中国での臓器移植と日本との関わり
参議院議員会館での報告のための所見(改訂版)
デービッド・マタス
『最新報告書』
デービッド・キルガー氏と私、そして私たちとは別に調査を進めたイーサン・ガットマン氏は、調査の結果、移植患者に臓器を売るために良心の囚人(主に法輪功の煉功をする人々、そしてウイグル人、チベット人、東方閃電家庭教会)が殺害されてきたという結論に達した。これらの調査では、中国が公式に発表した移植件数を額面通りに受け取り、この断言された数値に見合う臓器源を見出すことに焦点を絞った。
しかし、中国政府による臓器移植件数の統計は必ずしも信頼できるとはいえない。中国の移植件数の確定は、これまでなされるべきであったが、今回の調査を通してようやく行われた。
我々三人は、2016年6月、臓器移植件数に焦点をあてて、中国での移植手術の濫用に関するこれまでの調査を更新した。この『最新報告書』は我々の共同ホームページ endorganpillaging.org から発表されている。報告書は680ページ、脚注は2400にのぼる。移植手術が行われている個々の病院のデータに病院ごとにあたっていき、累積し、独自の結論を出したため、これほどの量となった。
中国共産党にとって、統計とは政略の一手段である。政治的目的に見合う統計値は正確なものとなる。
臓器移植の統計値には、共産党制度にとって相容れぬ2つの政治的要素が絡む。1つは、移植技術がどれだけ進んでいるかを示すために、数字を拡張させるという発想だ。もう1つは、臓器源に対する疑惑を起こさせないように数字を抑えようとするものである。
当初は1つ目の発想が優勢で、説明のつかない大量の移植件数が生み出された。その後、このように自慢することは政治的な問題を引き起こすことに中国共産党政権は気がついた。臓器源に対する疑惑が浮上するからだ。当時はドナー制度も国内での臓器分配制度もなく、自分たちの生み出した数字に対する言い訳が存在しなかった。数字が問題であることに気づいた時点で、移植件数は年間1万件という数値から横ばいとなる。
個々の病院では、少なくとも今日まで、国際的に正確な臓器件数が注視されなかったため、臓器源の説明にはあまり気を遣っていない。個々の病院の移植件数を総計したところ、国家制度の発表した数字を大幅に上回る結果が出た。
しかし、この地域レベルの数字は、国家レベルの政治的配慮とは異なる理由で、客引きのためにごまかした数字かもしれない。この可能性に対処するために、一つひとつの病院をあたり、病院が主張する移植件数以外の広域にわたる様々な要素を検討した。
病床数、職員数、利用率にも目を向けた。助成金と賞与金にもあたった。賞与金に関する引用や賞与金の受入れの際に数値が言及される場合がある。助成金では事業計画の数値に言及されることがある。刊行物、ニュースレターや研究書にも目を向けた。抗拒絶反応剤の使用量もチェックした。患者になる可能性がある人々、移植件数の成長率、技術開発、メディア報道も見ていった。
各病院の移植件数を割り出す上で一つの証拠に頼ることはなかった。過去の調査同様、すべてのデータを検討するまではどのような結論も控えた。すべての要素を合わせて検討することで、これらのデータは一様に、中国での臓器移植件数は公式の国家発表の数字より遥かに多いということを示した。
加算・乗算して合計を算出した。肝移植、腎移植を公的に認められた病院という小グループに焦点を絞った。
2006年 6月27日、中国衛生部は「肝臓、腎臓、心臓、肺移植の許容量に関する管理と規則に関する通知」を発行し、臓器移植を行う医療機関に下記の条件を課した。
・肝臓 移植専用:15病床 ICU用:10病床以上 合計:25病床
・腎臓 移植専用:20病床 ICU用:10病床以上 合計:30病床
・肝臓と腎臓 移植専用:35病床 ICU用:20病床以上 合計:55病床
21の肝移植病院、65の腎移植病院、60の肝腎移植を併合する病院があり、合計146の病院が移植手術を認可されている。これらの病院の調査を通して、利用率100%を越え、移植手術のウェイティング・リストがかなり長い病院など、設備不足が蔓延していることが判明した。中国政府による169から300への認定病院数の拡張計画から、現在の制度の許容量は需要に追いついていないことを示している。
146の病院の移植件数を一軒一軒加算していった。移植病院と認定されるための最低の病床数と職員数を乗算したものと照合し、各病院の移植件数の確認をとった。利用率は100%とし、平均入院期間も仮定した。
このように算出することで、中国政府が公式に発表する年間移植件数1万件は否定された。中国での移植件数は年間6万件から10万件と推定し、高い数値の方を強調したい。
年間の移植件数が1万件であっても、臓器のほとんどは良心の囚人(主に法輪功学習者)から来るものだと思われる。年間1万件の数値に対して、中国政府はすべての臓器は自主的な提供であるとしているが、実証可能な数値の裏付けはなく、受け入れがたい主張である。
中国での実際の年間移植件数6万件から10万件は、良心の囚人が臓器源であることを語っている。中国政府でさえも、他の説明を提供していない。
我々の『最新報告書』にある2400の脚注のうち2200は公式な中国の情報源に拠るものだ。中国政府は我々の算出を否定しているが、我々の数値を否定することは自己の数値を否定することでもある。
中国の病院が大量の臓器移植を行っているという我々の調査結果が受け入れられなくても構わない。しかし我々の数値は、世界保健機関(WHO)が義務付ける透明性、精査への開放性、説明の義務が緊急に求められていることを浮き彫りにするものだ。
日本との深い関わり
『最新報告書』では、中国での移植濫用とそのグローバルなつながりを焦点とした。特に日本に的を絞ったわけではない。しかし、病院の詳細を調査していく過程で日本に関する情報は常に現れてきた。
『最新報告書』では中国の移植業界と日本との深いつながりが示されている。日本人向け移植ツーリズムの需要に応えた大規模な移植病院が中国にはいくつか存在する。中国の移植センターは日本の機関と共同している。日本で移植技術を学んだ中国の移植外科医は数多い。中国は日本から移植関連の薬剤を輸入してきた。日本政府が一部資金提供している中国の移植病院も一軒ある。
1. 患者
中山大学附属第一医院
『最新報告書』からの引用:
中山大学附属第一医院(正式名:孫逸仙大学)は殆どの種類の移植手術を行い、手術件数では第二位を誇る。…中国からの患者に加え、…日本…を含む10以上の国や地域からの患者に腎移植を提供している。
東方臓器移植センター
『最新報告書』からの引用:
2006年発行の『鳳凰週刊』第5版によると、…(天津市第一中心医院の)東方臓器移植センターは、世界最大の移植センターである。…同文書によると患者の85%以上が…日本…を含む20以上の国や地域から来ている。
中国医科大学付属第一病院(中国国際移植ネットワーク支援センター)
『最新報告書』からの引用:
中国医科大学付属第一病院は、遼寧省瀋陽市にある。中国北東部で最大の臓器移植センターであり…2003年、同病院内に、中国国際移植ネットワーク支援センター(CITNAC)が設立された。国外の患者を対象とした移植機関で、顧客は主に日本、韓国、その他の国から来ている。日本では広告キャンペーンが展開され、特定の業務活動を促進。ウェブ上には次のような説明が記載されていた。「私どもの臓器移植センターは、日本で学業を修め、日本文化に通じている数名の医師と看護師長を備えるだけでなく、日本からの患者の方々の便宜をはかり、ほとんどの看護師が日本語を話します。全ての患者の方は、手術後、幹部用の病棟で特別の手当てを受けます」。…アーカイブに保存されている2004年9月のウェブサイトでは、同センターは下記のように強調していた。「中国では生体ドナーによる腎移植を行います。日本の病院や透析センターで耳にする死体ドナーからの腎移植とは全く異なります…日本での死体腎移植に比べ、私どもの移植ははるかに安全で確実です」
『最新報告書』はさらに加える:
中国国際移植ネットワーク支援センター(CITNAC)のウェブサイトは、2006年に生体臓器狩りの事実が公表されたあとに閉鎖された。 http://zoukiishoku.com は、日本語、ロシア語、英語、中国語のページがあった。
常州市第一人民病院(蘇州大学医学院附属三院)
『最新報告書』からの引用:
同病院の泌尿器外科のウェブサイトには、1980年代に腎移植を始めており、腎移植が長年の強みであると記述されている。累積した移植件数は全国でトップに近い。患者の半分以上は香港、マカオ、台湾、日本、その他のアジア太平洋地域から来ている。
浙江省人民医院
『最新報告書』からの引用:
2006年6月3日、移植手術を受けた韓国人の患者が、世界中からの患者が治療を受けていたと語った。彼は…日本人などを見た。軍服を着た医者が牢獄から入手した臓器が使われていた。
『アジア・タイムズ』
『最新報告書』からの引用:
2006年4月4日、『アジア・タイムズ』紙に記載された「臓器移植のために群れをなして中国に行く日本人」(Japanese flock to China for organ transplants)という題名のレポートによると、日本移植者協議会の鈴木正矩会長は、中国のある主要都市の一つの病院で、昨年(2005年)だけで2000件の移植手術が行われていることを発見した。そのうち日本人は30人から40人で、200人は韓国人だった。
外村ケンイチロウ
『最新報告書』からの引用:
腎不全に陥った日本人の外村ケンイチロウ氏は、4年間、移植手術の機会を待っていたが、臓器販売の噂を確認しようとインターネットで検索してみた。
まず、その簡易さに目を見張った。2月に中国在住の日本人ブローカーに連絡を入れてからわずか10日後、上海の病院で新しい腎臓を移植されるために手術台に横たわっていたのだ。医師はその日に診察しただけ。「あまりにも迅速で恐怖を感じました」と語る。
価格は680万円。「安かった」と外村氏は語る。外村氏は、安価で健康な臓器と中国大陸の沿海部の医療設備の急な向上に惹きつけられ、中国に腎臓、肝臓、心臓の移植のため最近渡航した富裕な数百名の日本人の1人だ。いわゆる「移植ツーリズム」業界は、日増しに韓国、アメリカ、その他の国の人々を多く惹きつけている。
彼のブローカーは2004年以来、100名以上の日本人のために中国での移植手術の斡旋をしてきた。成長産業である。
外村氏は「中国国際臓器移植センター」の名で操業する瀋陽市に住む日本人ブローカーを通して取引交渉した。同センターの専門的なウェブサイトには、ドナーへの業務について細かい情報が英語、日本語、韓国語、ロシア語で掲載されている。
日本人女性
『最新報告書』からの引用:
臓器移植の料金は固定していない。…一人の日本人女性は、シリアルナンバー020014と付けられた若い女性の肝臓を500万ドルで移植されている。
復旦大学附属中山医院
『最新報告書』からの引用:
復旦大学附属中山医院は、最初の肝移植を1978年に行った。2001年以来、様々な手術が行えるようになり、より多くの技術革新、より短い手術時間(平均4~6時間)、出血の低下、合併症の低下など、同病院での肝移植は急に発展した。…日本…を含む10以上の国や地域からの患者を引きつけている。
2. 移植外科医の養成
沈中陽
『最新報告書』からの引用:
沈中陽医師は中国の肝移植分野を築いたことで知られる。中国医科大学を1984年に卒業して以來、1998年にかけて沈医師は日本に2度留学している。
劉乃波
『最新報告書』からの引用:
(中日友好医院の)泌尿器外科の劉乃波・主任医師は腎移植および術後の合併症の経験が豊かである。腹腔鏡下ドナー腎採取に、中国で最初に取り組んだ医師の一人。全国的および病院内での研究プログラムを数多く主導。1989年、日本の九州大学で学んでいる。
趙建勲
『最新報告書』からの引用:
(北京大学第一医院の)移植センター副主任・趙建勲教授は、日本で肝胆外科技術を学び北京大学初の肝移植に参加している。
瑞金医院
『最新報告書』からの引用:
上海交通大学医学院附属瑞金医院臓器移植センターは、22名の外科医を備える。そのうち、主任外科医と副主任外科医は16名、博士課程顧問4名、修士課程顧問5名である。毎年、この部署の人材を…日本…に留学させ、最新の知識と技術を中国にもたらしている。
魏立
『最新報告書』からの引用:
(河南省人民医院、胸部ガン診断・治療センターの)魏立副主任医師は、2006年から2008年にかけて京都大学で肺移植技術を学ぶ。
王毅
『最新報告書』の引用:
(南華大学付属第二病院の)主任医師、教授、修士課程顧問、湖南省臓器移植専門委員会の委員を務める。北海道大学…で泌尿器科学を学ぶ。
深圳市孫逸仙心血管医院
『最新報告書』の引用:
中国南部唯一の心血管疾患の専門病院で、心臓移植の認定をうけている。中核となる外科医は、中国医学科学院阜外医院と解放軍第301医院の人材と、海外…日本で養成を受けた心血管疾患の専門家から構成されている。
陳鉄男
『最新報告書』からの引用:
陳鉄男医師は、2003年に泰達国際心血管病医院(日本語名:天津泰達国際循環器病センター)に赴任。心臓外科部門の主任医師を務める。2005年以來、心移植および心腎移植、周術期管理にも全面的に参与する。…2014年に日本に留学している。
孟興凱
『最新報告書』からの引用:
(山西医科大学第一医院の)孟興凱医院長は、肝胆外科手術の専門家として知られる。1997年から2006年にかけて、…で腹部外科、富山医科薬科大学(現在は富山大学)で消化器外科、…を学ぶ。
鄢業鴻
『最新報告書』からの引用:
(南昌大学第一付属医院の)鄢業鴻教授は、臓器移植部門の部長であり、京都大学で生体からの肝移植手術の養成を受けている。
杜成友
『最新報告書』からの引用:
(重慶医科大学第一付属医院の)移植部門主任・杜成友医師は、肝移植その他の分野の知識が豊富で、優れた外科技術を備える。…京都大学付属病院で肝移植技術を学んでいる。
3. 共同研究
西京医院臓器移植センター
『最新報告書』からの引用:
2000年に創設された西京医院臓器移植センターは、中国の北西部では最大の臓器移植センター。…2005年、中国人民解放軍総後勤部の承認を受けて、軍臓器移植センターとなり、2012年に軍臓器移植研究所となる。肝臓、腎臓、心臓の移植で中国をリードすると謳っている。
同研究所は、…京都大学医学部附属病院臓器移植医療部を含む…国際的に認められる臓器移植センターと長期的な提携を結び、定期的に共同研究をしている。
中日友好医院
『最新報告書』からの引用:
同病院の胸部外科部門は全国的にも上位にランク付けされている。…すべての医師は国外で研究もしくは修学した経験を持つ。教授の中には国外機関で客員教授である者もおり、長期にわたって学術交流を行ってきている。同部門は、…日本、その他の国の教授に名誉教授の肩書きを授けている。
蘇州大学附属第一医院
『最新報告書』からの引用:
泌尿器外科は病床55、毎月の入退院患者130名、稼働率101%の腎移植センターを備える。…蘇州市と江蘇省での主要な臨床専門センターであり、修士課程と博士課程も提供している。…学術交流と共同研究の関係を…日本…と築いている。
陳雨信
『最新報告書』の引用:
(山東大学斉魯医院の)陳雨信教授は博士課程の顧問で肝移植の専門家。日本、シンガポール、フィリピン、韓国で学術研究と学術交流に携わる。
陳国勇
『最新報告書』の引用:
同病院(河南省の鄭州人民医院)も肝移植および多臓器移植を行う。現在の同病院のウェブサイトによると、副医院長であり肝移植外科の科長である陳国勇医師は500件以上の多臓器の調達を併合した手術、500件以上の腎移植、300件以上の肝移植、肝臓・腎臓の併合移植、膵臓・腎臓の併合移植を数十件行っている。過去に日本と韓国で客員教授。
山西医科大学第一医院
『最新報告書』の引用:
同病院の48病床を備える肝胆外科は移植外科に属し、主任医師7名、准主任医師3名、博士課程顧問1名、修士課程顧問3名、博士号取得者9名、修士号取得者2名、日本の客員研究者3名を備える。
錦州
『最新報告書』の引用:
中国商務部のウェブサイトによると錦州市公安局オンサイト(現場)心理研究センター(王立軍の移植研究・実験センター)…は共同研究と学術交流において…日本…を含む10カ国以上の大学と協力していた。
4. 融資
『最新報告書』の引用:
同病院(中日友好医院)は中国と日本の政府の協力で設立され、日本政府より助成金を受けている。…同病院の泌尿器外科部門が腎移植センターを運営する。
ウェブサイトに下記のように記述されている:
「1986年に腎移植を始めて以来、臨床での実績を積み重ねる。術後管理の手順を規準化し、移植後の長期的な生存率を高め、医療費を抑えている。中国国内で主導的な立場にあり、国内および国際的な患者から評価されている」
5. 薬剤の輸出
『最新報告書』の引用:
2004年9月、『三聯生活周刊』は「天津での調査:臓器移植でアジアのナンバーワン」と題する記事のなかで、天津東方臓器移植センターの研修医長・張雅敏が臓器調達にコストがかかることを述べている。臓器灌流保存溶液だけでも安くなく、一つの主要臓器に対して4袋の保存溶液が必要で、1袋5000元かかる。初期の頃は国内での保存溶液製者もなく、沈中陽(医師)が一袋一袋日本から持ち帰っていた。
疑問点
中国に何人の日本人の患者が臓器移植を受けに行くのだろうか。日本の長尾敬議員が厚生労働省に質問したところ、回答は「分からない」であった。
中国への移植ツーリズムをやめさせるか、行かないようにするために、日本は何をしているのだろうか? 私の知る限りでは、日本は何もしていない。
移植外科技術において、日本で何人の中国の医療専門家がこれまで養成され、今も養成されているのだろうか? 学んだ技術を臓器移植の濫用に利用することを防ぐために、これらの専門医を養成する前に条件を出しているのだろうか? 私の認識するところでは、何もない。
日本政府が中日友好医院に融資する際に、臓器移植の濫用を支援することに資金が用いられないように、どのような制限を設けているのだろうか?
不適切な臓器源に依存する移植や移植研究に関して、日本が中国と共同研究をすることを防止するために、どのような規制が設けられているのだろうか。
中国の移植専門医が客員研究者として日本に滞在する際、不適切な臓器源を利用しての移植にこの研究者が従事していたか否かを判断する努力は払われたのだろうか? 私の知る限りでは、そのような努力は払われていない。
日本の移植専門医、学者、研究者が中国の医療機関で名誉職を与えられた場合、名誉職を受ける前に、その医療機関が臓器移植の濫用に従事していないかをチェックする努力は払われたのだろうか。この面でも、私の知る限り、そのような努力は払われていない。
移植のための薬剤は、日本から中国にどれくらいの量と価額が輸出されているのだろうか? 臓器移植の濫用にこれらの薬剤が使われないようにするための予防措置はとられたのだろうか。私の知る限り、存在しない。
結論
デービッド・キルガー氏と私の共著による報告書は2006年7月に発表された。報告書から10年以上経過したが、日本では、一見した限りでは、中国での移植濫用に共犯することを避けるための措置はとられていない。
日本は技術上、世界をリードする国家である。日本にとって上記の質問への答えを探すことは決して難しくないはずだ。中国での臓器移植濫用に日本が協力することに対して行動することも、容易いはずだ。
日本の高官も医療界も何も知らず、何もしないようである。日本が何も言わず、何もせず、何も知らないと主張する理由は、能力が不足しているからではない。日本は、能力がないので行動を起こさないということが正当化される国ではない。
中国での移植濫用について知り、日本の協力を撲滅するための行動が起きない理由として、沈黙という共謀、つまり「見て見ぬふり」を示唆したい。見ようとしない者ほど盲目な者はいない。日本は中国での臓器移植の濫用に見て見ぬふりをしているため、自らが共犯している事実に対して盲目となっている。
外部者が中国共産党に影響を与えることは難しい。中国での移植ビジネスは数十億ドルの産業だ。臓器のための良心の囚人の殺害を停止すれば、中国の医療部門は金銭的に破綻するだろう。
外部者は少なくとも、中国で起こっていることの共犯にならないようにすることができる。共犯となることを避けるための行動は、己の手にかかっている。
日本は遺憾なことにこの点で遅れをとっており、追いつくための努力も明確には見られない。ただ追いつくだけでは不十分だ。日本は世界に情報を伝え、中国での臓器移植濫用の共犯となることを避けるように、世界をリードする能力を備えた国である。
(2016年12月14日版 日本語訳)
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デービッド・マタスは国際的な人権擁護弁護士。カナダ、マニトバ州ウィニペグを拠点とする。
英語原文:
http://endorganpillaging.org/japan-and-transplant-abuse-in-china/