12月10日公聴会最終日の中間裁定(草稿)発表の映像(*日本語字幕付き)

最終原稿の日本語版

(2019年5月20日邦訳修正)

中 間 裁 定

中国での良心の囚人からの強制臓器収奪に関する民衆法廷

  1. 世界各地からの証言者より聴取した3日間の公聴会が終了した。公聴会 開会の辞で述べた通り、証言者からの事情聴取により本法廷の調査が開始した。今後、なんらかの形でさらに公聴会が行われる予定である。これらの公聴会をもって、証言者の証言から得られた記録も含む、本法廷が重要であると認定した、さらなる証言者からの証拠、および文書による証拠の受領を完了とする。
  2. 上述の資料が熟慮された時点で、本法廷は裁定を公表する。公表は来春(2019年)になると見込まれる。

   その時期まで、中華人民共和国には下記の事項を再考する必要な経過時間が設けられている。

  1.   本法廷からの招待 ― (中華人民共和国は招待状を受領しているが返答していない) ― および裁判手続きに参加することの検討。裁判手続きへの参加は今からでも可能である。
  2.   中国の移植手術に好意的な意見を表明しているとして指名された医師達はこれまで本法廷を助けるための招待を辞退しているが、指名された医師達が自己の立場を再考してくれることを期待する。
  1. CHINATRIBUNALウェブサイト上の「証拠を求める」のページは公開されたままである。本法廷が検討したいと思われるような陳述書の提出、あるいはさらなる証言者もしくは文書による証拠の提出を、一般市民は引き続き行うことができる。
  2. ETAC及び本法廷は、中国での臓器移植手術の行為に犯罪性が関与しないことを示唆する個人もしくは資料へのアクセスが必要であることを、今なお認識している。このため、これまで注意を払われなかった可能性のある「無実証明」を助ける個人の名前、もしくは同様の効果をもたらす文書に関して、本法廷に通知して頂ければ有難い。
  3. 中国の移植手術に関する多くの報告書には、国際犯罪が行われたという主張がしばしば見受けられるが、国際犯罪の関与そのものに焦点をあてた調査は見受けられないことに留意されたい。民衆法廷とは一般に、国家および国家支援機関による極めて深刻な犯罪疑惑 ― この場合は公の国立機関および国際機関が対処できなかった犯罪疑惑 ― に取り組む。 本法廷では、強制臓器収奪に従事した可能性のある中国の国家あるいは国家支援機関あるいは個人が、国際犯罪を犯してきたかどうかを調査していく。
  4. 犯罪を完全に証明する本法廷の最終裁定に記される調査結果は、いかなる制限もなく、本法廷のメンバーが合理的な疑いを超えて確信したものを基盤とすることをさらに留意されたい。なんらかの形で確信性の比較的に低いその他の調査結果が存在する場合は、最終裁定の中で説明される。
  5. 裁定がどのように利用されるかは本法廷が関わるものではなく、主にETACが関与することである。しかし、何年にもわたって行われてきた良心の囚人からの臓器収奪という疑惑をよく知らない者が、繰り返し報告されている中華人民共和国に不利な調査結果について、関係ないことだと無視するようなことは容認できない。
  6. 同様に、中華人民共和国での行為がいかに国際的な常軌を逸脱し、(国際刑事裁判所ローマ規程の前文の言葉を借りるなら)「人類の良心に深く衝撃を与える」ものであることへの注視に、本法廷は過剰に焦点をあてるものではない。本法廷は、委任された権限に従い、提出された証拠または本法廷のみで求められた証拠に裏付けされ、中華人民共和国での臓器移植手術においてどのような犯罪が行われたかを調査するに過ぎない。
  7. しかし、貿易やその他の形で、国家や市民が相互に結びつく現代社会で、一国の行為を批判する公告は、その国に直接的に、もしくはその国と繋がりその国を支援する国々とその市民に情報を提供することによって間接的に、何らかの影響を与える可能性があることを、本法廷は見過ごせない。
  8. 通常、このような民衆法廷では、部分的もしくは中間的な裁定を発表するものでなく、事実に基づく法的に該当する決断全てが下されるまで待ち、単一の最終裁定を発表する。しかし、部分的もしくは中間的裁定が即刻、一般に良い結果をもたらす可能性のある場合、通常とは異なる判断も適応されうる。
  9. 慣例を破る形になるが、後述する明確な理由から、本法廷は現段階で事実上の問題のみを基盤として結論を発表する。事実上の問題は、本法廷に提示された質問に回答するにあたり最終的に熟慮すべき多くの事項の一つにあたる。
  10. 本法廷の判事団は全員一致をもって、合理的な疑いを超えて、中国でかなりの期間、極めて多くの犠牲者に対して、良心の囚人から強制臓器収奪が行われてきたことを確信する。この行為が国際犯罪であるか、その場合は誰によるものかは、時期と犠牲者数の詳細も合わせた調査結果として、我々の最終裁定で詳細に扱われる。この最終裁定は現在の資料および今後提出されるその他の資料の分析と、今後受ける法的なアドバイスから派生する。
  11. ここで繰り返し述べる。現在受け取った証拠に基づき、強制臓器収奪が、国家支援もしくは国家認定の機関と個人により、かなりの規模で行われてきたことに、疑いの余地はない。
  12. 犯罪性に言及することなく、我々に提示された証拠から、中国での強制臓器収奪の行為は、少なくとも、以下の世界人権宣言に反することを、確信を持って断言できる。今年の国際人権デー(12月10日)が、世界人権宣言採択70周年を記念することも意義あることであろう。

第三条 (生命の権利)

第六条 (法の下で人として認められる権利)

第七条 (法の下における平等)

第九条 (任意に逮捕されることはない)

第十条 (自己の権利決定において公平で公開された審理を受ける平等の権利)

第十一条(無罪推定の権利)

第五条 (拷問の禁止)にも反していることが証言者から示された。個人からの臓器収奪の準備のために医療検査を収容時に受けた証言者は、証拠提示のために法廷に呼ばれ、一人を除き全て拷問されていると証言した。

  1. 単一の問題に関する我々の裁定は、これらの事は極めて大規模にかなりの期間行われてきたということが、我々が受領した「確信」ある証拠によって判定されたものであることを示す。反対の効果をもたらす証拠の提示なく我々はこの判定に至っている。後日、医師、学者、政府高官、誰からでも、このような証拠が提出された場合、この3日間にわたる公聴会で提出された証拠と同様に考慮されることを明確に理解していただきたい。また、我々が現時点で出したこの特定の結論を支持する証拠が、全ての証言者により出されたわけではないことも十分理解していただきたい。事実証拠を提供した証言者の中には、その信頼性を疑う余地はないが、この中核問題をさらに裏付けることのない者もあった。
  2. 先に述べたように、一国の行為を批判する公告は、その国に直接的、もしくはその国と繋がりがあり、支援する国々とその個人に情報を提供することで間接的に、何らかの影響を与える可能性があることを踏まえ、この部分的中間裁定の現時点での発表を適切なものとする。
  3. 中華人民共和国での強制臓器収奪に関する報告書で繰り返されている説明が ― たとえこれらの報告書が犯罪の可能性に触れるものであっても ― これまで知られている限り、中華人民共和国での透明性ある行為に関して全くもしくはほとんど効果をもたらしていないことを、我々は留意する必要がある。強制臓器収奪に関する明晰で確信のある我々の調査結果は、これ自体が現時点では国際犯罪責任の調査結果ではないが、合理的疑いの余地なく、中華人民共和国もしくは同国と交流する者に直接的影響をもたらすであろう。中国での強制臓器収奪の行為が、我々の裁定もしくはその他の形で認識された時点で、これらの者は中華人民共和国に関わることによって事実上与えた、いかなる支援をも省みるべきである。
  4. こうした中国における臓器収奪の疑惑、そして本日の我々の中間裁定が一般に公表されることにより、今現在、臓器収奪の危機にあって殺害されてしまいかねない人々に、少しでも生き延びる可能性をもたらすのではないか、と我々全ては考えるべきだろう。可能性としては低く論証からもかけ離れているが確かに可能ではある、このような考えうる展開を踏まえ、中華人民共和国による強制臓器収奪の行為に関する我々の現時点での確信を記録することが適切であるだけでなく、公表することは義務である。現時点での発表は、無実の人々を救う可能性がある。
  5. 世界市民に課せられた我々のいくつかの義務を鑑みて、国家が自己のコミュニティーの一部を破壊する過去の暴虐を想起していただきたい。これらの恐ろしい出来事が明るみに出た時点で、沈黙を守ってきた者の責任を、自己に言い聞かせていただきたい。
  6. 主権という危険な概念は、単一の家族を基本的・法的に成文化された権利で保護しながら、自国民に対して自国の国境内で人道に配慮しない行為を「他」の国々で許す可能性がある。この概念に直面すべきであり、強制臓器収奪のような事例に対して明晰で確信のある裁定をもって直面することによって、真の有益がもたらされる可能性がある。
  7. 上述の通り、我々の最終裁定は、いずれ発表される。

2018年12月10日ロンドンにて

ジェフリー・ナイス卿(QC)

中国 民衆法廷 議長

民衆法廷メンバー:

マーティン・エリオット教授

アンドリュー・クー

レジーナ・パウロス

シャディ・サドル

ニコラス・ヴェッチ

アーサー・ウォルドロン教授

英語原文