日本のためのアクション・プラン

日本のためのアクション・プラン   デービッド・マタス   (2019年3月23日 東京での勉強会で発表した内容を拡張)   国境を超えた移植濫用を撲滅するため、日本にはアクション・プランが必要である。下記の12点を含む基本方針を提案したい。   1) 域外立法   1997年に施行され、2009年に改訂された日本の臓器移植法は、臓器売買および臓器売買の斡旋や仲介を罰するものだが、同法の及ぶ範囲には限界がある。   日本は刑法の属地主義(国家の立法は領土内のみで効力を有する)を基本的に適用している。日本国内で禁ずる行為を犯す者は、国民、永住者、一時的な訪問者に係わらず、日本の法律により罰せられる。しかし、日本国外で犯した行為は、法規が罰を明示しない限り、罰せられることはない。   日本の臓器移植法は臓器売買に関しては治外法権の効力を明示しているが、斡旋・仲介は明示していない。この治外法権法は、日本国民のみに適用し、永住者や訪問者には適用しない。   訪問者もしくは永住者が、日本の臓器移植法で禁じられている行為を日本の国外で犯した場合、その行為のために日本国内で罰せられることはない。国外での移植を促進する斡旋業者は、事実上、日本国内では免責となる。   この状況を変える必要がある。日本国民、永住者、日本に来ることになった訪問者に係わらず、日本国外で日本の法的基準に違反する者に適用するよう、現行法を修正する必要がある。また国境間の斡旋もしくは仲介にも適用するような修正が必要である。   2) 報告義務   日本には医療専門家による移植ツーリズム管理者への報告義務制度が必要である。現状では、移植ツーリズムに関して自主的報告さえも存在しない。   滞日中、日本や他国から中国への移植ツーリズムに関してよく尋ねられた。ある程度の情報はあるがほとんどは個人的なものである。私の知る限り、日本に限らずどこの国でも、この(移植ツーリズムの)現象に関して、一般に入手できる統計情報は収集されていない。   原理的に情報収集は難しいことではない。国外で移植を受けた者は術後のケアを必要とする。医療専門家は移植ツーリズムについて知っている。移植ツーリストが自分の患者であるからだ。他人に伝えないだけである。   医師には患者情報の守秘義務があるため、医師が自分の患者の話を語ることは理に適わない。このため報告義務が必須となる。   移植患者は術後のケアを受けないわけにはいかない。移植後は生涯、免疫処方剤を服用する。報告義務により患者が術後のケアを求めなくなるという可能性はほとんど皆無であろう。   日本は、指定の国立機関に対する報告義務を定める法律を導入すべきである。指定機関が同法のもとで認定された個人を告発することはない。移植ツーリズムの全般的な統計数を把握するだけでも、現状の改善である。   患者は起訴されるべきかという議論がある。患者を起訴すべきかどうかは別として、移植濫用行為に対して助長・参与する者は断じて起訴されるべきである。患者は言い逃れや作り話を聞かされ、それに関して多く質問することはない。「見て見ぬふりをする」罪があるという議論の余地はあるが、患者は自己判断が鈍る状況で生存している。   イスラエルの法律では、臓器移植濫用に患者が参加しない法的義務を課しているが、同時にこの法規に違反しても患者を罰することはないという項目が設けられている。イスラエルの法規をそのまま用いる必要はない。患者の免責を法規する必要はない。検察官の自由裁量として扱うことも可能である。   銃創、児童虐待など、報告義務はすでに存在する。カナダのオンタリオ州では、銃創の報告義務は法律化されている。カナダのマニトバ州では銃創と刺創の報告義務が法律化されている。   カナダのオンタリオ州、ブリティッシュ・コロンビア州では、児童虐待もしくは育児怠慢の疑いのある事例を報告する義務が課せられている。マニトバ州では保護を要する子供を報告する義務が課せられている。   上記の例では、銃や刃物による暴行を防止するという価値観、児童を虐待や育児怠慢から守るという価値観が、医療専門家による患者の守秘義務という価値観より優位にある。臓器移植濫用に関しても同様であるべきだ。   この分野での報告義務は、診療を必要とする者が、通報されるのではないかという恐れから医師に連絡をとらず、患者に悪影響を与えるのではないかという懸念もある。しかし、全てを考慮し、報告義務はあった方がないよりも良い、という判断が下されてきた。社会全般にとって良いことは、銃戦や児童虐待を防止することである。臓器移植濫用にも同じことが言える。   異なる意見もあるが、少なくとも、移植ツーリズムの総件数に関するデータ収集を可能にすべきである。集計データなしでは、直面している事態の規模さえ分からない。   移植濫用は闇で行われている。加害者はできる限り情報を外に出さない。濫用の参加者は見てみぬふりをする。濫用に光を当てることが、停止への重要な助けである。   報告義務なしでは、悪循環に陥る。規模を把握していないため、問題にほとんど取り組まない。問題にほとんど取り組まないため、規模が把握されない。   効果ある自主的報告制度があれば、報告義務は不要とも言える。しかし、自主的報告制度すら存在しない事実が、報告義務制度の必要性を示している。報告義務なしでは、臓器の闇市場が闇から出ることはない。…