄潔夫は次のように語っています。「私は死刑囚からの臓器提供に反対するとは言っていません。死刑囚が自己の良心に動かされた場合、臓器提供は不可能ではありません。しかし公平な分配のために、市民の臓器提供制度、赤十字、オンラインのコンピュータ制度を通さなければなりません。これで透明になりました」と黄潔夫は言いました(人民網2015年1月28日:中国語原文)。抑制の効かない状況に陥ってしまいました。
人体部品のために処刑された囚人と良心の囚人からの臓器が、…自主的に提供された臓器と区別なく混合されてしまったのです。これが「透明」と言えるのでしょうか?事実上、透明性が完全に消されました。倫理的な臓器摘出から非倫理的な臓器摘出を区別する術がなくなったのです。
2015年にオーストラリアのニューサウスウェールズ州議会でのイベントでの
シドニー大学のマリア・フィアトローネ=シン教授のスピーチ映像。
(スピーチの該当部分は7:58から9:19)
- COHRC発行メディカル・ジェノサイド更新版 中国での移植濫用―まやかしの改革 p.16より)