広島『知られざる事実』上映会 エンヴァー・トフティ氏 ウイグルの現状を語る

広島『知られざる事実』上映会
 エンヴァー・トフティ氏 ウイグルの現状を語る
 

10月14日、広島市アステールプラザにて「メディカル・ジェノサイドを考える広島市民の会」(石橋林太郎県議会議員代表)と「移植ツーリズムを考える会」の主催で、ゲストにエンヴァー・トフティ氏を招いてのドキュメンタリー『知られざる事実』の上映会が開催されました。

中国新疆ウイグル自治区出身の元外科医であるトフティ氏は、自己の倫理的な行動のために国を追われる身となり、現在英国に在住。

上映会の後の質疑応答の内容をご紹介します。

 

石橋議員:なぜイギリスに住むことになったのですか?

トフティ:英国のドキュメンタリー「死のシルクロード」の制作協力に携わったためです。中国政府は1964年10月16日から1996年7月26日にかけて46回の核実験をウイグルのロプノール地区で行いました。私は病院の外科医として被爆によるガン患者の数がこの地区で多いというデータを構築し、初めてこの核実験を数値で実証しました。

 

石橋:映画でも証言されていたのですが、イギリスに移られてから罪の意識にさいなまれるようになった過程を教えていただけませんか?

トフティ:中国では毛沢東政権のもとで洗脳されて育ちました。共産党を好まないものは「国家の敵」とされていたので、臓器を一度だけ摘出させられた当時、罪の意識はありませんでした。そしてイギリスに来てから「人権」という概念を知り、すべての人間に生きる権利があり、人が人を殺すことは許されないことであるという意識が高まりました。今、こうして話をさせていただくことで、自分の罪が少しでも軽くなればと願っています。

 

石橋:現在のウイグル(東トルキスタン)での臓器収奪の状況を教えていただけませんか?

トフティ:この写真をごらんください。

ごく最近の写真です。文字から新疆自治区のどこかであることが分かります。臓器を運ぶための優先通路が空港に設けられるということは、それだけの数の運輸が行われているということです。

学術論文に発表されていた内容ですが、武漢の病院で「ドナーが運び込まれ、麻酔がかけられ、気管挿管が入れられ、心臓と肺臓を摘出した」という描写がありました。ドナーは生きていたのです。あまりにも通常の手順のため、医師が事実を隠すことさえ忘れているのです。

レシピエントと組織適合するドナーを確保するには、かなりの人体の備蓄が必要です。

ウイグルでは身体検査プロジェクトと称して、2016年9月から2017年3月にかけて、地域の98%が強制的に身体検査を受けました。心臓、血液、DNA、尿、血糖値などが取られたそうです(詳細はラジオ・フリー・アジアで報道されています)。検査結果が個人に通達されることはなく、ウイグル人のデータベースが作られていると私たちは考えています。

 

石橋:ここで1999年の迫害以降、臓器収奪のターゲットとなってきた法輪功の学習者の方に一言、お願いできますか。

清光(移植ツーリズムを考える会):法輪功は、真善忍の理念が古代の思想であったため、中国では一億人が法輪功をするほどまで広がりました。中国共産党の一党支配とは相入れない理念でした。そのため「肉体を消滅させ、名誉を毀損し、経済を断ち切る」という命令のもとで迫害が始まりました。中国政府はプロパガンダを流布して法輪功を非人間化していきました。法輪功学習者による焼身自殺のニュースは世界中に流布されましたが、この自殺が信ぴょう性にかける点が多々あります。まず法輪功は自分を含めて殺生をしないし、健康になるので自殺する必要もありません。また、自殺を図った人の座禅ができていない、髪の毛が焼けていない、警備の者が消火をしているが天安門広場の厳重警備を考えたらそれ以前に止められたはず、などです。

先ほどのトフティ先生がおっしゃったように、中国が一番であり、反対する者は「国家の敵」ととられるのです。また映像にも、政府が望まないものを抱く者が囚人ともありました。全く無実な法輪功がここにはまり、臓器収奪のターゲットになったと思います。

 

一般の質疑応答で「何ができるのか」という質問には、「中国を変えることができなくても、日本人が中国への渡航移植を防げるように法律を変えていくことはできる」という解説がありました。周りの人に伝えていき、渡航移植を考えている人に事実を知ってもらうことも大切です。

一人の方からの「国民に選ばれた政府ではないので、政府を国民が止めることはできない。非常に大きな問題で、質問になりません」というコメントに対して、トフティ氏が深々と頭を下げて、問題の複雑さ、大きさへの理解に感謝されていました。

2017年度フリーダム・ハウスによる報告書が強制臓器収奪に言及

2017年度フリーダム・ハウスによる報告書『中国の精神性のための戦い』
強制臓器収奪に言及
 

2017年1月に発表されたフリーダム・ハウスによる報告書『中国の精神性のための戦い』の「金銭の流れ:濫費、搾取、臓器収奪」の章に次のような記述があります。「非人間化のプロパガンダ、拘禁中の苛酷な虐待、究極の経済的搾取の形態が報告されている。つまり、法輪功拘束者を殺害し、臓器を収奪し、数十億ドルの産業の一環として中国人の患者および『移植ツーリズム』で中国に来る国外の患者に高額で売りつけるというものだ。2006年に最初の疑惑が表面化し、国外のジャーナリストや法律専門家による複数の調査で、これらは信頼性のおける情報であるとし、医療界には懸念の声を上げる者もいる。

中国の移植において、臓器の供給源に重大な問題があることに疑う余地はない。これらの臓器源の徹底調査は、同リサーチの範囲外である。フリーダム・ハウスは、他の調査者が収集した(中国人医師への電話を含む)証拠を検討し、拘禁中に行われた血液検査に関して良心の囚人として拘束された経験のある法輪功修煉者(複数名)から詳細に聞き取り調査し、中国への渡航移植者を患者とする台湾の医者(1名)と話し、2011年に拘禁された法輪功からの臓器収奪を直接的に経験した軍病院の職員を友人とする者とも会った。これらの調査から、2000年代初頭から拘束された法輪功は臓器のために大量に殺害されてきたという信頼性ある証拠が確認された。

虐待の継続を示す要因がいくつかある。過去10年間の司法に基づく処刑者数の減少にも拘わらず、中国の臓器移植産業は大規模であり、さらに成長を続けている。処刑者からの臓器摘出の問題を認めた後、中国政府は自主的な臓器提供システムを導入したが、その規模は小さい。さらに、2014年、中国衛生部の幹部の役人が、臓器提供に「自発的」な合意を表明できる立場にない囚人の臓器も、臓器提供システムのデータベースに登録されることを表明している。

中国の医療機関による公表された移植件数のデータを詳細に研究した2016年6月の調査によると、実際の移植の規模は、中国側が引用する年間移植件数1万件の数値を数倍上回ることが判明している。臓器供給数と実際の移植件数の格差は、これまで信じられていた数値より大きいことを示すものであり、法輪功修煉者、その他の良心の囚人、犯罪による拘留者への危険をさらに増加させている」

全レポート(英語)を読む/ダウンロードする – https://freedomhouse.org/report/china-religious-freedom

中国の元外科医、臓器狩りの証拠を提供―アイルランドの外務・通商・防衛共同委員会で

中国の元外科医、臓器狩りの証拠を提供―アイルランドの外務・通商・防衛共同委員会で
 

 
エンヴァー・トフティ・ブグダ氏は、1990年代に処刑された囚人から臓器を摘出した中国の元外科医。2017年7月6日、アイルランド、ダブリンの外務・通商・防衛共同委員会で証拠を提示した。(TheJournal.ieより転載)
(証言のビデオ付き)
 

ご列席の皆さま

 

証言者としてここで発言する機会をくださったことに深く感謝申し上げます。私の名前はエンヴァー・トフティ・ブグダです。処刑された囚人から臓器を摘出した元外科医です。この話をするたびに、告白をさせてもらっています。

 

「社会で最も尊敬される人々がどうして殺人者になりうるのか?」という疑問は最も多く私に投げかけられました。

 

理解するには中国人のように考える必要があります。中国社会で生まれると、最初から洗脳のための洗濯機の中で育ち、社会の一員として完璧にプログラミングされ、疑問を抱かずに職務をこなす準備がなされます。ジョージ・オーウェルの『1984年』で描かれている完全主義国家が現実化されている社会です。

 

臓器が盗み取られているという噂は1990年に遡ることができます。当時私は、若く、エネルギッシュな医師でした。社会で最も輝かしい将来が期待されていた腫瘍外科医でした。ウルムチの中央鉄道病院に勤務していました。外来患者を診ていた時、少なくとも三人の児童の身体に傷がありました。臓器を盗られたことを示すものでした。

 

1995年、私が臓器を盗ることとなりました。ある水曜日、主任外科医に呼ばれました。最大限の外科手術ができるようチームを召集し、翌朝、指示に従うように言われました。翌朝9時半に病院の門に集まり、西山処刑所へ向かいました。銃声が聞こえるまで待つように言われました。銃声が聞こえたので、急いで駆けつけました。武装警官に右端に行くように指示されました。そこには民間の服を着た男が横たわっていました。右胸に一撃を受けていました。

 

主任は肝臓と腎臓2つを摘出するように私に命じ、指導しました。男は生きていました。私のメスを拒みましたが衰弱のため抵抗できませんでした。血が出ました。まだ生きていた証拠です。罪悪感はありませんでした。何も感じませんでした。この仕事をするためにプログラムされたロボットになったかのようでした。「国家の敵」を消すために義務を果たしていると思いました。

 

手術の後、主任は臓器をこれまで見たこともない箱に入れました。そして「チームを病院に連れ戻して良い。何もなかったことにしろ」と言いました。私は指示に従いました。誰も口にしませんでした。

 

「1つ買えばもう1つは無料」という販売促進手法は、臓器移植でするべき行為ではありません。心臓移植を予定することは誰かを死なせるということです。顧客獲得のために臓器を無料で提供するということは、底をつきない臓器の供給があるということです。生体で脈打つ臓器がオンデマンドでの摘出のために確保されていなければ可能ではありません。

 

昨年6月、中共は新疆のウイグル人に無料で身体検査を行うというニュースが発表されました。理由は説明されていません。中共が臓器売買のための国内データベースを構築しているのではないかと疑念を抱いています。中共によるウイグル人のDNA検査は広く報告されています。ウイグル人の生活向上をはかるという名目ですが、虚言であると確信します。

 

倫理基準と中国での臓器移植濫用

    倫理基準と中国での臓器移植濫用 (2016年4月15日、アリゾナ大学医学部 生命倫理・医療人文学科での プレゼンテーションを改訂した所見) デービッド・マタス   中国での臓器移植濫用に該当する証拠をすべて確認し、情報に基づいた結論を導くことは、時間のかかる作業であり、この問題に関心を抱く者全てがこのような作業に携わることを期待することは現実的ではない。しかし、時間もなくこの問題の解決に傾倒しない者は、何もしなくてもよいというわけではない。   良心の囚人、主に法輪功の煉功に基づく精神修養を行う人々が臓器のために殺害されていることを、ここで私が示す義務はない。移植の臓器源を説明する必要はない。中国が法輪功から臓器を収奪している事実は明白だからだ。   臓器のために法輪功が殺害されているという、私や他の調査者が出した結論は、数字だけに基づくものではない。あらゆる証拠をすべて突き合わせ、数多くの追跡された証拠に基づいて導き出された結論である。   この結論が出された基盤の1つとして、法的にも倫理的にも、濫用の予防措置が中国にも国外にも存在しないという事実がある。中国は、臓器の販売、看守による囚人の非人間化が生み出す大量の臓器源から大金を儲けているが、この非倫理的な行動を予防する措置はない。これらの要素の組み合わせが、移植濫用の温床を生み出した。   臓器のために法輪功が殺害されていることを結論づけた2006年のデービッド・キルガーと私の報告書の発表以来、医療界では、国際的にも、また様々な国の中でも、国外で中国の移植濫用の共犯とならないように倫理基準が導入されてきた。これらの基準はアリゾナ州や他の地区でもより包括的に採択されるべきである。   ここでは法規でなく医療倫理基準のみを取り上げる。議会が倫理基準を法規化した国もある。法の制定は必要不可欠であるが、移植濫用の予防措置は立法者のみに任せてはおけない。倫理基準は医師の責務であり、法の有無に関わらず、これらの基準を採用し施行すべきである。   参照すべき国際基準として、下記の医療基準が挙げられる:   ・国際移植学会の使命(Mission Statement) ・国際移植学会倫理委員会方針声明(Policy Statement)―中国臓器移植プログラム(2006年11月付け) ・臓器売買および移植ツーリズムに関するイスタンブール宣言(2008年5月付け) ・世界保健機関(WHO)人の細胞・組織・臓器の移植に関する指針(2008年5月付け) ・世界医師会(WMA)臓器・組織提供に関する声明(2012年10月)   国家レベルで下記の基準が挙げられる: ・香港:香港で登録された医師のための行動規範の指導要綱、香港医務委員会(2000年11月改訂) ・台湾:国外での台湾人のための臓器移植手術の仲買業に関する医師・その他の医療スタッフのための倫理基準(2006年8月) ・オーストラリア:中国人の外科医に対する移植手術技術養成に関する主要移植病院の指針(クイーンズランド2006年12月;ニューサウスウェールズ2013年1月) ・カナダ:臓器売買と移植ツーリズムに関するカナダ移植学会、カナダ腎臓学会の指針声明(2010年10月)[1] ・マレーシア:商業ベースで渡航移植したマレーシア人に対する官営病院からの免疫抑制剤供給に関する方針(2011年10月)   上記より、35の倫理に関する理念を抜き出した。これらの指針は、地区、地域、国家、国際すべての医療機関が採用すべきだ。アリゾナの移植医にはこれらの倫理を採用し、国家レベル、国際レベルでも採用されるようにはたらきかけて欲しい。     政策・指針に関して   1. 国家、地域の医療機関や学会全てが、囚人からの臓器源の点も盛り込んだ、臨床移植手術に関する倫理指針を書面として発展させる必要がある(国際移植学会の指針)。アリゾナの医療局には現在このような指針は存在しないが、設けるべきである。     臓器源に関して   2. 囚人からの臓器または組織の摘出において、そのような摘出、共犯がなされるべきではない。(国際移植学会、世界医師会)     移植ツーリズムに関して   イスタンブール宣言には下記の定義がある:…

中国での臓器移植濫用への認識を日本に広める

中国での臓器移植濫用への認識を日本に広める
(2017年6月14日 逗子文化プラザ市民交流センターでのスピーチ 改訂版)
デービッド・マタス
 

人権運動は、人権侵害があるという知識があって初めて成り立ちます。人権侵害の存在が知られていない場合は、反対しようがありません。

抑圧的な政権による人権侵害を外部に伝えることは容易ではありません。弾圧者は犯罪を否定し隠ぺいします。犠牲者を中傷し、地政学的な権力を用いて相手の口を封じます。

外部者は、自分の周囲のことに目を向け、遠方の出来事にはほとんど注意を払いません。また、注意を払おうと思っても、犯罪実行者による否定、隠ぺい、偽装、威嚇で阻まれてしまいます。

外部者が人権侵害に立ち向かうことは何よりも大切なことです。最も抑圧的な政権下にいる者に、人権侵害への苦闘をリードしてもらうことは現実的ではありません。身の危険を顧みずに戦う者は賞賛に値しますが、誰もがこのようなリスクを負うことを期待すべきではありません。

人権のメッセージを伝えることは、言語、文化、民族、宗教、地理的な分け隔てに橋を渡すことです。特定の人権侵害への反対運動を犠牲者グループのみに限定してしまうと、人権の普遍的なメッセージは失われてしまいます。

外部者が人権侵害を取り上げることは一般に難しく、あらゆる人権侵害にあてはまることでもあります。移植臓器のために無実の囚人(主に精神修養の法輪功学習者、さらにウイグル人、チベット人、一部の家庭教会の信者)が殺害されていることへの認識を日本国内で高めようとする場合、その難しさは倍増します。

日本は中国での臓器移植濫用を停止することはできません。中国人のみができることです。しかし、日本は中国での臓器移植濫用への加担を停止することはできます。現在の日本は、加担を回避するためにできること全てを行っている状況にはありません。

 

報道の欠如

人権侵害に立ち向かうためには、侵害についての認識が欠かせません。日本が中国での臓器移植濫用への加担を回避する行動をとらない理由の1つに、濫用への認識欠如が挙げられます。

日本特有の問題として「日中記者交換協定」が挙げられます。この協定は1964年に締結され1968年に更新されたものです。1968年の合意は会談メモに記載された方針に基づくものでした。会談メモでは政治三原則を確認しています。原則の1つは中国に非友好的な態度を取らないことです。日本のメディアは、この原則に合意しなければ、中国に事務所を設置して記者を送り込むことは許されませんでした。

記者交換協定は日中貿易の取極めを基盤とするもので、1973年に失効しています。日本外務省によると、1974年1月5日、これに代わる記者交換の取極めを締結していますが、この取極めの文書は一般に公開されていません。

1974年の取極めが公表されていないため、中国に対して非友好的な記事を発行してはならない義務が今日まで続いているかは定かではありません。続いているとしたら、記者ではなく発行者に義務付けられていることが考えられます。記者は好きなことを書けますが、発行者はそれを報道する必要はありません。この場合、なぜ記者に記事を報道しないのかを説明する必要もありません。1974年の取極めのために、中国を批判する記事を発行者はボツにしているかもしれません。しかし記者がこの事実を知っているとは限りません。

中国に対して非友好的な報道はしないという1974年以前の義務が、形式上、継続しなかったとしても、その精神は受け継がれました。数少ない例外を除いて、中国共産党が反中と捉える内容の報道は避けるという精神が日本のメディアに浸透しているようです。

中国共産党は自己を中国とみなし、党への批判があれば、はばからずに反中というレッテルを貼ります。臓器移植濫用の調査には、このようなレッテルが貼られてきました。

国家が組織化する中国での移植濫用に関する証拠は、党に悪いイメージを与えます。党にとってこれが一番重要な点です。その結果、日本では中国での臓器移植濫用に関する記事は、ほとんど存在しません。

「日中記者交換協定」の目的は、日中親善にありました。しかし、真の友人とは真実を語る者です。中国での人権侵害を隠ぺいすることは、民主主義国家が行うべきことではありません。このような記者交換協定を締結することなく中国と友好関係にある国は数多くあります。

中国にいる人々を支援する報道、つまり中国にいる無実の人々の殺害停止を助けることは、中国批判ではありません。中国での無実の者の殺害に無関心でいることや、沈黙を守ることこそ、真の中国への敵視につながるのです。

 

倫理指針の見直しの必要性

日本での一般の認識を高める上でのもう一つの障碍として、日本移植学会の倫理指針が打ち出している範囲が狭いことも挙げられます。中国における臓器移植濫用を伝える先として、移植医が考えられます。

警告する日本の医師もいますが、系統的に統合された警告ではありません。

日本移植学会の倫理指針は、臓器の売買、囚人からの臓器の利用は禁じていますが、患者へのカウンセリングや、中国に移植に行ったら無実の者が臓器のために殺害される事実をアドバイスの内容として盛り込んでいません。

中国に渡航する可能性のある移植患者は、まず日本の医師にかかります。中国での移植濫用について、このような患者への警告を義務付ける倫理基準が求められます。

カナダ移植学会およびカナダ腎臓学会の臓器売買および移植ツーリズムに関する指針声明には下記が記載されています。
「医師は患者を擁護する義務がある。医療コミュニティーの一員として、他の個人が傷つくことを防ぐ義務もある。移植ツーリズムは臓器提供者を害し…臓器は強制的に摘出され、個人が臓器のために殺害される可能性を、患者に教えるべきである。」

日本移植学会も同様の方針が必要です。

 

報告の義務付けの欠如

日本での認識を高める上で3つめの障碍が、統計情報の欠如です。日本人の患者が中国に臓器移植に行ったという個々の事例は耳にはしますが、何人が行っているのでしょうか? 日本政府はこの情報を収集していません。医師も収集していません。

悪循環に陥っています。問題の波及範囲に対する一般認識の欠如は、何もしないことにつながり、波及範囲の追求についても何もしなくなっている状況です。

日本の医師による厚生機関への渡航移植に関する報告の義務付けが日本には必要です。自主的な報告制度を提案する者もいますが、効果はあまり見込めません。効果があるのならすでに確立されていることでしょう。患者の個人情報の開示はせずに、中国への移植ツーリズムの総計数だけでも収集されれば有益です。

 

市議会による意見書の動き

中国での臓器移植濫用を人々に伝える形態の1つとして、この濫用に焦点をあてた市議会による意見書があります。中国国外の市議会が中国国内の臓器移植濫用を停止することはできませんが、意見書は中国で問題があるというメッセージを伝える助けになります。日本のメディアによる自主報道規制を迂回する助けにもなります。

2016年6月、鎌倉市議会は中国政府が人権を向上させることを促す意見書を通過させました。人権侵害のリストの中には「国家による法輪功学習者からの強制臓器摘出」が記載されています。

鎌倉市は中国の臓器移植濫用を停止することはできません。しかし一般の認識を高めることはできます。意見書はこの一助になるのです。

意見書が鎌倉市議会から出たことは偶然とは思えません。鎌倉は杉原千畝が最後に居住し、永眠する場所でもあるのです。

杉原千畝は第二次世界大戦中、リトアニアのカウナスで日本総領事を務めていました。ソ連がリトアニアを侵略し、全ての大使館の国外撤去を指示しました。オランダ政府はカウナスのユダヤ人難民に対し、キュラソー島とオランダ領ギアナ(現在のスリナム)への亡命許可を認めていました。そこに向かうにはソ連と日本を通過しなければなりません。ソ連は認めましたが、日本政府は杉原の要請に対して幾度も拒み続けました。

リトアニアから退去するまでに残された数日間、杉原は目覚めている時間全てを日本へのビザの発行に費やしました。その数は数千におよびました。このため、6000人がホロコーストから逃れることができました。しかし、杉原はこの行為のため、戦後、外務省を退官させられ、外交官としての道は閉ざされます。

杉原は最終的に神奈川県の藤沢市に落ち着き、1985年、イスラエルの「ヤド・ヴァシェム賞」を受けました。翌年、鎌倉で永眠しました。

鎌倉には杉原千畝の精神が浸透しているようです。人道の手本、日本の手本です。彼が居住した区域や息をひきとった場所に限られることなく、杉原千畝および鎌倉の手本が日本国全体に広がることを願います。

中国の移植医と保健担当官の招聘・訪問についての所見

日本向けに特別に書き直された原稿です。   中国の移植医と保健担当官の 招聘・訪問についての所見 デービッド・マタス   中国の移植医や保健担当官は、国際的なつながりや協力体制を確立し維持していくことに尽力してきました。彼らは、日本での会議に参席し、日本の大学で講演し、日本の病院と協力してきました。また彼らは、日本の移植医や保健担当官が中国での会議に参席し、中国の大学で講演し、中国の病院と協力するように、招いています。 中国の移植医・保健業務に携わる者は、これらのつながりを利用して、臓器移植濫用が続けられているという証拠を否定してきました。自分たちが否定する証拠に直面したり回答したりしなくてよい場を設定しています。 多くの人々がこのような一方的なもてなしに異議を唱えています。これらの異議に対して、一方的なイベントは次々と正当化されています。彼らの主張する正当性に対する所見を述べたいと思います。   1) 彼らの主張する正当性 学術的なイベントを意図して主催している。中国の保健担当官や移植医は、現在のデータや現在の経験に基づく学術的なプレゼンテーションを行っている。 私の見解 中国共産党は積極的にとりつくろいます。無実の人々の血糊に染まった手を、国外の無実の人々をだますことで洗おうとします。中国の移植医と保健担当官は、長年に渡り中国共産党のプロパガンダを作り上げ、繰り返してきました。プロパガンダが変わると、自分の意見も都合の良い方向に変えるため、発言も矛盾しています。中国人が招く人(ゲスト)や中国人を招く人(ホスト)がこのプロパガンダの形成に積極的に関わるのなら、学術的なイベントとは言えません。   2) 彼らの主張する正当性 私のように臓器移植濫用を調査する者は、係争的で根拠のない政治的な主張をくりかえしている。 私の見解 中国共産党のスポークスパーソンが、国外のホストやゲストは学術的で、真面目に学術調査を行ってきた者を政治的な根拠のない主張をするだけと片付けることは、現実を否定することになります。私や他の者による調査の学術性は、抄録の検討後に受け入れられる幅広い学術会議での発表が受け入れられている事実、刊行物、大学での講義の招聘からも示されます。 私たちの調査には政治的な動機づけがあるという国外のホストやゲストの主張は、中国共産党のプロパガンダと重なります。また、中国共産党も、臓器移植濫用への批判には法輪功の政治的な動機があると語ります。 法輪功の学習者が、中国で自らが対象となっている人権侵害に反対することは事実です。しかし、人権は政治的なものではなく、普遍的なものです。   3) 彼らの主張する正当性 中国で無実の良心の囚人が臓器のために殺害されていることを懸念する者は、EU議会や2016年6月の米公聴会のような中国を譴責する政治的イベントに参加している。 私の見解 いうまでもなく、中国での移植濫用に関する私どものような独立調査に関心を寄せる政治家も、数は限られていますが存在します。これらの政治家が関心を寄せていることが我々の活動を政治的なものにすることはありません。   4) 彼らの主張する正当性 国外のイベントに招かれたり、国内のイベントを主催する中国の高官や専門医は、制度の改革に努めている。 私の見解 証拠を提示することなく、明らかに政治的な意図から、中国共産党は我々の調査の帰結を拒絶しています。しかし結論にいたるまでの証拠はほとんど中国の公式データを基盤としています。例えば2016年の報告書に記載した2400の注釈のうち、2200は中国政府による公式数値をもとにしています。 中国政府の声明に示されている、中国のホストやゲストが中国での臓器移植濫用に関与している事実は、深い問題です。例えば、黄潔夫・元衛生副部長がフェニックス・テレビでインタビューされたときの抜粋が、ifeng.comに2015年1月に下記のようにポスティングされました。 「記者:処刑された囚人から臓器を摘出した経験はおありですか? 黄:一度、行ったことがあります。摘出はしませんでした。それ以降は行きたいとは思いませんでした。私は医師です。生命を尊重し、患者を助けることが、医師の道徳の最低基準です。聖なる場所で行なわれるべきことです。そうでなければ、医師としての最低の道徳基準に反します。 記者:何年のことですか? 黄:1994年です。 記者:ヒトの臓器移植を行った最初の年ですか? 黄:そうです。移植チームは2つに分かれています。臓器を摘出するドナー・チームと、臓器を移植するレシピエント・チームです。 記者:黄先生は? 黄:私はレシピエント・チームです。ドナー・チームに入ったことはありません。しかしどのように行なわれるのかを学び取るため、一度見学しました。この一度を体験して以来、ドナー・チームとは関わりたくないと思いました。しかし、変革の必要性は感じています」 犯罪法ではこのような行動を指す「故意の無知」という用語があります。悪事を犯した者が故意に無知であったとしても、十分な知識をもって悪事を犯した者と同様に罪があるとするものです。 黄潔夫は、どうしようもないと感じたと言っていますが、実際は、不当に入手した臓器を使う移植手術に「参加しない」ということができたはずです。黄が「ドナー・チームとは今後関わりたくない」と思ったのならば、移植をやめるべきでした。ドナー・チームからの臓器を利用しているのに、ドナー・チームとは関わっていないという観念自体が、幻想です。 臓器狩りが医師としての道徳の最低基準に反するのであれば(そして黄潔夫は認めています)、不当に入手した臓器を用いる移植手術も医師の道徳の最低基準に反するものです。不当に臓器を摘出することにも、移植医が不適切であると知りながら、あるいは故意に知らないようにしながら、移植手術を行うことにも、道徳の面では何の違いもありません。   5) 彼らの主張する正当性 国外の移植医のホストは医師としての同僚であり、敬意を払って招き返すべきである。 私の見解 移植医と臓器移植濫用の調査者が、中国での臓器移植濫用問題を提起することで、異なる専門家が異なる視点を交換できます。 私は移植技術の知識があるふりはしません。たとえ許可されても、手術室に入って移植手術を試みようとは夢にも思いません。試そうとしたら手術はめちゃくちゃになり、患者の生命を危機にさらすことでしょう。しかし、私は人権侵害全般、そして特に中国での人権侵害問題の扱いに幅広い経験を備えています 人権は全人類に属する権利です。この権利は全ての人々が主張すべきものです。しかしながら、人権には専門知識というものがあります。国際人権法の知識、人権侵害者の言説・行動パターンの熟知、歴史からの教訓などです。人権の専門知識や経験のない者が人権について知っていると思い人権問題を率いることは、私を手術室に入れた場合に生命が危険にさらされるように、危険なことです。   6) 彼らの主張する正当性 国外の移植医のホスト・ゲストも、臓器移植濫用の調査者も、目標は同じだ。中国で処刑された者の臓器を用いることを止めることだ。 私の見解 私の目標は下記の三点において、ここで提示された目標を超えるものです。…

イーサン・ガットマン 2017年ノーベル平和賞候補に

EOP/プレスリリース
調査追求のジャーナリズムと良き中国への擁護を称え、イーサン・ガットマンが2017年ノーベル平和賞候補に
ガットマンは、著書『新中国を失う』(2004年)で中国国家が管理するインターネットの構築における米企業の「共謀」を暴露。ヤフー、マイクロソフト、グーグル、シスコ・システムズの法的代表者が米連邦議会で尋問を受ける起因の一部となった。デービッド・マタスとデービッド・キルガーの最初の報告書『戦慄の臓器狩り』(2006年)発表の後、中国国家が後援する法輪功からの臓器収奪に関する独自の調査を開始。100名以上の難民、医師、法規の施行にあたった職員などを6年にわたり面接調査する。『ザ・スローター』(2014年)では、実際に臓器収奪に関わった医師や、法輪功の臓器を利用する中国本土の病院と連絡をとった数名の医師の証言が収録されている。法輪功の「市販できる臓器のみ」を検査するパターンを記録したガットマンは、チベット、ウイグル、家庭教会でも同様の身体検査がおこなわれてきた事実を確立。

2006年、中国の医療機関は、中国の移植手術は死刑囚の臓器に依存していることを認めたが、宗教犯・政治犯の臓器利用は常に否定してきた。2015年までには、中国は自発的ドナーによる臓器だけに依存していると主張。しかし、2016年夏、キルガー、マタス、ガットマンは、中国の臓器移植件数が中国の公式な推定値の6~10倍であることを示す報告書を発表。ガットマンはワシントン、ロンドン、ブリュッセルでの証言に招かれ、同時に米下院、欧州議会では決議案を通して、中国が良心の受刑者から臓器を収奪していることを明確に譴責した。ニューヨーク・タイムズ、CNN、ロンドン・タイムズは、この問題を初めて報道し、改革を唱える中国の公式な発表を支持してきた国際移植学会などの国際的な医療機関が、中国の医療制度は世界を「蒼白にさせた」と公式に発表。2016年末までには中国政権は議論に負けたこととなる。

イーサン・ガットマンは、資金を与えてくれた全米民主主義基金(NED)、イアハート基金、ペダー・ウォレンバーグ家と、リサーチ・アシスタントを務めたリーシャイ・レミッシュ氏とジャヤ・ギブソン氏に謝意を表する。また「強制臓器摘出に反対する医師団」(DAFOH)、「中国での臓器収奪停止EOP国際ネットワーク」、世界キリスト教連帯のベネディクト・ロジャーズ氏、大紀元のマシュー・ロバートソン氏、女優でミスカナダのアナスタシア・リン氏からの貴重な支援に謝意を表する。そして身の危険をさらして真実を明るみにしてくれた世界中の勇気ある証言者に謝意を表する。

中国臓器狩りの恐るべき実態

野村旗守氏のブログより転載させていただきました 医療ではなく産業 恐るべき中国臓器狩り (月刊『Hanada』3月号掲載) ノンフィクションライター 野村旗守   魔の行いは今も  元中国国家主席江沢民の号令で開始された法輪功に対する迫害は、間違いなく今世紀最大の人権弾圧の1つだ。  その範囲は中国大陸にとどまらず、台湾、香港など法輪信者が多く居住する国や地域、その他欧米諸国や東アジア、東南アジア各国など中国大使館や領事館のある場所ならどこにでも広がり、信者のみならず、その家族や縁者らに対する嫌がらせが続いている。規模だけではない。世界に冠たる拷問文化の国柄だけに、共産党政府による迫害の種類と手段は、じつに多岐多様にわたる。軍や警察、諜報機関などを駆使し、信仰を放棄しない者に対しては、長時間に及ぶ殴打、電気ショック、集団による性暴力、薬物強要、過酷な強制労働、睡眠剥奪、言葉による侮辱や脅迫等々、およそ考え得るすべての方法を総動員して転向を迫る。  しかし、なかでも突出して凶悪かつ仮借ない迫害が、昏睡状態にした信者の生体から心臓、肝臓、腎臓、角膜などの主要臓器・器官を盗み取る「臓器狩り」の蛮行である。  法輪功に対する本格的な迫害が開始されたのは90年代の終盤に遡る。この頃、法輪功の信者はすでに7000万人を突破し、中国共産党の党員数を凌駕していた。  1999年4月、天津での信者不当逮捕を受け、法輪功のメンバ-約1万人が中南海を囲んで無言の抗議行動を起こした。これに脅威を感じた当時の最高指導者江沢民は、7月20日、法輪功に対する殲滅作戦の開始を宣言する。  「3ヵ月以内に法輪功を消滅させよ」「肉体を消滅させ、名誉を失墜させ、財力を奪え」 警察により拘束された法輪功信者が残忍な拷問を受けた上で人体実験に利用された――などの例は既に2000年代初頭から聴こえていたが、「臓器狩り」が事実として浮上してきたのは2006年4月のことだ。  移植認可病院である遼寧省の蘇家屯医院で夫が医師として働いていたという「アニー」と名乗った中国人女性が、ワシントンDCで開かれたシンポジウムで衝撃的な証言を行ったのである。彼女自身も、病院の職員として長年勤務していたという生々しい体験談は、聴くもの魂を戦慄させた。――彼女の夫は二年あまりにあいだに2000件ほどの角膜摘出手術を行い、そのたびに月給の何十倍もの現金が支給されていたという。角膜だけではない。心臓、腎臓、肝臓、肺臓……目ぼしい臓器を抜かれて空洞同然となった法輪功信者の遺体は、そのままボイラーに放り込まれてつぎつぎ焼却されていった。……  彼女の証言を皮切りに、中国共産党の魔の行いである「臓器狩り」の実態調査に乗り出したのが、二人のカナダ人、デイビッド・マタスとデイビッド・キルガーだった。  マタスはカナダで人権派弁護士として知られ、民間に与えられる最高栄誉であるカナダ勲章を受章した法曹界の大物。一方のキルガーは、弁護士資格を持ちながら国会議員も務め、アジア太平洋担当大臣などの要職を歴任した政界の重鎮でもあった。  直ちに行動を開始した両名は、主に調査官による電話調査によって証拠を集めた。そして06年7月に最初の調査報告を、07年1月に2度目の調査報告書を提出した。彼らが可能な限りで入手したデータを元に、法理論を駆使して得た結論は、1度目も、2度目も、おなじだった。  「法輪功信者に対する組織的な臓器狩りは確かに行われ、そして現在も続いている」  移植手術を希望する中国人患者たちのあいだで、法輪功信者の臓器はとりわけ歓迎されるという。彼らはおなじ民族である上、信仰上の理由から酒もタバコもやらずに健康的な生活を送っているので、臓器源としてきわめて優秀なのだ。 移殖件数は年間6万~10万件  2人のデイビッドによる調査結果は、2009年、『Bloody Harvest(邦題=中国臓器狩り、アスペクト)』として1冊にまとめられた。そして、この調査報告が、中国で行われている臓器売買の事実を世界に伝搬し、各国の議会とメディアを動かしたのである。  結果、08年には、イスラエルで最初の臓器移植法が成立して移植手術のための中国への渡航が禁止となり、国際移植学界が臓器売買と移植ツーリズムの禁止を求めた「イスタンブール宣言」を採択。2010年にはスペインが移植ツーリズムと臓器売買に対応できるように刑法を修正し、昨年には台湾が人体移植に関する法改正を行って事実上中国大陸への移植渡航を禁止した。  そして、世界を震撼させた2006年レポートからちょうど10年目の2016年は、中国「臓器狩り」問題に関しふたたびエポックメイキングな年となった。  6月13日、米下院議会は「移植臓器販売の目的で宗教犯、政治犯を殺害することは、言語道断な行為であり、生命の基本的権利に対する耐え難い侵害である」として、「すべての良心の囚人からの臓器狩りを即刻停止することを中華人民共和国政府と中国共産党に要求する」などの条文を含む六項目の決議案三四三号を採択した。  さらに同月22日には、「中国臓器狩り」の両デイビッドが更新した新たな調査結果に、独自のルートで調査を進めていたシカゴ生まれのロンドン在住ジャーナリスト、イーサン・ガットマンが加わり、共同で最新報告書を発表する。  現在三人は、680ページ(脚注2400)に及ぶこの最新調査報告書を携え、世界をまわって「今なお続いている迫害」の現状を訴えている真っ最中だ。  厳重に秘匿に付されている中国の臓器移植手術の提供源や周辺事情を調査するにあたって、両デイビッドが採用した調査方法は、電話による抜き打ち取材だった。昨年9月から今年6の約10ヵ月間にわたり、調査員を雇って患者家族を装い、移植認可を受けた中国国内169の病院に電話を掛け、病院の施設状況や手術内容を直接聞き出す方法だ。さらにはネット上にある各病院のウェブサイトや刊行物なども参考にしながら、病床数、利用率、職員数、助成金・賞与金などの詳細事項も調べていった。その結果、驚くべき事実が判明するのである。  中国当局が公式にアナウンスしている年間の移植手術数は「約1万件」だが、実際にはこれより遥かに多いことがわかったのだ。  移植設備のあるこれらの国家認定レベルの病院は、稼働率が軒並み100%を超え、患者1人あたり1ヵ月を入院期間と想定すると、例えば病床数500の天津第一中心病院では年間約8000件の手術が行われていることになる。このようにして調査していったところ、中国における臓器移植件数は、年間6万件から10万件に及ぶことが判明した。公式発表のじつに6倍から10倍である。  マタス、キルガーの両デイビッドは、最新状況の報告のためオーストラリア、ニュージランドを歴訪した後、11月30日に東京入りした。  到着当日、法輪功信者に対する迫害と臓器狩りの事実を扱った映画『Human Harvest(邦題=人狩り)』の上映会に出席した2人は、翌12月1日、参議院議員会館で開かれた公聴会で列席した国会議員やマスコミ関係者らを前に最新事情の報告と質疑応答を行う。さらに翌2日には、文京区のシビックホールで一般聴衆を招いてシンポジウムを開催した。  両氏が 筆者とのインタビューに応じたのは、最終日の二日、文京シビックホールで開かれたシンポジウムの後だった。   二人のデイビッドインタビュー  ――「臓器狩り問題」は中共政府にとってもっとも知られたくない“不都合な真実だ”。調査は困難を極めたと思うが? マタス 現場に立ち会った者は加害者か犠牲者かであり、傍観者はいない。犠牲者は絶命し、跡形も残らないように焼却される。犠牲者はまるで神隠しにあったように地上から姿を消し、加害者である医師や警察がみずからの魔の行いを告白するはずもない。  ――しかし、だからと言って、中国の公式発表を鵜呑みにすることは出来ない。 マタス もちろんだ。中国当局は当初、移植医療の成果と技術の高さを誇るため、大袈裟な数字を発表していた。ところが、世界から「臓器狩り」に疑惑の目が向けられると、今度は非常に控えめな数字を言いはじめた。そこで我々は、中央の当局に当たるのではなく、全国各地で移植手術を行っている病院に直接アプローチする方法に切り替えた。中央政府は、料金表や待機時間の短さなど、臓器移植ツアーを宣伝するウェブサイトをつぎつぎに消去するなど隠蔽工作に力を入れているが、個々の病院はまだそれほどでもない。電話で問い合わせすると、ある意味正直に商売気を出して詳細な情報を伝えてくる。  ――中国当局は移植臓器の供給源は死刑囚だと説明しているが? マタス 中国の法律では死刑囚からの臓器摘出は許容されている。中国が世界最大の死刑大国だが、その数は国家機密であり、公表されていない。しかし、一般には「年間数千人」と言われる。これが事実とすれば、我々の割り出した年間の移植件数とまったく釣り合わない。  ――最新報告では「年間6万から10万件」ということだが、では、残りの5万件以上の臓器はどこから来るのか? キルガー 「良心の囚人」からとしか考えられない。なかでも最大多数を占めるのが、囚われた法輪功信者であることは間違いない。我々の調査員が中国全域の病院、拘束施設他に電話を入れ、家族に移植が必要だが、法輪功の臓器は販売されているのか――と、問い合わせた。多くの病院が法輪功信者を臓器源としていることを認めた。他に、政治犯として捉えられたチベット人やウイグル人、あるいは中国家庭教会のクリスチャンも犠牲になっているという報告がある。――が、とにかく法輪功信者が他を圧していることは疑いようがない。  ――中共政府はなぜそれほど執拗に法輪功を弾圧するのか? キルガー 歴史上、特定の宗教集団に対する弾圧や迫害は、そのほとんどが、独裁権力によるものだった。信仰は独裁者以外への忠誠心を引き起こすため、独裁政権は自分以外の宗教を毛嫌いする。中国共産党の独裁政権はすべての宗教と敵対する姿勢をとっており、このことが法輪功への迫害の第一の理由となっている。そして、迫害は現在なお続いている。…………  しかし――と、マタスは嘆く。 「臓器収奪のための信者大量殺害という俄には信じがたい邪悪な犯罪が現在進行形で続いているというのに、そして、その確実な証跡が確認されているというのに、この驚愕の事実に対する世界の反応はまったく釣り合っていません」   マタスによれば、世界の中国研究者、政治家、ジャーナリストがこの重大犯罪に関心を寄せないのは、無知から来るものではないという。中共政府とのあいだに波風立たせたくない、既得権益を失いたくない、そして新たな利得の機会を失いたくない――が故の、きわめて消極的かつ打算的な理由によるものであるというのだ。   「その手術は私がやった」  そして今回、最新調査報告書を作成するにあたって新たな報告者として加わったのが、、ユダヤ系アメリカ人ジャーナリスト、イーサン・ガットマンだった。  ブルッキングス研究所、自由議会財団など、ワシントンのシンクタンク勤務を経た後、フリーランスのジャーナリストとなったガットマンは中国問題に関心を寄せた。そして北京滞在中の1999年7月の天安門広場で、江沢民により「邪教」として非合法指定された法輪功信者の一斉摘発に遭遇するのである。老女を含む無防備の市民が多数、警察によって無理矢理バスに押し込まれ、強制的にどこかへ連行される現場に立ち会った。  道に迷った観光客を装って一部始終を目撃したガットマンは、「自分のなかのユダヤ人の血が騒いだ」という。この問題が間違いなく中国最大級の社会問題になると確信した彼は、本格的な取材活動を開始する。  この時期、全国の強制労働所が猛烈な勢いで拡大され50万から100万人の法輪功信者が送り込まれたと推定される。ガットマンは釈放された信者たちを中心に、国外へ逃亡した中国人の関係者に可能な限りの面会を求め、聴き取り調査を行った。その数、7年間で120人以上。――労働所のなかでは、信者たちが信仰を棄てるよう強要され、転向を拒否した者には苛烈な拷問が待っていたという。そして、彼らが必ず、定期的な血液検査を受けさせられていたことも知る。…