生体臓器収奪とは?
ドイツ、マインツ大学医療センター 薬理学教授
李 会革(フイグ・リ)博士/医師
2018年10月18日、第3回 RoundTable(英国議会内)での
発表のパワーポイントの邦訳
ーーーSection 1ーーー
生体臓器提供 ≠ 生存中の身体からの強制臓器収奪
生体臓器提供 | 生存中の身体からの強制臓器収奪 | |
摘出される臓器 | 肝臓の片方や肝臓の一部 | 生存維持に欠かせない臓器 |
摘出後のドナーの状態 | 生存 | 殺害 |
麻酔の有無 | 有 | 有/無 |
中国で認識されている生存中の身体からの強制臓器摘出
(4つの方法と事例)
1. 射撃による処刑が未遂状態の囚人からの臓器摘出(1)
2. 薬物注射された囚人からの臓器摘出(2)
3. 手術室での臓器摘出による殺害(1)
4. 脳死を口実にした臓器摘出
脚注(この種の臓器収奪に関する論文)
(1) Paul NW, Caplan A, Shapiro ME, Els C, Allison KC, Li H. Human rights violations in organ procurement practice in China. BMC Med Ethics. 2017; 18: 11 [http://rdcu.be/o617]. https://doi.org/10.1186/s12910-017-0169-x.
(2) Paul NW, Caplan A, Shapiro ME, Els C, Allison KC, Li H. Determination of Death in Execution by Lethal Injection in China. Camb Q Healthc Ethics. 2018; 27: 459-66 [https://doi.org/10.1017/S0963180117000846].
ーーーSection 2ーーー
1. 射撃による処刑が未遂状態の囚人からの臓器摘出(1)
• 意図的に右胸を射撃する
• 犠牲者がまだ生存中に臓器を摘出
• 頻度は不明
記録されている事例: Zhong Haiyuan (1978); Enver Tohti (1995); Wang Guoqi (2001)
2. 薬物注射された囚人から臓器摘出(2)
• 1997年以降
• 薬物注射後、数十秒後に臓器を摘出する
(米国の臓器摘出は14〜18分後)
• この段階では心停止・脳死のいずれの基準にも見合わない
• このような囚人の〜100%は、生存中に臓器を摘出されている
ーーーSection 3ーーー
3. 手術質での臓器摘出による殺害(1)
(中国で脳死の決定方法が最初に文書化される2年前の実験)
河南医学研究 臨床研究の論文:同種正所性 心臓移植の実験
「2.1 ドナーの心臓:
全身ヘパリン(抗凝固薬)投与(2mg/kg)。冷却心筋保護液を大動脈基部から心臓の拍動が停止するまで灌流 …心臓を速やかに手術室に運ぶ」
ここから読み取れること:
ードナーは脳死ではない(2001年10月19日の実験)
ー心拍停止は医師により誘発
ー心臓摘出によりドナーは死亡
出典:郭好学, 刘书勇, 姜如同, 王彦威, 百宏灿, 张燕齐, 杨巧枝. 同种异体原位心脏移植的体会. 河南医学研究. 2003: 131-3
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下記のセクションで報告
中国臓器収奪リサーチセンター 2018年 報告書 (英語原文へのリンク)
p.122 事例研究:「脳死ドナー」からの心肺同時摘出の手順
ーーーーーーSection 4ーーーーー
4 脳死を口実にした生体臓器摘出
臓器収奪を隠すための脳死濫用
• 2008年5月26日 心肺同時移植の例
ドナー:男性 脳死患者
摘出方法:
まず、気道内の分泌物を除去。人工呼吸のために気管内挿管、末梢静脈からメチルプレドニゾロン500mgと ヘパリン2.5mg/kgを投与した。皮膚消毒後に胸部正中央切開し…
数回の心拍により心臓内の血液を空にした。上行大動脈をクランプし、冷却心筋保護液1500mlが75mmHgで灌流された…
出典:陈涛, 毕生辉, 程亮, 王红兵, 俞世强, 刘金成, 金振晓. 心肺移植供体心肺保护1例. 心脏杂志. 2011; 23: 699-700
中国での脳死決定基準
I. 決定の条件
• 昏睡状態の原因不明
• 可逆昏睡の可能性がない
II. 臨床診断
脳死の臨床診断は下記の3つの条件を満たすものとする
• 深昏睡
• 脳幹反射の消失
• 自発呼吸の消失(呼吸を維持するために人工呼吸器に100%依存。無呼吸テストで自発呼吸がないことを確認)
III. 確認検査
IV. 決定の時間 (12時間後に繰り返す)
無呼吸
無呼吸および呼吸維持のため人工呼吸器に100%依存していることが、脳死決定に欠かせない。
無呼吸テストの手順
• 人工呼吸器を8〜10分取り外す。
• 竜骨の高さに酸素チューブを設置し、人工気道から100%のO2を6L/minの割合で注入
• 胸部もしくは腹部の呼吸の動きを観察
• 動脈血液ガスを採取し、PaCO2を8〜10分測定する。その後、人工呼吸器を取り付ける。
(出典:脳死判定基準規範(成人)(BQCC版)中華医学雑誌 発表)
Chinese Medical Journal. 2013;126:4786-4790
ーーーSection 5ーーー
生存中の人間からの心臓摘出
2003-2013年
7名のドナーは全て男性で脳死症例。22〜45歳。生前に献体に同意。
ドナーの脳死後、人工呼吸のために気管内挿管された。同時に速やかに開胸を実施。ヘパリン3mg/kgを大動脈基部ちる投与し、上行大動脈をクランプした。 心停止を誘発するため、St. Thomas溶液500〜1000ml 4℃を大動脈基部より潅流した。
ここから読み取れること:
• 脳死決定の診断は行われていない
• 心臓は機能しており、心拍停止を医師が誘発。
出典:王芳, 王钊, 李梅, 王翔, 夏阳, 蒋立虹. 原位心脏移植手术的体外循环管理. 昆明医科大学学报. 2013; 34: 89-92
詳しくは、中国臓器収奪センター(COHRC)2018年報告書へ
中国臓器収奪リサーチセンター 2018年 報告書 (英語原文へのリンク)
同報告書の要約・概説の日本語版はこちらへ
https://www.chinaorganharvest.org/ja/資料のダウンロード/
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李 会革(フイグ・リ)博士/医師:
ニューヨークの中国臓器収奪リサーチセンター発行の2018年報告書の共著者。『ランセット』『英国医学学会誌』『BMC 医療倫理』な ど、医療関連の機関誌に中国での臓器濫用についての記事を発表してきた。この問題に関して欧州議会や欧州の各国政府で講演。中国で医学を学び、1997 年、ヨハネス・グーテンベルク大学マインツで博士号を取得。 2011 年、マインツ大学医療センターで薬理学の教授に就任。100 件以上の論文を発表。言及された数は 6000 回を超え、h-指数(論文の被引用数に基づいて算出される、研究者の評価指標の一つ)は 42 に及ぶ。 中国臓器収奪リサーチセンター役員。