「中国 民衆法廷」憲章
中国での良心の囚人からの強制臓器収奪に対する民衆法廷
概説
過去15年以上にわたり、中華人民共和国における囚人・良心の囚人(無実の人々)からの国家認定のもとでの強制臓器収奪の規模と深刻さを記録した詳細な報告書が発表されている。国際的な医療・政府機関からの独立した報告や圧力を受け、中国政府は、2006年、2007年、2010年、そして2014年12月の声明1など 数多くの改革を発表してきた。中国は、自国の臓器入手制度を国際水準に合わせて改革していると公式声明で主張し、中国の移植制度・移植専門医の合法性と国際的な受け入れを可能にしてきた。2010年以降、自主的臓器提供制度は徐々に発展してきたが、中国での移植臓器の入手における大規模で深刻な人権侵害の証拠は継続的に浮上している。さらに中国は、国際基準に見合う透明性が今なお欠如している。これらの証拠と透明性の欠如にも拘わらず、医療、法律、政府の分野における国際機関は、2015年以来ほとんどこの問題に取り組んでいない。「中国での臓器移植濫用停止(ETAC)国際ネットワーク」に委任された民衆法廷は、中国でおよび/または他の土地で、中国の政府高官および/または個々の中国市民(医療専門医その他)により、国際的な犯罪が行われてきたか、そして今も行われ続けているかを、入手できる証拠を評価して判定する。証拠からこのような犯罪が明確となった場合、過去の犯罪責任を追求し、現在進行中の臓器移植濫用への国際的な共謀を停止し、完全に止める措置を取るため、「中国 民衆法廷」は医療・政治・国際機関の該当責任を判定する。
脚注1.
2006: Interim Provisions on Clinical Application and Management of Human Organ Transplantation
2007: Regulation on Human Organ Transplantation
2010: pilot of voluntary donation system
2014: “all organ donations” will go through voluntary system as of Jan 1, 2015. –HJF
「中国 民衆法廷」の目的
「中国 民衆法廷」の判事団は、中国での良心の囚人(無実の人々)からの強制臓器収奪に関する証拠を検討し、国際犯罪がこれまで行われてきており 現在も行われているかを 判定する。
目的遂行のための声明文
「中国 民衆法廷」は、中華人民共和国での系統的で広範囲におよぶ良心の囚人(無実の人々)からの強制臓器収奪を裏付ける既存の証拠から生じた下記の「疑問」に取り組み、回答する。
提示された疑問
1.中国での良心の囚人(無実の人々)からの臓器収奪に関する入手可能な過去および現在の証拠を鑑みて、国際的な犯罪が行われてきたか?
2.その場合、国際社会によってとるべき法的その他の措置とは何か?(この際、該当する法規下での強制臓器収奪の加害容疑者名公表の許容範囲、民事訴訟から犯罪者を保護する主権免除の効力性を考慮する必要がある)
3.国際的な病院、大学、個々の医師、(医師会などの)専門家協会、医療研究員、製薬・バイオテク企業、医学専門誌・発行者が、中国で相当する機関・個人や中国の移植専門医と協力した際の責任、そのような協力が強制臓器収奪への加担となりうる可能性、今後の協力における制限の付与を検討し、既存もしくは提案された専門職上および法的な制裁を勧告することも、「中国 民衆法廷」に強く求められている。
「中国 民衆法廷」の構成と役割
- 議長:ジェフリー・ナイス卿(Queen’s Councel)
- 5名から9名の判事
- 提示された疑問に答える上で必要な事実基盤を築くために、中華人民共和国における良心の囚人(無実の人々)からの強制臓器収奪の証拠を詳細に検討
- 適応可能な基準と実行可能な矯正手段の提出を受理
「中国 民衆法廷」の法律顧問:ハミッド・サビ氏
「中国 民衆法廷」の判事団
複数の分野にわたる国際的な視点から証拠を詳査するため、多岐にわたる経歴、性別、国籍、文化的背景の判事を揃える。判事の専門分野は次の通りとする:法律、人権、中国の人権、医療、国際関係、政治、ビジネス。(「国際人権・人道法に則る審問・事実調査団の委任―指針と実践2015年」に準じる)
「中国 民衆法廷」の手順/取組み
「中国 民衆法廷」の判事は下記を行う:
- ETACが提供する中核となる文書と視聴覚資料に目を通す [書籍2冊、報告書4部、ドキュメンタリー2本(合計2時間)、その他の文書6部を合わせたA4サイズで合計約500ページのコア・ライブラリー]。理解しやすいように、中核を成すこれらの資料にはガイド/概要が付随される。(「中国 民衆法廷」は、この中核資料とその他の提示された証拠を含む、該当期間に提供された資料すべてに基づき、判決を下す)
- 資料から生じる疑問を討議し、必要に応じてグループとして調査者・専門家の意見を求めるために、ビデオ会議をオンラインで行う。全員が検討できる形で「中国 民衆法廷」に提出される調査を除き、「中国 民衆法廷」の判事がさらに調査することはない。
- 主要調査者デービッド・マタス、デービッド・キルガー、イーサン・ガットマン、マシュー・ロバートソンと(オンラインまたは直接)面接する。
- 25〜30名の証言者に面接する。必要に応じて証言者の身の安全に注意する。証言者の公聴には約3日をかける。(直接もしくはオンラインで1日8〜10名)
- 「中国 民衆法廷」での討議決定に準じて、専門家協会および市民団体の意見を求める。
- 「中国 民衆法廷」での討議決定に準じて、中国政府の該当する機関および代表者への面接を求める(中国 民衆法廷の顧問が手配する)。
- ETACが証拠を追加する機会を設ける。「中国 民衆法廷」が最終結論を出す前に、主要調査者を招いて証拠を討議する追加法廷開催の可能性もある。
- 概要、調査方法、調査結果、法律上の結論と勧告を含む最終報告書を作成する。
- 法律顧問も含み、業務は全て無償で行う。さらに、該当法に詳しい法律家も、無償で見解を提示する。
「中国 民衆法廷」の期間は約10ヶ月の予定。
証拠が中国語もしくは他の言語で提示された場合、「中国 民衆法廷」のロジスティク調整役・顧問が、翻訳/通訳業務を手配する。
報告書には、オンライン上のイベントなど1つ以上の公的イベントが含まれる。
透明性、メディア、調査範囲
「中国 民衆法廷」は、詳査する証拠とアドバイスの提供源に関して、透明であることを貫く。
「中国 民衆法廷」は、裁判の方法、目的、結論を広く一般に理解してもらうために、メディア報道を歓迎する。メディアその他のこの問題に関心を抱く分野との関わり、公聴会、イベントは、「中国 民衆法廷」が正確に報道され、また弱者である証言者を保護するためにも、「中国 民衆法廷」が定めたメディアに関わる基本原則に準じて行われる。
「中国 民衆法廷」は、中国の臓器入手/移植制度に関与する政府その他の機関から、国際的にも中国国内にも情報と応答を求める。
結論と勧告
国際的な犯罪が過去および/もしくは現在行われているという「中国 民衆法廷」の調査結果がでた場合、国際社会がどのような法的その他の措置を、何に対して(個人、機関、国家もしくはその全て)とるべきかを、「中国 民衆法廷」が特定するよう求められている。
「結論と勧告」の取り込み
「中国 民衆法廷」の調査結果と勧告は、一般、ジャーナリスト、中国国外のチャイナ・ウォッチャー、NGO、政策立案者(医療、法規、学術、政府関連)、中国の高官、学者、医療・非医療の移植専門家、拘束の生存者、犠牲者の家族、友人、コミュニティーの取り込みが予測される。
「中国 民衆法廷」を通して、犠牲者と犠牲者・対象者グループが認識され、慰めと希望をもたらすこともETACの目的。彼らの苦しみは無視されておらず、説明責任の要求は公正なことであり、原則的には修復的司法に値するものであり、中国での臓器収奪停止への希望を発信する。
参考資料
Grace, R. and Bruderlein, C. (2015). HPCR practitioner’s handbook on monitoring, reporting, and fact finding. Cambridge, MA: Harvard T. H. Chan School of Public Health, Harvard Humanitarian Initiative, pp.27-28. [ebook] Available at: https://hhi.harvard.edu/sites/default/files/publications/handbook-hpcrweb.pdf [Accessed 24 Jan. 2018].
Commissions of inquiry and fact-finding missions on international human rights and humanitarian law and guidance – Guidance and Practice. (2015). New York and Geneva: United Nations pp1-152. Available at: http://www.ohchr.org/Documents/Publications/CoI_Guidance_and_Practice.pdf [Accessed 24 Jan 2018].
Report of the United Nations Independent Special Commission of Inquiry for Timor-Leste. (2006). [ebook] Geneva: United Nations Independent Special Commission of Inquiry, pp.2,3. Available at: http://www.ohchr.org/Documents/Countries/COITimorLeste.pdf [Accessed 24 Jan. 2018].
(日本語版掲載:2018 年11月6日)